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我ら、魔王討伐部!~異世界には行かずに普通の学校生活を送りたい~  作者: UCベクトル
序章 我ら、魔王討伐部!
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3話 第5倉庫境界線戦

 背後から死神が魂を狩るんじゃないかってぐらいの悪寒がしたのと同時に、胸を締め付けるような激痛を感じるが、今はそんなことを感じるよりすべきことがあるので、そんな感覚に襲われている場合じゃない。


 俺は、ぎゅっと腕を締め付けてくる朝倉あさくらノエルに尋ねる。


「てか、誰か来たらどうしてくれるんですか。この光景は完璧にカップルのそれですよ」


「いいじゃんいいじゃん! もし誰かに見られたら付き合ってるって言っちゃおうよ!」


 なぜか機嫌良く、ノリノリに張り切りだす朝倉あさくらノエル。


 本気なのか冗談なのか、はたまた何も考えていないのか。


 彼女の考えが読めないため、言動1つ1つが恐ろしく怖い。


「絶対嫌です。あなたとだけはカップルって思われるのだけはマジ勘弁です」


「うわぁ! 後輩くんが酷いこと言う~! こうなったら何が何でも、今日中にカップルだということを全学年に広めてやる!」


「いや、本当にヤだ。マジやめろよ、めんどくせーよ」


「後輩くんの口が急に悪くなった!?」


「その後輩くんってやめてください。あなたの後輩になった覚えはないんですけど」


「まぁまぁ、どうせ物語の展開的にも入部するんだからいいじゃん。それに私の方が1つ年上なんだから、どっちにしろ後輩でしょ。どうせなら、私のことも先輩って言ってくれてもいいんだぜ?」


「あ、朝倉あさくらさん、本当にそういうのいいんで、やめてください。それと、神の領域とか物語の展開的とか言うの本当にやめたほうがいいですよ」


「そんなにけちけちすんなよ~」


 初対面の人間によくここまで壁を隔てないで話せるなと感心しつつ、朝倉あさくらノエルに引っ張られるがまま、大人しくついて行くというより、全然離してくれないし、抵抗しても無駄な気がするので、大人しくついて行くしかない。


「ここが第5倉庫だよ!」


 AからE棟まである校舎のE棟5階の最奥にある第5倉庫の看板を指差しながら、朝倉あさくらノエルは言う。


「お先にどうぞ!」


 朝倉あさくらノエルは、どこから鍵を取り出したのか、慣れた手つきで第5倉庫の鍵を開けて招待した。


「ありがとうございま――」


 流れのままに第5倉庫に入ろうとした俺は、突如、何かが警告してくれるように感じ、一歩踏み出したところで入るのを躊躇う。


 危ない危ない。


 あと少し遅かったら、学校内で監禁されそうになるところだった。


朝倉あさくらさん、先にどうぞ」


 朝倉あさくらノエルの誘導に引っかからなかった俺は、彼女に先に入ってもらうことにした。


 このまま素直に入っていたらどうなることやら。


 もう、ここのタイミングしか逃げる機会は永遠にやってこないだろうから、絶対に入るわけにはいかない。


 一方、思い通りに事が進まなかった朝倉あさくらノエルは、だんだん強引になっていく。


「いやいや、後輩くんから入りなよ」


「やはり目上の方が優先なので」


「いいから、そういうのいいから入って」


「年上の人に気を遣わせるわけにはいきませんし」


「いいってば、別に気を遣ってないし。急にどこかの『まじめがね』みたいにならなくていいから」


「いえ、ボク、マジメですよ。ここの学校に首席で入ったぐらいですし……。『まじめがね』ってなんですか?」


「うわぁ、嘘くせぇ。後輩くんがボクとか、その容姿から考えられないんですけど」


「容姿関係なくないですか? 目つきが悪いこと結構気にしてるんですけど。そんなことより早く入ってくださいよ」


「いや、ホントにそういうのいいんだよ。いらないから。早く入って」


「俺も嫌です。先に入りたくないです」


「それなら私だって嫌だよ」


「ほら、言うでしょ? 自分がされて嫌なことは他人にするなって」


「そっくりそのまま後輩くんに返してあげるよ。あ、そういえば私、今日の占いで人に譲るといいことあるかもって」


「それなら俺……うんんっ! ボ、ボクもそうでしたよ」


「嘘だね! 後輩くんは占いを信じるタイプじゃないね! それに無理してボクって言わなくていいから」


「人を見た目で判断するのはよくないですって。ボク、夢見がちな高校生なんですよ。だから、占いとか、めちゃ信じるタイプです」


「いや、その気怠そうな顔して言っていることやばいよ。何が夢見がちな高校生よ。ぷぷぷぷ、変なの~」


「もういいよ。さっさと入ってください」


「いやだ! やだやだやだやだ、いやだ!」


「そんな幼い子みたいに駄々こねても、俺も絶対入りませんから」


「じゃあ、私入ります」


「どうぞどうぞ」


「――ちがう! そこは、じゃあ俺が入るでしょ!」


「そもそも2人で出来る芸風じゃないですって。何やってんすか、早く入ってください」


「――いや、物語が進まないじゃん! 後輩くんが入ってくれないと、こんなやり取りばっかり書いていたら、ネタが無くなってくるわけ。だから、早く入って!」


「だから、そういうことやめてくださいって。――って、うぉお!」


 またしても踏み込んではいけない領域に侵入する朝倉あさくらノエルに、背中を無理矢理押されて第5倉庫に足を踏み入れてしまった。


 押されて入るなら、「押すなよ」というネタでも言っておくべきだったか。

 強引に入室させられた俺に残るのは、そんな後悔しか生まれてこなかった。


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