第10話「翌日」
Side 天野 猛
アーカディアに入って翌日。
猛は学校へと通う。
基本は普段通りに生活しても構わないとの事だった。
「まあ二人の邪魔をするのもなんだけどこれからよろしくね」
と、道中遭遇した森口 沙耶が猛と春歌の仲を気にしてかそんな事を言う。
「二人の仲ってそんな――」
「春歌ちゃんも照れないの……まあとにかくチームになったんだしね」
かく言う猛も照れ気味である。
「そうそう。まあメカニックも兼任してるし、見舞いとかもあるから戦闘にあまり参加できないし、一緒に行動も出来ないと思うけど」
「見舞いって――」
猛は沙耶のその単語でハッとなった。
「昨日も言ったけどデザイアメダル絡みの事件でちょっとね」
「そう――」
「まあ今の学園のご時世じゃ珍しくもなんともないわよ」
「うん――」
「ふと思ったんですけど、デザイアメダルの使用者はどうなってるんでしょうか」
春歌は話題を変える。
「基本は理事会や政府の息が届かない隔離施設送りね。場所は私達でも極秘事項よ」
と、沙耶が答える。
「そうですか……」
春歌は残念そうに漏らす。
「なに? 加島君を殺した相手に何か問い質したかったワケ? それとも殺しに行きたかったの?」
沙耶は物騒な事を言うが、強ち否定しきれない言葉だった。
「正直――分からないです」
「優しいのね、春歌ちゃんは」
「優しいですか?」
「私なら殺してるかもしれないわね。よくて半殺しかしら」
「は、半殺し――」
「まあ道の往来でこんな物騒な立ち話するのもなんだし、教室に行くわよ」
そう言って沙耶は先を急いだ。
「行こか春歌ちゃん」
「あの、猛さんは――もしも――直人君を殺した人達と再会したらどうします?」
「……正直、分からないかな。でも、どうしてあんな事をしたのかは問い質したいと思う」
悲しそうに猛は言った。
春歌は「そう、ですか」と返す。
☆
教室の雰囲気は相変わらず異様だ。
まるで人狼ゲームでもやっているかのような感じである。
皆、平静を務めているが何処かぎこちない。
臨時の担任教師も生徒の顔色を伺う情けない大人と言う感じだ。
他のクラスでも似たような雰囲気らしい。
「異様な雰囲気ですね」
「無理もないよ。イジメで人が死んで、デザイアメダルなんて言う怪人化する力を使ってるんだから。その力も簡単に手に入るんだから」
例えるなら誰が拳銃を隠し持っていて、どういう理由で、何のために発砲するか分からない状況なのだ
イジメなんて物があったから余計に皆、疑心暗鬼になっているかもしれない。
今の学園の縮図かもしれない。
デザイアメダルをばら撒いた人間はこの状況を望んでいるのだろう。
普通なら学級閉鎖をしなければならない状況だ。
「ちょっと……いいかな?」
そこでクラスメイトの女子の一人が猛と春歌の二人に声を掛ける。
確か図書委員の女の子だ。
☆
学校の裏手の人気のない場所に呼び出された春歌と猛の二人。(沙耶は二人と同じクラスであるが、ついてこなかった)
そこで女の子は――
「ねえ、もしも私がデザイアメダルを持ってると言ったら倒すの?」
衝撃的な一言を口に出す。
「どうしてそんな事を?」
春歌が尋ねる。
「私恐いの――加島君がああなっちゃったし、次は自分の番かもって――」
「自分の番って――」
つまり次は自分がいじめの標的になるんじゃないかって思ってるんだ。
「だって加島君死んだんだよ? それに殺した連中はノウノウと生きてるって――デザイアメダルはやったもん勝ちの免罪符だって――でも恐くなって――」
二人の心を抉る様な事を言う。
しかし猛はある事が気になった。
「ちょっと待って、まるで誰かから貰ったような言い分だけど」
「それは――」
「困るんだよな――ウチのクラスでこんな事されちゃあ」
そこに臨時の担任の先生がやって来た。
手にはデザイアメダルが握られている。
「教師なんてなる奴は就職活動で保険として教員免許持ってた奴がなるような、なんの旨味もない職業なんだよ――分かるか? 分かんねえよな? お前らみたいなガキにはよ」
「せ、先生――」
女の子は怯えながら担任の豹変を。
剥き出しにした悪意を見て怯えている。
「大体なんで俺が地雷だらけのクソガキどもの面倒見なきゃなんねーんだ!? 俺はもっと優れた人間の筈なんだ!? 本当はもっといいところに就職して――なのにこんなクソみたいな仕事しなきゃなんねーんだよ!?」
そんな女の子の心境など知った事かと担任教師は悪意を放出する。
「よりにもよって生徒がデザイアメダル持ってるだ!? ふざけんなよ!! 再就職なんて出来やしねえじゃねえか!! やっぱ地雷じゃねえか!! 校長も、教頭も、学年主任も、どいつもこいつも死ねばいい!! いや、いっそこの手でどいつもこいつも殺すか!? そうか、その手があったな、ヒャハハハハハハハハ!!」
そしてデザイアメダルの力で怪人へと変貌する。




