36話 やはり先輩
俺と先輩は、クロノさんと別れて、地球の掃除箱に繋がる場所まで何をするわけでもなく向かった。
「ねぇ、後輩くん、入部のことなんだけど……」
掃除箱に繋がる場所に向かっている最中、先輩が俺の入部の件について若干気不味そうに聞いてきた。
もちろん、俺の答えは決まっている。
「いいですよ。入部しますよ」
「あ、うん……」
俺は隣を歩く先輩の顔を見て入部することを告げた。
しかし、入部することを告げても、先輩はあまり嬉しそうにせず、悪戯を隠そうとする子供みたいにさっと目を逸らした。
怪しい。
「後輩くんがそう言うと思って、今日、放課後になった瞬間、入部届出してきたんだよね……」
「……」
手をもじもじさせながら、小声でそう告白する先輩は、俺の目を全く見ようとしない。
「でも、既に入部届を出しているって、入部届には自署する部分があるんじゃ?」
「それは私の能力を持ってすれば、後輩くんの字なんてすぐに真似ること出来るし。まぁ、でも結局入部する物語的展開になったんだから、いいよね? 悪いことしてないよね? 速いか遅いかの違いだからね。私、悪くないよね? どや?」
「……」
「いや、ごめん、我慢出来なくて入部届出しちゃったの! ほら、最初から入部することになるって言ったでしょ? だから――」
全く反省せずに言い訳を始める朝倉ノエル。
ふざけるな。
なにが入部することになるから、先に出しても同じだ。
好きなものを一生懸命守ろうとする朝倉ノエルを、尊敬しそうになっていたのに、チンピラクソ野郎の朝倉ノエルに降格した。
「ネヴィ、先輩の脳内に入っていいぞ」
俺は未だに脳内にいるネヴィにそう言った。
「え、あの子が入ってくるの? いや、それだけはやめて? ホントにやめて? ほら、私、正式な先輩だよ? 言うこと聞いて……ください! お願いします!」
全力で首を振りながら泣き目になって懇願する先輩の姿を見ていると、俺の中の悪戯心がやりたい衝動に駆られていく。
『いっていいの?』
ネヴィが脳内で聞いてきた。
「ああ」
『じゃ、いってきまーす!』
元気よく声を出して、俺の脳内から去ったネヴィ。
「ああああああああああ、ごめんってば! やめて、叫ばないで! 叫んでない? 歌を歌ってるって? やめろ、この音痴いいいいいいいい! ああああああああ、ごめんごめん、泣き叫ばないでえええええええええ!」
『アリマってサドなのか? 流石に笑えん』
ロキが俺を軽蔑するように言った。
ネヴィを脳内に歓迎した先輩が、叫んで地面をじたばたさせている様子を眺めていた俺を、スターリアの国民が敵視するように睨んでくる。
「ごめん、ネヴィ戻ってきて――」
なんか、魔王とバレるよりも先に牢屋に入れられそうだったので、先輩の脳内にいるネヴィに戻ってくるように指示した――。