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我ら、魔王討伐部!~異世界には行かずに普通の学校生活を送りたい~  作者: UCベクトル
序章 我ら、魔王討伐部!
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12話 初クエスト

「ねぇ、後輩くん!? どこにいるの、後輩くん!」


「俺、さっきから朝倉あさくらさんの隣にいるんですけど」


 ハイネ洞穴と呼ばれる洞窟では、明かりなんて一切存在せず、真っ暗な闇黒の世界を勘だけで進んでいた。


 ハイネ洞穴は、ときの魔王と呼ばれる100年前に暴れていた魔王によって造られた洞穴らしく、ときの魔王が討伐されてから誰も足を踏み入れていない。


 理由はわからない。


 だが、誰も洞穴に足を踏み入れることを恐れているらしい。


 そんな危険なクエストをやろうとしたにもかかわらず、ビビりながら歩いている修道女プリースト朝倉あさくらノエルは、「アイテムとか道具とか買うお金ないから、直行だー!」とヤバいことを言ってクエストに向かったため、本当にヤバいことになってしまっている。


「そもそも、こんな無闇に歩いていたらルートわかりませんよ?」


 隣にいるだろう朝倉あさくらノエルに指摘した。


 このクエストのクリア条件は、洞穴の内部をすべて解明することであるにもかかわらず、俺たちは暗闇を勘だけで進んでいるのだ。


 来た意味なくないか?


 ドサッ!


 突如、俺の隣で何か物音がした。


「いったあああああい! ねぇ後輩くん歩けなぁ~い! 転んだぁ~! いてぇよぉ!」


 何をしているか見えないが、足をじたばたさせる音を生み出しながら俺に駄々をこねている。


 よくそんなのでクエストランク不明のクエストを受けたもんだ。


「……あなた、修道女プリーストでしょ。回復技使えるんじゃないんですか?」


「あ、そっか! 《ヒール》!」


 朝倉あさくらノエルのいる場所から白い光が輝きだし、修道服からはみ出た膝小僧の出血している怪我が徐々に治っていく。


 そのとき、彼女の顔を見ると、涙がぼろぼろと流れ、鼻水が垂れ流れていた。


「……」


 うん、見なかったことにしよう。


「ナイスだね、後輩くん! 自分が修道女プリーストであることをすっかり忘れていたよ!」


 暗闇の中、おそらく親指をぐっと立てているだろう朝倉あさくらノエルは、自分で言ってはいけないことを言う。


 修道女プリーストじゃないことぐらい、あなたの性格見ればすぐにわかるんだよ。


 てか、明かりがあった……。


朝倉あさくらさん、《ヒール》って叫び続けてください」


 朝倉あさくらノエルが持つ回復技の《ヒール》の光を明かりにしようと考えた俺は、彼女に頼んだ。


「じゃあじゃあ、後輩くんが先輩ってこれから呼んでくれるのなら、使ってあげてもいいけど?」


「やっぱいいです」


 暗闇の中で叫んでいたのはどっちだよ。と思いながら、暗闇で偉そうにふんぞり返っているであろう朝倉あさくらノエルの《ヒール》を明かりにすることを諦めた。


 今ふと思ったんだが、こけただけで泣きすぎじゃないか?


 もしかして、ハイネ洞穴に入ったときから泣いてい――。


「――わかった! 使えばいいんでしょ? だから、泣いてたことは忘れよう? てか、忘れて!」


「あ、すみません。って言いたいところですけど、ロキみたいに地の文での会話やめてくれません?」


 ゴリラのときと言い、今回の泣いていたことと言い、やりたい放題な朝倉あさくらノエルにツッコむのも疲れてきた。


「ロキ?」


 どうやら、朝倉あさくらノエルにロキの声は聞こえていない模様。


 そういえば、ロキの声が全然聞こえない。

 遂にどっかに行ってくれたか。


『いや、いるぞ』


 ずっと黙っていたロキの声が脳内で聞こえた。


 まぁ、そうだよな。


 それにしても、汚く笑っていたロキがいない。

 極めてイケメンボイスしか聞こえてこない。

 この人は笑わない方がいいんじゃないか?


『そんなことより、そこの姉ちゃんにさっさと回復技を使ってもらえ』


 またもや真面目なことしか言わないイケボなロキさん。


 もう、こっちのキャラの路線で言ってくれないだろうか。


 そう思いながらも、俺は朝倉あさくらノエルに《ヒール》を使うように指示した。


「それじゃ、行くよ? 《ヒール》! 《ヒール》! 《ヒール》! |《ヒー……」


 突然朝倉あさくらノエルが《ヒール》を唱えるのをやめる。


 それもそのはず。


《ヒール》を連呼して、明るくなったこの空間に現れたのは、たくさんのモンスターだった。


 暗闇で見えなかったモンスターたちがよだれを垂らして、こちらを窺っていたのだ。


 ゴブリンに、巨大な吸血こうもり、巨大なクモに、大蛇に、アンデッド。

 その中にスライムが混じっていたのは、まだかわいい方だろう。


 その光景を間近に見てしまった朝倉あさくらノエルの《ヒール》が途中で止み、再び真っ暗になる。


「ね、ねえ、も、もう暗いまま前進しない?」


 俺の隣にいる朝倉あさくらノエルが声を震わせながら言った。


 今にも泣きそうな声で、嗚咽を抑えたような声で、俺に提案する。


 流石に提案を飲むしかなかった。


「そうしま――」


「――うぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!」


 俺が了承することを待たずに、暗闇の中を叫びながら駆けてどこかに行ってしまった。


「――うぐッ!」


 ドテン!


 どこかに行ってしまったかと思いきや、すぐ近くでまたこけた。


 もう、修道服着ない方がいいんじゃないか?


「うわあああああああん! 痛いよおおおおおおお! 絶対骨折したああああああ! 《ヒール》! |《ヒー……うぎゃあああああああああ!」


 洞穴に反響する朝倉あさくらノエルの叫び声。


 そのおかげでどこにいるか特定出来るものの、うるさいにもほどがある。

 だいたい、このクエストを受けようとしていたのは、あなたでしょ。


 ツッコミたい。


 こういうときに地の文を読んでくれれば、無駄な声を出さずにいいのに。


「待っててください! 今そっちに行きますから!」


 果たして俺たちの初クエストはどうなるのか。


 嫌な予感しかしないため、とにかく早く帰りたい。


 俺はそう思いながら、泣き叫ぶ朝倉あさくらノエルの方に向かった――。

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