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Evil Zero  作者: たいやき
日本 旅立ち編
1/15

Zero


いつの日の事か

戦場という名の正義の舞台に、私は立った。


それはあまりにも残酷で

醜い人の心を露わにしたものであった。


私の夢も希望も願望も

たった一度の殺し合いで、全てがピースの合わないパズルのように崩れ落ちた。


何人も何人も人を殺し


何度も何度も声にならない声を聞き


何人もの絶望に満ちた顔をこの目に焼き付けた。


誰かを救うために

誰かを殺す事を正義だと、私は信じた。


このような世界

崩壊以外平和は訪れないと、私は感じた。


でも、そのようなものはただの幻想。


この世界が無くなれば、平和も悪もなにも残らない。


結局平和という名の幻想の世界は生まれない


そう私は幻滅した。


◇◇◇


いつの日の事か

戦場という名の悪の舞台に、俺は立った。


それは想定してたものと同じで

誰もかれもが自分の正義を貫いてこの世を去っていく。


そして誰もかれもが自分の悪を貫いてこの世を後にした。


俺の夢や希望や願望は

正義という名の悪で塗りつぶされた。


自己犠牲で

誰かが救えるのならそれは正義だと、俺は願った。


この世界から

悪が無くなれば平和になると、俺は信じた。


だが、そんなものはただの幻想だと知った。


戦争を無くすために誰かを殺せば


殺した誰かを大切に思う人は悲しむことになる。


結局平和という名の塊は、ただの偽物と言う事を、俺は知ってしまった。


◇◇◇


空の色は濃い茶色をした薄暗いものだった。


辺りは血の海に成り果て人の残骸が地を埋め尽くすほど倒れている。人の残骸は山積みとなりひとつの山となって空に近づいていた。

醜い姿に変わり果てた敵兵や味方の上を静かに踏み、前に進んだ。


服には誰のかも分からない血が赤で染まり尽くすほどついている。俺のもっている剣にも顔にも靴にもその血はついている。


太陽の光が雲の間から覗き出た時金色こんじきの髪の少女が残骸の丘から見下ろしていた。

それはまさに神様が雲の上から誰かを見ているかのように。


気づかない内に俺は剣をかまえていた。


そして少女は剣を上にかざしていた。


遠く離れた少女の顔は見えない。ただ今の俺の顔は怯えに染まっていることは分かる。


少女の剣から神々しい光が天に繋がるように出た。


その場だけこの場とは全く違う光を宿しどんどん光を大きくしていく。


少女が空を切るように剣を振り下ろすと、同時に俺から見える世界は光で覆い尽くされた。


◇◇◇


チュンチュンチュン


鳥のさえずりが聞こえて阿修羅は目を覚ました。

いつも見る空と木の葉っぱが目の前に浮かんでいる。枝葉の隙間から太陽の光がちらちらと入ってくる。また鍛錬の途中で寝てしまったのだ。


今日は春休み明けの学校、あまり気が乗らない俺は何分か同じ空をずっと見ていた。せっかくの休みの日は短く必ず終わりが見えてきてしまう。

空から風がふいた。心地よい風が頬を撫で起きることを決心し、重たい体を持ち上げた。


中庭の縁側から家の中な入り朝風呂に入るため脱衣場へと向かった。髪に着いた土を落とすため水浴びをし、部屋にある制服に着替えると台所で妹の凛りんが朝食の準備をしていた。


今日は凛の高校入学式

そして阿修羅は進級して高校二年の始業式だ。


「おはよう兄さん」


自分の手元を見ながら凛は言った。肩まで伸ばしている黒い髪をゴムでくくりエプロンを付けて食事の準備をしていた。


「ああ、おはよう」


濡れた髪をタオルで拭きながらネクタイを肩にかけ座布団に腰を置く。今日は凛が食事当番の為、阿修羅は机に置いてあるリモコンでテレビをつけた。


どのチャンネルでも去年の今日ににあった中国消滅事件の話題でもちきりだった。あの大国が跡形もなく消えるなんて事、天地がひっくり返ったとしてもありえない。


今年で丁度一年が経つが何の手がかりも掴めていないらしい。


今となってはもう興味すら無くなったが一時期阿修羅は興味を持ち自分が調べられる限りの事を調べた。

しかし、わかったのは突如として中国という大国が消えた事と中国にいた人々も消えたと言うこと。


あまりにも分からない事だらけで俺は興味を失った。今やっているテレビもそうだ。何の手がかりも得られないまま一年が経ってしまった、と言うだけの番組。


阿修羅はもう一度リモコンを取り電源をポチッと切った。


テクテクと歩いて机に歩み寄る凛の手にはお盆二つ分の大きさの上に食事を置いていた。


真っ黒になったテレビをチラりと見ながら凛は言った。


「今日で一年か。あの怪奇事件は一体なんなんだろうね」


整えられた眉を眉間に寄せて聞く。後ろ髪のゴムを外して少し長い髪を揺らしながら机に置いた。あまりこの話に興味がなかった凛も今日に限っては別らしい。前髪をクルクル指先でいじりながら黒いテレビを見ていた。


「これはどう思案したとしても無駄だろうな」


阿修羅は手を合わせて味噌汁をすすり始めた。


凛も無駄だと思ったのか玉子焼きに手をつけていた。


朝食を食べ終わって食器を片付けると、

凛は早々とバッグをもって家を出ていった。凛が出ていくのを見て阿修羅もそろそろ出る時間だと思い歯磨きを済ませ玄関で靴を履いた。


玄関の戸を横にガラガラと閉め鍵をかけて重たい足を動かして門を潜った。


敷地外の木には桜がついていて舞っている。春風が木に実った桜を奪っていくかのように強く、優しく吹いた。

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