第21話「ヒーローショー・打ち上げ会」
Side 天野 猛
=アーカディア本部・大広間=
『このヒーローの交流会、今度こそ悪の組織部による交流会にさせて頂く!』
『ちょっとしつこいわよ悪の組織部!! これはヒーロー部の交流会なんだから!』
ヒーローショーの打ち上げと同時に警備のために来られなかった人を労う形で特別にショーを行う事になった。
本番を経て体の堅さのような物が解れて、演技での立ち振る舞いも分かって来たのでよりよい演技が出来たと思う。
そんなショーも終わり、ちょこっとSNSを覗いてみると反響が凄くてビックリしたので猛は慌てて観るのをやめた。
「へぇ―こんな可愛い子がヒーローね」
「え?」
ふと打ち上げ会を楽しんでいると一人の女性が近づいてくる。
長い水色髪に白い肌、大きな胸、170cm越えの背と鍛え抜かれた四肢、セレブ感を感じる衣装、綺麗に整った大人の女性の見本のような人だった。
「私はリンディ・ホワイトよ」
「あ、あの、た、たた、猛さん?」
「大丈夫よ春歌ちゃん。貴方の愛しの人はとらないから? 写真ぐらいは撮らせてね?」
「そ、それならいいんですけど?」
春歌の挙動が変だ。
理由は何となく分かるがあえて言わないでおく。
「あっ――」
心地よい匂い。
服越しに伝わる肌の感触。
サラサラとした長い髪の触感。
猛は綺麗な女性に男性が魅力になる理由を本能的に理解した。
同時に何時の間にか写真撮影を終える。
「ヒーローショー楽しかったわ。今度は彼女さんと一緒にプロレスも観に来てね――」
「そそそそ、それはどう言う!?」
春歌は様子がおかしくなりながらリンディに問い詰める。
「春歌ちゃん、こう考えるのよ? ゴニョゴニョ」
「え? 嘘? 私がですか――」
「ふふふ、じゃあね」
そう言って自然体で投げキッスをしてリンディは立ち去った。
入れ替わりにボサったい女性、嵐山 蘭子が来て「相変わらずだな、アイツも」などと言っていた。
「貴方は?」
「嵐山 蘭子――まあお前らのクラスの担任になるみたいだからよろしく」
「え? 担任?」
嵐山 蘭子がそう言った。
「ついでに授業が出来ない場合、授業が出来ない日が続くような場合は私が君達の教師を務めるからよろしくな――つまり私も今日からアーカディア入りってワケだ」
「は、はあ」
唐突な話で猛はちょっと実感が湧かなかった。
「ちなみにさっきのリンディ・ホワイトもアーカディア入りして色々と活動を開始するみたいだ」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。アレでも弾丸キャッチ出来るうえに戦車ぐらいなら生身でスクラップに出来るし、氷の闘気とか明鏡止水――ようするにスーパーモードとかも使えるから。神威は知らん。まあ少なくともお前らより強いぞ」
「それなんのバトル漫画の話でしょうか?」
春歌が苦笑しながら突っ込んだ。
「まあお前らにはまだ闘気どころか気の扱い方は早いからな。やるにしても初歩の初歩からだろう」
「何の話をしてるんですか嵐山先生?」
春歌はもう一度念入りに尋ねた。
「まあこの話はここまでにしてとにかく打ち明け会を楽しもうぜ」
「はい、先生」
先生の提案に猛は返事をした。
☆
=アーカディア・屋外の広間にて=
夜空を見上げながら猛と春歌の二人は今日の事を振り返る。
「ヒーローショー上手く行って良かったですね」
「うん――こう言う毎日なら大歓迎なんだけどな」
「ええ、本当にそうですね」
その日常をどうにかするためにはデザイアメダルを、ブラックスカルをどうにかしなければならない。
その日常を取り戻すために戦う準備は出来ていた。




