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番外編3 待ち侘びる
洞穴の中でしか行動の出来ないボクは、彼らが来るのを最奥で待っていた。
「わあっはっはっはっは! ボクはときのまおーである~!」
魔王であるボクは、昔誰かに教わった魔王の登場の仕方をおさらいするが、何かしっくりこない。
この洞穴にはモンスターがいっぱいいる。
みんなボクのことを恐れて近づいてこないため、この100年間友達がいない。
「あーおそいなあ……」
ボクは、地べたでごろんと寝そべって彼らが来るのを待っていた。
とても、楽しそうな声がする。
特に女の悲鳴。
ハイネの声は全く聞こえない。
もしかして、ボクの見間違いだったろうか。
そうだとしたら残念だ。
遊んでもらえない。
「く~ろ~の~はチンピラあにき、だけど、ボクにはやさしいくろの~。ハ~イ~ネ~はせいぎのゆうしゃ、だけど、ときどきうざいなハイネ~。ひまだな~」
彼らに会いたい衝動に駆られるボクは、100年間という時間が流れた長さよりはるかに長く感じてしまう。
「あーはやくこないかなー」
ボクは洞穴の最奥で彼らが来るそのときまで、わくわくしながら待つのだった――。