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活動記録1日目 その6

「あの、俺、焼きそばパン買うんで、半分にしましょう」


 微妙な空気になってしまった売店の雰囲気を切り替えようと、レジの前にある焼きそばパンをレジのおばちゃんに渡して、自分の生徒証を胸ポケットから取り出した。


「は、半分こにするんですか!?」


「腹減ってるなら小郡おごおりさんどうぞ」


「い、いえ、わたくし、あまりおなか減っていませんので、アリマさん貰ってください!」


 何が何でも焼きそばパンを譲ってくれそうな勢いの小郡おごおりさんは、なぜか半分にするっていう考え方が頭に入っていないようだ。


「いや、じゃあ、半分にして――」


 もう一度、焼きそばパンを半分にする提案をしようとした時。


 ぐうううううううううううう。


「は――!」


「……」


 先程よりも大きな音が売店で鳴り響く。


今回ばかりはしっかりと目の前の小郡おごおりさんの腹が鳴ったのを聞きとれてしまった。


 顔を真っ赤にさせた小郡おごおりさんが必死に音を止めようと腹を抑えるが、たぶん意味ないと思う。


「あの、貰ってください。俺そこまで腹減ってないんで」


 焼きそばパンを手に持つ俺は、赤面して腹を抑えているおごおり《おごおり》さんに焼きそばパンを渡そうと手を伸ばした。


「い、いやあ、なんでしょうねぇ、あの音は~。あははははははは、なんか、あれです。足を引きずる音です。そうほら、ね? ね? そうでしょ、アリマさん!」


 顔を真っ赤にしながら、目をきょろきょろとさせる小郡おごおりさんは、足を引きずりながら音を出して見せるが、明らかに先程の音と違うのは誰にだってわかる。


「あの……すみません、朝時間なかったので、朝食も食べてないんです……」


 足を引きずるのをやめて床を凝視する小郡おごおりさんは、ぎりぎり聞こえてくる小さな声で恥ずかしそうに言った。


「じゃあ、焼きそばパン貰ってください。これ、お願いします」


 俺は売店のおばちゃんに焼きそばパンを買うことを告げて支払いをする。


「はい、焼きそばパン1つ150円ね」


「生徒証からお願いします」


 売店のおばちゃんがレジに打ち込んで値段を言うと、俺はおばちゃんに自分の生徒証を渡した。


 お腹が鳴った小郡おごおりさんは、相変わらず下を向いて黙りこくっている。


 まぁ、仕方ないか。


「はい、生徒証とレシートね」


「ありがとうございます」


 売店のおばちゃんから生徒証とレシートをもらい、支払いを済ませた。


「はいどうぞ」


「い、いえ、アリマさんが買ったものをもらうわけにはいきません」


「でも、ダメです。今食べないと、授業中に腹が鳴ったら、もっと恥ずかしい思いしますよ?」


 下を見続ける小郡おごおりさんに焼きそばパンを食べるように説得する。


「……じゃ、じゃあ、せめて、半分こでお願いします……」


「分かりました。じゃあ、行きましょう」


 漸く諦めてくれた小郡おごおりさんの言質を聞くと、俺たちは売店を後にした。


「頑張んなよ、お2人さん!」


 売店から去る前に、売店の方を見ると売店のおばちゃんがニマニマとしながらないんか言っていたが、俺は一礼をして去った。


 あまりに昼休みの時間を潰しすぎて、昼休みの残り時間が迫っているので、否定するのを諦めた。

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