7話 異世界でやりたいこと
さて、そんなわけでなろう系のような掴みは取れたとして、本題に進むために俺は色々と朝倉ノエルに聞いた。
というか、1からある程度のことは教えてもらった。
まず始めに、ここはなぜか知らないけど掃除箱と繋がっている異世界の国の1つで、溢れまくった魔王たちがまだ侵攻をしていない穏やかな王国『スターリア王国』であるらしい。
そして、この世界の人々には職業と言われるRPG方式が採用されていて、色々な職業が存在するらしい。
でもまさか魔王という職業だとは想像していなかったが。
それで、この世界の人々はアビリティとスキルを駆使しながらモンスターを倒したり、自分の職業に適したスキルを覚えたりしているらしい。
で、俺に顕現したアビリティの1つ《ロキの加護》という自身の攻撃力より低いモンスターを倒すことが出来るチート能力があるわけで、俺の脳内にいる自称ロキをロキと改めなければならない。
そして、意味不明にも《?》が記されているアビリティ《勇者と魔王》。
はっきり言って嫌な予感しかしない。
最後に、能力値だけども、この世界のシステムでは、体力以外は100がカンストらしい。朝倉ノエル曰く、攻撃力80はバカ並みに高く、速さ50も二流の冒険者ぐらい高くて、体力は普通に高く、それ以外はカスだとか。
そんなことをからかうように笑いながら言っていた。
日本に帰りたい。
この説明を朝倉ノエルから受けている最中も、脳内にいるロキがひたすら笑い続けている。
「まぁ、でもこれで魔王討伐に近づいたわけだよ。ふふん」
機嫌よく胸を張っている朝倉ノエルは、俺が魔王を討伐する前提で話を繰り広げている。
「じゃあ、俺はこれで失礼します」
この世界について話を聞いた俺は、巫女姿の朝倉ノエルに一礼する。
「お願い! お願いだから一度だけクエスト手伝ってくれない? 私、見た目通り修道女だから回復技しか使えなくて、パーティは全部拒否をされて、冒険をしたことないの! だから、1回だけ、1回だけ手伝って!」
ついさっきまでは無理矢理強要していた朝倉ノエルは、今にも泣きそうな顔をしながら目を潤ませて懇願する。
今回は少し様子が違う。
次、俺が断ったら諦めてくれそうな感じがするが、ここで断ったらばちが当たりそうな気がした。
「……分かりました。今回だけですよ」
でも、あんな表情をされたら、逆に断りづらいので、俺は渋々彼女の懇願に負けて、お願いを飲むことにした。
『がはははは! ちょろいなあ! がはははは!』
「……! 本当!? ありがと~後輩く~ん!」
自称ロキは脳内で大笑いしているし、巫女姿の朝倉ノエルは今にも飛びつきそうな勢いで、俺に抱き着こうとしている。
「ちょ、やめてください! ほら、クエストに行きましょう。朝倉さん」
俺は抱きついてくる朝倉ノエルを華麗に避けながら、クエストに行くように促した。
「うん! じゃあ、まずは装備を買いに行こう! 後輩くん、制服のままだったらまともに戦闘出来ないからね! お姉さんが買ってあげよう!」
上機嫌な朝倉ノエルは、初めて先輩のようなところを見せた。
今日一日だけだ。
彼女に付き合ってあげよう。
「ギルドに行く途中に装備屋があったから、そこで買おっか! ほら、行こう!」
朝倉ノエルが俺の腕を引っ張るようにして、走り出した。
そんな彼女の顔は、まるで純粋無垢な少女のような笑顔で溢れていた。
修道服の姿がより一層彼女を純真な少女に見せる。
この子は、ずっとこっちの方がいいんじゃないか?
本人には言えないというか、絶対に言いたくないけど。
そうして、俺と朝倉ノエルは、装備屋に向かった。