活動記録1日目 その2
「――たのもおおおおお! 宗像アリマはいるかねえええええ!」
真面目で重い雰囲気をぶち壊す勢いで教室中に響き渡ったのは、これも言わずもがな朝倉ノエルという俺の部活の先輩である。
先輩だなんて言いたくはないけど。
この教室にそんな名前は俺しかいないため、教科書ににらめっこしていた真面目な生徒たちも流石に俺の方に振り向かずを得ない。
「あのー教室間違ってますよ。2年生は1つ上の階ですよ」
俺はそこら中筋肉痛な身体を無理矢理動かして立ち上がり、教室の前で空気を読まずに教室を間違えている先輩に教えてあげた。
しかし、それが間違えだった。
いや、時間の問題であったが。
「おうおう、今日も元気にしているね、アリマくん! アリマくんの元気は先輩の元気ってね!」
勉強している人もいるっていうのに、そんなのお構いなしにずかずか俺たちの教室に侵入してくる先輩は、空気を読むことなく陽気なことを言って、自分が場違いであることすら自覚していない。
「ちょ、先輩、入ってこないでください。ごめん、小郡さんも一緒にいいかな?」
「あ、はい!」
俺は話の途中のすっかり緊張を解いている小郡シオンを連れて廊下に先輩を追い出す。
「あんた何考えてるんですか。みんな勉強してるでしょ」
「いやーだってだって、せっかくの昼休みだっていうのにさ、あんなズーンってした空気だったら、皆がその空気に飲み込まれちゃうじゃん」
教室の扉を閉めて教室の中に聞こえない小声で先輩に指摘するも、全く反省した様子鳴く彼女が叫んだ理由を吐いた。
人の邪魔をするほどクズ野郎だったっけか、と先輩への信頼が無くなりつつも、小郡さんとの会話の途中であったため、先輩との関わりをどうにか断とうと思索する。
「用があるならさっさと言って帰ってください。俺、小郡さんとの会話の途中だったんですけど」
「まぁまぁ、そんな酷いこと言わずにさー。ほら、小郡さんも一緒でいいからさ」
「……はぁ」
なぜかこちらが宥められる結果になってしまった。
今日からこんな日常が続くとなると、少々考えものだと溜息が零れてしまった。