活動記録1日目 その7
焼きそばパンを買った俺たちは、勉強しているみんなの邪魔にならないように4階にある芝生の茂った庭みたいなところのベンチに座っていた。
どうして、4階に庭がついているのかというと、ここがよく分からない高校だから。
答えはこれしかないので、それ以外は答えられない。
「はい、小郡さん」
俺はラップに包まれた焼きそばパンを取り出すと、半分に千切って、その片方を小郡さんに渡した。
すると、不思議そうな顔をする小郡さんが、隣に座る俺の方を見て言った。
「あの、私の方が大きいです。その、アリマさんの方が身長も高いんだし、私は小さい方をもらいます」
やっぱりな。
綺麗に半分に出来なかった焼きそばパンの大きい方を気づかないだろうと渡したが、真面目な小郡さんはまた遠慮している。
だから、
「はむ」
「あ――!」
俺は手に持っている小さい方の焼きそばパンにかぶりついた。
「もぐもぐ、ごくん、もう俺食べちゃったんで、早く小郡さんも食べちゃってください。次の授業始まりますよ」
「ずるいです、ずるいですよ、アリマさん! 私、大きい方食べるしかないじゃないですか! こうなったら、食べてやりますよ! いただきます! はむッ!」
ぷくうと頬を膨らませている隣の小郡さんは、大きな口を開けて焼きそばパンにかぶりついた。
ハムスターみたいに暫くもぐもぐさせていると、小郡さんの目が輝きを帯びたようにかっぴらいた。
「アリマさんアリマさん! これ、とっても美味しいです! こんなパンに焼きそばを挟んだだけの主食オン主食の組み合わせがこんなに美味しいだなんて、私、今感激しています!」
飛び跳ねるんじゃないかって勢いで、焼きそばパンのことを訴えてくる小郡さんを見ていると、何故だかこっちまで嬉しくなってくる。
「よかったですね」
「はい! 焼きそばパンもそうですけど、お外のベンチに座ってお友達とご飯を食べるなんてしたことなかったので、少し緊張する反面、とても嬉しい気持ちです。それに、アリマさんが初めてのお友達でとてもよかったです。ありがと、アリマさん――」
小郡さんは、顔を少しピンクに火照らせて、はにかみながら俺を見た。
「――」
そんな彼女の反応に、俺はぷいっと目を逸らして焼きそばパンを頬張る。
「どうしたのですか、アリマさん」
いきなりの俺の奇怪な行動に、小郡さんが心配したように尋ねてくる。
「いえ、なんでもないです……」
焼きそばパンをすべて食べ終わった俺は、目を逸らしたまま大丈夫だと告げる。
揺さぶられてしまったなんて絶対に言えない。
何がとは言わないが、揺さぶられてしまった俺は彼女を見ることができない。
誰が、こんな序盤からこんな展開を予想していたなんて思うだろうか。
俺がちょろいのか?
いや、これはあくまで可愛いと思っただけだが、こうなるとこの物語の本質が変わってくる気がする。
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了5分前のチャイムが鳴った。
「行きましょう、アリマさん」
小郡さんが立ち上がって言った。
「はい、そうですね」
俺も立ち上がり、庭を後にした。
よかった。
そう安堵している自分がいた。




