第27話 私、怪しい帝国の『伯爵』に会いに行く
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第27話 私、怪しい帝国の『伯爵』に会いに行く
どうやら、妹ちゃんは先にレヴナント使いの『伯爵』様に会いに行ったらしいです。本人からじゃなくって、お婆ちゃんからの連絡がお父さんにあったから知ったんだけれどね。
犯人とは別の存在だというのが、妹ちゃんの見解だね。それに、伯爵はレヴナント使いでもないようで、別の高位魔術師のようだね。はっきりとお婆ちゃんには言わなかったみたいだけれどね。
「お父さん、私も一度、伯爵様に会ってこようかと思うんだけど。どう思う」
父子爵はちょっと難しい顔をする。要するに、今の時点で事件とは関係のない存在であるが、だからといって好ましい存在でもないからだ。まして、帝国貴族でありそれなりに王都の社交界にも顔を出している存在だ。鈴をつけたいと思うのが普通だろう。
「自分で気になるのであれば会えばいい。今回の事件はともかく、王都で何をするつもりなのか、本人に確認することも必要だろう。お前に委ねる」
夜会で何度か顔を合わせ、挨拶程度を交わしたに過ぎない相手だけれど、話の持って行き方はある。ニース商会を王都で始めるにあたり、先輩であり帝国の商会のオーナーである伯爵と誼を結びたいという話で面会を希望するという方法だね。
これは、そこまでおかしい話ではないと思うよね。
早速、ギャランと話をして、『伯爵』の予定を確認し訪問したい旨を伝えて貰った。
『伯爵』がアンデッドだとすると、『吸血鬼』という可能性も少なくない。でも、使役しているのがレヴナントやグール、下位の吸血鬼ということであれば、王都はもう少し騒然とするだろう。
実体のあるアンデッドであるとすれば、例えば人狼というものも存在する。これは、吸血鬼の亜種と言われる事もあり、狼に化ける能力を持ち平素は人間として暮らしている魔物だ。だが、人狼は人に紛れて生活しており、満月の元で力が活性化し、自我を失い人を襲うと言われるのね。でも、この前の事件は新月・月のない夜の出来事だから、伯爵も襲った存在も人狼ではないと思われるのね。
その他に、ワイトとかリッチと呼ばれる存在もあるんだけれど、これは生前の姿から乖離している、如何にも『死体だよ』という外観なので、社交の場に出られるようなものじゃないね。
死霊術師という線もあるかもしれない。死霊術師の吸血鬼であるとか、死霊術師のリッチというのもあり得るかもしれない。この場合、伯爵だと名乗っている存在が実は操られた存在で、本体の伯爵が別であったりするかもしれない。
襲っているモノが使役された存在であれば、あの強力さも分かるし、魔物を用いて人を襲い攫うということも無理ではないだろう。どこへ連れ去り、その人間をどう扱うのかは全くわからないけれど。
「人身売買組織ってニースはどうなったんだっけダーリン」
「ニース家に恨みを持つ商人や村人が起こした事件だったねハニー。でも、あくまでそれは理由を正当化するための詐術の類で、ただの犯罪者だったと思う。王都での事件も、恐らくは同じだと思うよ」
「なら、『伯爵』がその形で利益を出しているという事」
「いや、それはどうだろうね。先入観を持たずに、相手の話の内容から当たりを付けた方が良いと思うね。少なくとも、伯爵の経済活動に関してはおかしなところは見当たらなかった。真っ当な商会だね。『伯爵』の出自がはっきりしないのは、爵位をある時点で買い取ったという面があるから何とも言えないけれどね」
伯爵位を何らかの形で帝国で手に入れた。それ以前のことはニース商会であっても掴めなかったってことね。そうですか。
「会って話せばわかるかな」
「そうだね。良いワインを手土産にすると良いそうだよ。彼はワイン好きだ」
「なら、手配をして貰えるかしらダーリン」
「もちろん、手配済みさハニー。私も同行するつもりだし、剣も……魔銀製に変えておくよ」
王都に在住する怪しい存在に、警戒しない理由はない。が、多分、害意はないんだろうね。既に、妹ちゃんは『伯爵』と顔合わせをしているみたいだし、私もご挨拶しておこうかな。ちょっとハードな感じでね。
何故って? 妹ちゃんは王都を管理する家の娘だけれど、実際に管理を任されているわけじゃないからね。私は父の補佐官として公式に任命を受けているから。じゃないと、いくら家業でも手伝ったりしないよ、めんどくさい。
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半ば廃墟に思える騎士爵の館。一応、ここに伯爵の商会の王都支店が置かれていることになっている。実際の取引はこの館は関係なく、王都にある幾つかの商会と伯爵の帝国内の商会がやり取りをしているので、この館で商取引が行われる事はないだろうね。
「じゃあ、いっちょ行きますか」
「エスコートさせて頂きますよハニー。お手をどうぞ」
