倉崎 稜とホーク・ウィンドウの物語
Side ホーク・ウィンドウ
=ブラックスカル壊滅前・学園内某所にて=
ボクサー崩れのヤンキー。
それがホーク・ウィンドウである。
逆立った白色の髪の毛。
ボクシングで鍛えこまれた筋肉質な体つき。
昔、とあるボクシングの試合に負けてから転落人生を歩み、それから憂さ晴らしをするようにケンカに明け暮れてとうとうギャングの用心棒の真似事までするようになった。
(嫌な時代になったな――)
デザイアメダル。
中毒性がない特殊な奴を使用している。
腕時計のようなデバイスにメダルを装填するタイプだ。
でないと怖くて使えない。
と言うのもデザイアメダルの使用者の末路を大勢見てきたからだ。
ホークはああはなりたくはなかった。
(まあこれを使う俺も俺だが――)
そうまでしてケンカに明け暮れるのは自分でも分からなかった。
今日もまたデザイアメダル同士の賭博試合が行われる。
ホークと同じような用心棒も襲撃に備えていた。
(そろそろこの稼業も潮時かな――)
などと思った時。
ホークは運命的な出会いを果たすことになった。
黒髪の美少年、倉崎 稜との出会いである。
変身する暇もなく、あっと言う間に用心棒じゃ制圧されていく。
ホークはギリギリのところで何とか稜の一撃をかわしたが殆ど運が良かったようなものだ。
続けて、一撃、ニ撃、三撃と重たく鋭い一撃を見舞ってくる。
その隙に金髪の少年――天村 志郎が賭博場の方に歩んでいくがそれどころではない。
このままではやられると思った。
☆
気が付いたらホークは病院にいた。
そして事情聴取が行われた。
デザイアメダルの入手経路について色々と根ほり、葉ほり聞かれた。
デザイアメダルの使用者の末路は二つに一つ。
少年院送り、病院のベッドでお寝んねだ。
特にデザイアメダルの使用を続けている人間の場合は中毒症状が酷すぎて社会復帰に時間が掛かると言われている。
ホークは洗いざらい全部話した。
真面目に更生カリキュラムを受けた。
担当官は不思議がってホークに尋ねた。
何故君はそんなに真面目に更生の道を歩むのかと。
ホークは馬鹿正直に答えた。
正々堂々と戦いたい相手がいると。
☆
倉崎 稜とボクシングルールで戦いたい。
ホークは何故だかそう思ってしまった。
仕返ししたいとか負けたままでいられないと言うのもある。
圧倒的な強さに惹かれたと言うのもある。
同時に自分が情けなく思った。
自分は何をしているのだろうと。
だから倉崎 稜と再戦を望んだ。
☆
=ブラックスカル壊滅後・とあるヒーローショーの現場にて=
ヒーローショーが終わり、ホークは倉崎 稜を見つけて近づいた。
「成程、僕と戦いのですか」
「受けるか受けないかは任せる」
正直勝手な願いだ。
断られても無理はないと思った。
「条件付きでならいいですよ」
「条件?」
「ウチの部活に入ってください」
つまり悪の組織部に入れと言う事だろう。
「分かった。良いだろう」
ホークはスグに承諾した。
「いいんですか?」
「悪の組織部って名前の割には社会貢献活動もしてるんだろう? 今迄の悪事の禊だと思えば入ってもいいと思っている」
これはホークの心の底からの本心だった。
ホークは理由があるとは言え、悪事を重ねすぎたと思っている。
償いを受けたとは言え、納得はしていなかった。
だからホークは悪の組織部に入る事を承諾した。
それも勝っても負けてもと言う条件に変更してもらってだ。
☆
=天照学園内・某ボクシングジム=
倉崎 稜とボクシングルールで対決する事になった。
ヘッドギアつけての対決だ。
かなりキツく、ハードなトレーニングをして鍛え直した。
それでもルール無用のケンカなら勝てないだろうが、ボクシングならチャンスはあると思った。
だが甘かった。
(こいつ、戦い方がボクシングのルールに物凄い早さで適応してやがる!!)
戦いの中でドンドンと学習していく。
技術が吸い込まれていくような感覚。
ホークは天才だと言われていた時期もあったが、倉崎 稜はその更に上を行く天才だと思った。
だが同時に――だからこそ熱くなれる。
超えたいと思いたくなる。
ホークは今出せる全力を持って倉崎 稜に挑んだ。
☆
結果は判定でどうにかホークの勝ちと言う事になった。
だが大粒の汗を流して、呼吸も荒くしているホークに対して稜は特にそれ程疲れた様子を見せなかった。
(今日からチャレンジャーか。悪くねえ)
ホークは約束通り悪の組織部に入る事になった。
☆
それからホークは悪の組織部の活動に参加しながら熱心にトレーニングに取り組み、更にとある人物から気の使い方などの修行を受けてギガスマッシャーなどの技を生身で打てるようになるのだが、それはまた別の話である。




