第20話「ヒーローショー本番」
Side 天野猛
【朝・天野 猛の母校、運動場でのヒーローショー本番前】
昨日の時点で分かっていたつもりだが、既に人だかりが想像以上に出来ていた。
どうしても緊張してしまう。
同時にこんな時に襲撃が起きたらと考えてしまうが、そこはジーニアス司令を信じる事にした。
「さて、準備はいい?」
そして姫路 凜が現れた。
白い宇宙戦艦の艦長さんのような衣装を身に纏っている。
猛達も戦闘用の衣装を身に纏っていた。
勿論演技のために出力は落としている。
「これは、今の学園の空気に対する意味宣戦布告よ。風穴を開けるためのショーなのよ――と言っても深く考える必要はないわ。ただ元気に、自分が演じられる最高の自分をさらけ出して」
凛は「それと」とつけ加える。
「皆テロ対策で不安だと思うけど、そこはジーニアス司令を信じましょう」
猛は「はい」と返事をした。
☆
Side ジーニアス司令
本音を言えば生でヒーローショーを見たかった。
だが少年少女の青春を支えて裏方に回るのも大人の務めだと思った。
各部署に配置したスタッフたちに連絡を入れる。
乱レ桜で出会った人々にも協力を要請した。
後は出たとこ勝負である。
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Side 天野 猛
ヒーローショーが始まればもう悩みとか恥ずかしさとかそう言う者は吹き飛んだ。
台本に沿ってショーをはじめる。
と言っても以前語ったように簡単な物だ。
ヒーロー部のお披露目会に悪の組織部が襲撃して勝利すると言うものである。
だがそれにしても――
(僕達って本当に人気あったんだな……)
セイントフェアリーだけでなく、レヴァイザーや桜レヴァイザーにもファンがいた事に猛は純粋に驚く。
見渡す限り人だらけで椅子だけでは足りず、立ち見の人まで出ている程の盛況ぶりだ。
『どうも、我々天照学園悪の組織部の総帥、天村 志郎と申します。これより我々悪の組織部がこの場を占拠させてもらいます』
そしてステージのバックの大型のモニターに悪の組織の総帥ユニフォームを着た饒村 志郎が現れ、本番が始まった。
次々と悪の組織部の戦闘員が会場に雪崩れ込む。
そしてステージに上がり、猛と春歌、舞は戦闘員たちに囲まれる。
『ヒーロー部のお披露目会と言う事でしたが、ここで倒させて悪の組織部のお披露目会にさせてもらいます』
そして次にヒロイックなBGMが流れて今度はモニターに姫路 凜が現れる。
『そんな事はさせないわ! 今回はヒーロー部のお披露目会よ! 悪の組織部のお披露目会になんてさせてたまるもんですか!』
と、凜が熱演しつつ続けてこう言った。
『猛、春歌、舞! ヒーロー部の出番よ! お披露目会を無事に成功させるために悪の組織部を倒して!』
猛たち3人は「了解!」と返す。
観客も盛り上がって来たようだ。
声援が飛び交う。
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Side ジーニアス司令
ヒーローショーが良い具合に盛り上がって来た。
何度も言うが本当に生で会場で見たかったと司令は思う。
「司令、来ちゃいましたよ」
「ありゃ~やはり来ちゃったか」
などと思いつつ、助っ人の人達に後を任せる事にする。
最初ぐらいは表向きでも良いので何のトラブルもなくヒーローショーを終えて欲しいと思った。
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Side 嵐山 蘭子
嵐山 蘭子は教師になるために頑張る女性である。
酒やタバコを嗜み、私生活がダラしなくて長い茶髪の髪の毛もボサッたい、眼鏡を掛けた女性である。
来ている服も大概ジャージだったが教師になると言うのでせめて白衣にジーパンと多少は衣装を気を遣うようになった。
だが今は教師として頑張る女性としてではなく、ヒーローとして頑張る大人としても戦っていた。
赤いバイクをモチーフにしたヒーロー、レッドスピーダー。
手にはブレードを持ち、それで襲撃者を斬り倒し、時には蹴り飛ばす。
相手はデザイアメダルの怪人。
子供の夢を守るための戦いだ。
手を抜かずにキッチリ仕留めるつもりだ。
他の場所でも自分と同じように戦っている。
例えばリンディ・ホワイトなんかもそうだ。
子供の夢を守るのと同時に、学園のプロレスを盛り上げるために態々白いボンテージ風のリングコスチューム風パワードスーツまで用意してデザイアメダルと戦っている。
リンディも言っていたが何だかんだで蘭子もヒーローショーを見たかった。
例えていうならテレビの中で戦っているヒーローがテレビから抜け出して舞台で戦っているような状況なのだ。
面白くならないワケがない。
後で個人的に披露させてくれないかなと思う。
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Side 天野 猛
ヒーローショーはどうにか終わった。
やはりと言うか襲撃があったので、緊急的な措置として体育館に避難ついでで交流会が開かれ、撮影までする事になった。
学校の出入り口を事故に見せかけて封鎖すると言う念の入れようで見事としか言いようがなかった。
同時に猛はこうも思った。
ジーニアス司令は約束を守ってくれたのだと。
その事に深い感謝を覚えながらもショーに関わった皆と交流会を行う。




