第19話「ヒーローショー・前夜」
Side 天野 猛
=天野 猛たちの母校・夜の体育館にて=
夜になっても体育館などを使い、演技に力が入る。
昼間にデザイアメダルの売人が現れたそうだが、周囲の被害を考えて追い払ったらしい。
さすが司令だと思った。
そして巻き込まれた生徒達は教師達に怒られる筈だったが――どんな恐い目を見たのか、とても怯えていたと言う。
一般人にそこまでの恐怖を植え付けような相手だと考えた場合、ジーニアス司令の判断は間違ってなかったんだと改めて実感した。
それはそうと稽古の内容だけでなく、万が一の事態を想定してのマニュアルなども頭に入れなければならなかった。
つまりはデザイアメダルを使ったテロの可能性である。
最悪の場合、観客を守りながらの戦いになる。
そのためにどう立ち回るべきかも考えておかねばならない。
(不安だ……)
正直とても不安だった。
☆
=深夜・アーカディアの施設内のラウンジにて=
一人汗を流す猛。
やはりと言うか色々と不安で眠れないのだ。
そんな自分を見ていたのかジーニアス司令が「ちょっとお話しない?」と誘ってきた。
「いや~一生懸命な若い子って見てるだけで元気が湧いてくるね。でも頑張り過ぎはよくないかな~?」
「でも、とても不安で――」
「まあ気持ちは分かる。ただのヒーローショーでは終わらないと思うし」
「間違っているのかな?」
「間違っている事を間違っていると言うのは正しいと思うよ。本当に罰せられるべきはどうして間違っているのかも理解せず、対話なども考えず、言葉ではなく暴力で返す輩を言うのさ」
「でも――テロの可能性があるのは事実ですし、それにこんなご時世だから不謹慎だとか言う人達もいるかも知れないし――」
「そうだね。だけど、たらればを考えればキリがない。だからお願いだ」
「お願い?」
「僕達、大人を信じて欲しい」
「え?」
「そして責任を取らせて欲しい。頼む」
「そんな――突然一体何を――」
「大人には色々と種類があるが――今回ぐらい、カッコいい大人って奴を演じさせてくれないか?」
そしてジーニアス司令は頭を下げる。
ちょっと考えて、猛はふと思う。
こんな大人に出会ったのは何時ぐらいだろうか。
☆
Side ジーニアス司令
=天照学園某所・乱レ桜=
黒髪のポニーテールヘアー。
ノースリーブの和服を着たナイスバディな姉御肌の女性。
それがこの店、古き良き昭和感を詰め込んだ居酒屋「乱レ桜」のマスター紅官女。
この乱レ桜は穴場である。
天村 志郎の父親であり、学園島の理事長を務める天村 愁や学園長のJOKER影浦も通っている。
他にも学園の信頼できる有力者が多数この穴場にいた。
店の手伝いで丸っこい一頭身の黄色いウサギ型のゆるキャラ、グモたんと言う名の不思議生命体で地球外生命体もいた。一応世間一般的にはロボットですよ的な扱いである。
「おや、ジーニアスじゃないか。突然訪ねてきてなんのようだい?」
「端的に言って明日のヒーローショーを成功させるために皆の力を借りたいです」
ジーニアスは簡潔に述べた。




