活動記録1日目 その4
「それで、話の続きですが……」
「小郡さんは、昼食持ってきてますか?」
先輩が去って、教室で話を中断させてしまった昼食の話に戻そうとするが、恥ずかしそうに続きを言うことを躊躇う小郡さんの代わりに、俺が会話の主導権を握って続行させることにした。
「いえ、私も昨日の帰りが遅かったので、登校時間ぎりぎりまで眠ってしまったので、お弁当を作る時間がありませんでした」
「じゃあ、あんまり時間もないし、売店でいいですか?」
俺は小郡さんが昼食を持ってきていないことを確認し、ここから1番近い売店で昼食を済ませることを提案する。
食堂はこの学校に2つ存在するが、どちらも校舎から出ないといけないが、一方、売店はAからE棟にそれぞれ2つ存在し、先輩と話していたのも相まって時間もそんなにないため、俺たちのいるA棟の売店で昼食を済ませるのが無難だろう。
「はい、そうしましょう! 私、実はお友達とどこかで買い食いなんて初めてなので、とてもワクワクします!」
俺の提案に迷うことなく賛成してくれた小郡さんは、またもや目を輝かせて告白する。
そんな純粋無垢な彼女の顔を見ると、ただ効率を考えて売店に行くことを提案したことに少し罪悪感を覚えつつ、まさかここまで感情豊かであることに少し驚いている。
昨日初めて関わったときは、もっとやばい奴かとも思ったが、そんなことはないらしい。
「行きましょ、アリマさん!」
「はい」
俺と上機嫌に鼻歌を歌う小郡さんは1階の売店に行くために、階段の方へ向かった。
そうだ。
俺はこういう学校生活を送りたかったんだ。
異世界になんて行かずにこんな普通の学校生活を送りたい。
公立高校に落ちなければだとか、もっとよく確認してこの高校を受けるべきだったとか、先輩と関わらなければよかったとか思いもしたが、案外この高校に入学して正解だったかもしれない。
そんな汚い考えが頭に過ったのは、あまりよくないと理解しつつも、この学校に来て初めてリア充らしいことをしているなと感じた。