娼婦と客ではなく、子爵令嬢である王都総監補佐官である私の供をするギャラン、雰囲気も騎士然としている。ニヤニヤしない顔もできるんだこの人。別に、ギャップに心動いたりしないけどね。
門は施錠されておらず、門番もいないようなので堂々と中に入る。そして、入口ドアをノックする。何かが動く気配がドアの向こうでして、声がかけられる。
「どちら様でしょうか」
「伯爵様に会いに来ました。ニース商会です」
若い女性の声。アポなし突撃だけど、断るのならドアを破壊してでの中に入るよ。
「お約束がありましたでしょうか」
「ないよ。でも、いるなら合わせた方が良いと思う。王都でこれからも過ごしたいのならね。聞いてみると良いよ」
ドアの向こうの気配が遠ざかり、どうやら誰かにお伺いを立てに行ったようだね。
数分ほど時間が経って、ドアがガチャリと音を立てて内側に開かれた。
「どうぞ、伯爵様はお会いなります」
「そう、ありがとね」
血色の悪い私と同世代の女性、体は病的な細さとでも言えばいいのか。健康感はないね。でも、使用人としての言葉遣いや態度は中々の物です。ちゃんとした貴族の使用人の教育を受けている感じがする。
部屋は中央の階段を上った二階にあるようなんだけど、採光はかなり少なく薄暗い室内にあまり良い感じは受けない。家具や壁飾りが色褪せしないように気を配っているのか、それとも……袖の魔銀製の素敵な玉ねぎヘッドのクラブをぎゅっと握り込む。勿論、振り出したときにすっぽ抜けないように、
革紐を柄の先端に結びつけて、手首に通してあるよ!!
奥まった部屋の前で立ち止まった女性は、その扉をノックする。奥から入室を促すようなくぐもった声が聞こえる。
「こちらでございます。どうぞ」
入った部屋も薄暗い。まあ、祖母の家とかも似た感じだけどね。
「先触れもなく伺いまして、失礼いたしました」
『いいや、美人のサプライズは嬉しいと思うよ。この家の主人だ初めまして……ではないね。アイネ嬢』
「ご無沙汰しておりますわ『伯爵』様。連れを紹介させていただきます」
私は、ギャランが私の婚約者であり、ニース商会の会頭を務める者であると紹介する。また、王都に支店を開く為に滞在中であるとも伝えた。
『ほぉ。ニースの方とは珍しい』
「お見知りおき下さい」
『では、今日は今後の商談につながるご挨拶ということかな』
私は、ニヤリと顔を歪ませ、淑女らしからぬ表情を作る。さて、このおっさんの素性を質さないとね。
「それは、そちらの出方次第でしょうか」
『ふむ、どのようなお話かな?』
この屋敷にほど近い王都の共同墓地周辺で多発している襲撃・拉致事件の発生と、私たちも襲われた人ならざる存在。そして、この家に出入りする使用人含めたレヴナントらしき若い女性たちの存在。端的に言って……
「『伯爵』様が事件に関わりがある、若しくはその首謀者であるかどうか……その嫌疑に伺ったのですわ」
『これは驚いた。あなたもあの危険なものに襲われ、尚且つ無事撃退したというのですね。いやはや、とんだ女傑なのですねあなたは』
すまし顔の伯爵。そのへんちくりんな髭を毟ってやりたいと思いつつ、面倒なので袖から魔銀製のワンドを振り出し、肩をトントンと叩いて見せる。
「これで一撃、いや、背中を一撃、顎をカチ上げてもう一撃。魔力を流し込んで叩きのめしたところ、あっさり遁走しましたよ」
『……』
「これは、魔銀製の武器です。勿論、彼も……」
ギャランはブロードソードの護拳を目の高さに掲げ、ニッコリと笑う。
横目でちらっと確認したんだよ。
「私の家はしがない子爵家だけどね、特別な役割があるんだよ」
『特別な役割……』
「有事の際は、『王都総監』として国王陛下の代理人になり王都を防衛する責任者となる。で、有事の定義はいくつかあるんだけどさ……」
勿論、戦争や暴動のような場合は当然だけれど、疫病の大流行や流民の流入、食糧不足や大火のような場合も有事認定される。そして今一つ。
「高位の魔物の脅威が確認できた場合」
『魔物の存在……』
「これには、王都内に発生した吸血鬼・人狼・リッチなどの知能の高いアンデッド、群れを作る魔物の上位種、ゴブリン・オーク・オーガ・コボルドのキング若しくはそれに準ずる群れの主の確認が含まれます」
『……』
「さて、『伯爵』様。あなたは一体……何なのか、キリキリと説明しないと……」
魔力を込めたワンドが青白く輝きを始める。そして、ギャランの持つ剣身も同様に。ギャランが気が早く、既に剣を鞘から抜いている。
魔銀メイスを伯爵の座る座面に叩きつけ、にじり寄る。
「この玉ネギを頭に叩き込まなきゃ……ならなくなるんだよ」
ギャランは背後から『伯爵』の首に剣を当てていた。
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【本作の元になるお話】
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/
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