第29話 私、妹ちゃんの活躍を陰ながら見守る
第29話 私、妹ちゃんの活躍を陰ながら見守る
妹ちゃんはめいちゃんと二人で墓地の周りをグルグルしています。囮捜査みたいなんだけれど……妹ちゃんがシークレットなブーツを履いて男の子の振りをしています☆
いやー 何やっても可愛いね我が妹ちゃんは。なんか、初々しい感じがするカップルで、どう見ても背伸びした少年少女の夜のデートだね。危険が危ない感じしかしない。
それを、遠くから見つめる私とギャラン・ドゥ……
「全体的に細身なので、少々従妹とはつり合いが悪いかもしれませんね」
ギャランの従妹であるめいちゃんは、私ほどではないけれど、女性らしいスタイルだね。まあ、まだ成長期だからもう少し育つんだろうけれど。妹ちゃんはキュっとした……シュッとした感じだけれど確かに「美少年」にしか見えない。
大体、美少年は買われる方であって、買う方には回らないよね。でも、マザコンの少年が自分の母くらいの娼婦を買うというのはあるかもしれない。
美少年を……と言えば、百年戦争の救国の聖女様に付き従った、英雄の一人で、王国元帥になった『バズ・ド・ラ』男爵が有名だね。悪名で。ラ男爵は広大な領地を持つ貴族の末裔で、多くの城を持つ富裕な存在だったんだけど、自分の城に美少年を雇い入れ、次から次に殺したって事で捕まって処刑されたんだよね。
救国の聖女様が男装した少女であったことから、その面差しに似た少年を集めたとかそんな話だった気がする。でも、拷問しちゃ駄目だよね。その結果、みんな殺しちゃったんだけどさ。
一説には救国の聖女様を復活させる為の研究をしていた魔術師が関わっていたとか、ラ男爵が吸血鬼化していたという話もあるね。
妹ちゃん達は、どうやら『伯爵』に教えられた酒場に向かっているみたいなんだけど、あの二人じゃ中に入れそうにもない。どう考えても、入った瞬間に「子供が来るところじゃねぇぞ」とか「酒場にミルクはねぇ」なんて言われるに違いない。
大体、ミルクなんてのは奢侈品だから。貧乏人の集う酒場にあるわけないじゃない? 腐るわよね、墓地の周りはワインですら一週間で腐るのに。
予想通り、二人はとある酒場の前で中を伺いながら躊躇している。
「どうやら、運送関係の作業員が多い店のようですねハニー」
「そうね。私たち……それなりに見えるかしらダーリン」
ギャランは今日も船員風の装いで、肌の露出多め=ギャラン多めでもある。服で覆われていない分、筋肉のついた腕がはっきりわかり、これならあの中に入る事もおかしくないだろうね。
妹ちゃん達が諦めて立ち去るのを確認し、私たちは「お仕事の前に一杯飲みに来たよー」という態で中に入る。うん、注目されているね私。
「よお、その兄ちゃんの後は俺も頼んでいいか?」
「見かけねぇ女だが、すこぶるつきって奴だな。新しく王都に来たのか」
「ありゃ、元金持ちの令嬢かなんかかもな。雰囲気が違うぜ」
いえいえ、現役令嬢だよ私。そんな男たちの声を聴き流しながら、奥まった席に黒い塊だった男発見。あれだよね、変な魔力出しているし。
「ハニー、あれですね」
「ダーリン、カウンターに座りましょう。おじさん、いいワインをお願い」
カウンターのおじさんは黙って頷き、あんまり綺麗じゃないコップにワインを注いでくれた。こんな場末の酒場でも、仕事の関係でか密会でなのか、それなりの身分の人がお忍びで来るらしく、器と比べて中のワインは良い味だったりする。
黒い塊の男の周りには、あまり様子の良くない男たちが数人いて、ヒソヒソと話をしている。何人かがちらりと私の方を見た。
「今日も襲われかねませんね」
「準備万端でしょう。恐らく、それはないと思うけどね」
黒い塊は首を横に振り、何やら言い始めたが、今日は仕事の打ち合わせなのかだべっているだけなのかはっきりしない。とは言え、仲間の顔を覚えたので、ワインを飲み終わるタイミングで私たちは酒場を出る事にした。
背後で椅子から立ち上がる数人の気配がしたけれど「やめぇろぉってんだぁろぉ!!」と活舌の悪い大声が聞こえ、再び座る音がする。今日はここまでかなと私たちは帰路に付いた。
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商会に戻ると、妹ちゃん達から怪しい商人のピックアップの依頼を受けていた。騎士団経由のお願いだから、受けないわけにはいかないんだけどさ、お姉ちゃんに直接お願いしてくれても良くない?
