第9話「親睦会」
Side 天野 猛
レクリエイション施設の一つ。
カラオケルーム。
そこに天野 猛、城咲 春歌、揚羽 舞がいた。
猛と春歌はまだ毒島先生の悪ノリしたカウンセリングのような物のダメージが抜けきっておらず、二人とも顔を真っ赤にしていた。
舞もその餌食を食らったのか顔が赤い。
「そ、そう言えば志郎先輩は?」
場の空気を変えるためか、それともただ単純に気になっただけか春歌が舞に尋ねる。
「ああ、部隊の再編制の手続きとかで色々と忙しいの。それに貴重な科学者で技術者でもあるしね――」
と、何処か寂しそうに舞は行った。
「別動隊か……」
「私も猛や春歌とは違う班になるわね」
「そうなんですか?」
猛は驚いたように言う。
「ええ。組む相手は決まってるわ――姫路 凛。理事会の役員の娘よ」
そう聞いて春歌は「聞いた事があります」と返した。
猛も聞いた事があるな。
と言うか中等部の人間なら天村 志郎と同じぐらい聞いた事がある名だ。
どちらかと言うと問題児的な意味で。
志郎とよく張り合っていたのも印象的だ。
「と言うか戦えるんですか?」
当然な疑問を春歌は投げかけた。
「戦えるみたいよ。なんかこう、宇宙戦艦の艦長みたいな感じの衣装だったわ。だけど性格が性格だから誰かが手綱引いとかないといけないわけで――」
「「はあ……」」
猛と春歌の二人は(大丈夫なんだろうか……)と思った。
「二人はそのままのチームだけど――万一危なくなったら私達のチームが駆け付けるわ」
「それって姫路先輩もついてくるんですよね」
春歌がその点を指摘すると舞は「そうなるわね」と苦笑する。
思わず猛もつられて苦笑する。
「失礼します」
ドアが規則正しく二回ノックされた。
何だろうと思いながら猛は「どうぞ」と言った。
「「沙耶さん!?」」
「あら、アナタもアーカディア入りしてたのね」
森口 沙耶。
長い緑髪。
眼鏡をつけた知的そうな雰囲気。
大人びているような顔立ち。
春歌や舞に負けない歳不相応なプロポーション。
「春歌ちゃんも舞先輩がいる~♪ 猛も相変わらず可愛いね~男の娘枠かな?」
「あ、相変わらずだね」
男の娘呼ばわりされた猛は苦笑する。
森口 沙耶。
男よりも女が好きだと言う変人な科学者。
「私も猛と春歌と同じチームに配属だから」
「え? 沙耶さんも配属なんですか?」
「まあ志郎先輩と同じく技術者畑だからあんま前線には出ないけど、出る時は出るから――それに私の女達にも被害出てるから――この事件の黒幕にケジメつけさせないとね」
などと言いながらどす黒いオーラ―を放出する沙耶。
猛と春歌の二人はドン引きし、舞は「相変わらずね」と呆れていた。
二度も言うが女好きである。
そして先に名前が挙がった姫路 凛と同じく過激な性格の問題児である。
「まあ立ち話もなんだし~カラオケルームだから皆で歌でも歌いましょうか?」
沙耶にそう言われて「そ、そうですね」と春歌は返す。
「はあ……まあ待てば志郎も来ると思うけど――」
「舞先輩、志郎先輩一筋なんですか~私は~?」
沙耶はそう言いながら舞に抱き着こうとするが舞は阻止しようとする。
舞はノーマル、沙耶のように女に人目構わず抱きつかれたり、抱き着く趣味は無い。
そんな沙耶を見て猛と春歌は今後が不安になって来た。