「事業規模が大きい割に、実際の取引先があまりに少ない」商会ね。こんなこともあろうかと、目星は付けている。何なら、この建物の隣の業者だったりするんだなこれが。
取引先は少ない、実際大して売り上げがあるわけでもないのに、人手も馬車もそれなりに用意されている。どこに何を運んでいるのでしょうか……って思われるよね。
残念ながら、ギルドに登録していて税金を納めていれば、馬車が多いからといって勝手に捜査をするわけにもいかない。その為のギルドだし、何か不当な扱いをすれば、こちらが責められることになるからね。
「つまり、非正規の方法で捜査をする必要があるわけですね」
「その通りだよダーリン。妹ちゃんがそこまでするかどうかが問題かな」
妹ちゃんは原理原則に忠実だからね。怪しきは罰せずとか考えているなら、商会に忍び込んで怪しい書類や証拠物件を家探しするなんて多分しないでしょう。
「問題ないですよハニー」
ギャラン曰く、あの黒い塊は隣りの商会に出入りしている形跡があるので、追跡して点と点が繋がり線になれば、恐らく踏み込む事になるでしょうという。
「なんか、妹ちゃんのこと解ってる感が腹立たしいね」
「ははは、愛する人の愛する人を理解することも愛のカタチですよハニー」
「うへぇー とか思ってないよダーリン」
真顔で目を輝かせながらそういうこと言うのやめて欲しいんだよね。だって、すっごく嘘くさいから。
『こんな事もあろうかと調査』の結果をギャランが子爵家にいる妹ちゃんに渡しに行った日、私を仲間はずれにしたギャラン、妹ちゃん、めいちゃん、お父さんの四人は、王都郊外にある怪しい商会が出入りする怪しい村を発見したことを確認し、調査の必要がありそうだと結論付けた。
私? 隣の部屋でお母さんとお茶してました。仲間外れいくない!!
「貴方は危ない事は避けて頂戴ね」
「えー 妹ちゃんが張り切ってるのは良い事だけれど、あの子は何でも自分でやろうとするじゃない? だから、無理していないか心配なだけだよ」
「だからといって、婚約者と夜の下町を徘徊するのはどうかと思うわよ」
チッ、バレてる。でも、妹ちゃん達の方が良くないと思うけどね。子供の夜遊びは非行の元だよお母さん。
奴隷倉庫がある村、私も行ってみたいけどさ、村って住んでいる住民以外出入りしないから村なんだよね。部外者立入禁止。だから、街や王都よりも秘密が守られやすい。もっとも、村ぐるみで人攫いに協力しているとか正気を疑うけどね。そんなに生活に困るような状況じゃないと思うよ今の王国の中ならさ。
あれだね、王都で働きに出た村の若者が「良い儲け話がある」って話を持ってきて、村の有力者が一気に銭ゲバ化して反対する間もなく村の総意にされたんだろうね。村の総意=村長たち有力者の総意だからね。
多分、縛り首になるんだろうなー 村長たち。村人は……全員奴隷落ちかな。でも、拉致された人達はどうなっちゃったんだろう。川を下ってルーン当りから船で運ばれちゃったかもね。そうしたら、もう追いかけられないから、助け出せそうにもないわね。その辺の折り合い、妹ちゃんはどうするんだろう。
お姉ちゃんとしては気になります。
四人の話し合いから、最初に商会に侵入し証拠品を抑える。その後、郊外の村を訪れ、騎士団と協力して攫われた人達を救出するということになったみたい。
妹ちゃんが法を曲げてまでも行動するって、お姉ちゃんは意外でした。相当頭に来ているんだろうね。それは、あのレヴナント? エルダーリッチになっていた知り合いの娼婦の女の子を助けられなかったこととか、色々な感情があるんだろうと思う。
冷静なようで、感情が激しいのが妹ちゃんだからね。そういう意味で、魔力が多いというのは何となくわかる。感情振れ幅が大きい人の方が、魔力を増やしやすいんだろうね。私? 勿論感情はブンブン振れています。まるで銀色に輝く玉ネギのようにね。
ということで、お姉ちゃんは妹ちゃん達が怪しい商会に突入するのを観察する事にしました。お隣だし、魔力走査で何がどこにいるかぐらいは把握できるからね。
表に妹ちゃんの飼っている黒い猫がいます。あれって、生身じゃないよねといつも思っている。まあ、私猫好きだけれど、あれはなんか違うと思っているんだよね。私と猫の化かしあいみたいない感じだね。でも、お母さんが特に気にしていないので、悪いものではないのだろうと思う。
さて、妹ちゃん達が到着したみたいだね。妹ちゃんの魔力は良く知っているので、人混みとか少し離れてい来るくらいなら気が付かない事はありません。小さなころから慣れ親しんだ魔力だからね。小さい頃は、良く手を繋いでお出かけしたものだよ。懐かしいねぇ。
そんな妹ちゃんが、これからあの黒い塊の潜んでいる隣の商会を襲撃するわけなんだけれど、安全に目標が達成できるように私も手伝うつもりなのだよ。
「ハニー。二人は表に来ているのかい」
「その通りよダーリン。今から行動を始めるみたいだから、静かに待機していてちょうだい」
私の元にはギャランもいるわけで……これから色々始まるわけだよ諸君。
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『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/
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