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第23話 私、知らない存在がリリアルにさらに増える

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第23話 私、知らない存在がリリアルにさらに増える


 ある日、私がリリアルを訪問すると、焦げ茶色っぽい小山がモソモソと敷地の外を動いていて驚いた!!


 何でも、猪討伐に出かけた時の親玉があの小山のような『魔猪』だったのだそうです。その魔物化した猪を、あの捻くれ癖毛が魔銀のガントレットで魔力マシマシにてぶん殴ったそうです。


 可哀そうだよね。魔物虐待だよね。いやいや、動物虐めが庶民の娯楽のこの時代の常識で考えたまえ。癖毛ボンバイエ!!って感じかな。


 という事で、何故かその魔物の猪は、癖毛の舎弟となり、現在ではリリアルの番犬ならぬ『番魔猪』として薬草畑や敷地の外の畑などを獣や魔物から守っているのだと言います。


 最近、畑が鹿とか猪にあらされて、困っていたらしいリリアルの薬師や使用人コースの子達からすると、とてもありがたいらしい。何しろ、近隣にいたその手の獣は逆らえば殺され、普通は近寄らなくなるので全く被害がなくなったのだそうです。狼の尿を撒くと草食動物が近寄らなくなると言いますが、それに限りなく近い。


 大きさ的には、鼻の長い『象』という動物に近い気がする。古代においては、「戦象」というのもいたみたいだし、リリアルでも是非『戦魔猪』として実戦に投入してもらいたい。


 但し、象は背中に籠を付けて人を乗せて弓で上から攻撃したりするような使い方もあったみたいだけれど、猪は背中に乗れそうもないので、それは無理かもしれないね。あ、大きな馬車ならぬ『魔猪車』もいいかも。私は乗らないけどね。




 因みに、『魔猪』も元は普通の猪だったみたいなんだけど、魔物の肉を食べた影響で変化したらしい。え、本人ならぬ本魔猪に聞いたところ「ゴブリンの肉を食べた後から」変化したらしいね。だから、私たちも魔物の肉とか食べちゃダメだよ!! まあ、ゴブリン食べる事はないけどね。




 ゴブリン討伐の後、心が病んでいたりする子がいないかと、これでも私は結構気にして顔を出したり、話しかけたりしているんだけれど、今のところ大丈夫みたいだね。


 今までの、森で出会ったゴブリンを自衛のために殺すというわけじゃなく、そこで生活? しているゴブリンの村ごと皆殺しにするって結構心に来るんじゃないかと思っていたんだけれどね。意外と大丈夫だったのか、これから実感がわいてくるのかはわからないけれど、今のところは表面的に問題ないっぽいね。


 冒険者って仕事は、人の喜んでやるような仕事じゃなくって避けたがる事が多いと思うからさ。妹ちゃん含めて、無理をしないで欲しい。なんて思っていても、あの子達はきっとするんだろうね。




 そういえば、ゴブリンの両手剣、大人気だったらしく、みんなで思い思いに型稽古してみたらしい。お姉ちゃん仲間外れなのかな、グスン。混ぜて欲しいんだけど、いない時間が多いから難しいよね。


 たまにしか顔出さないと、いつもいるメンバーと疎外感感じるじゃない? まあ、私は外部の協力者に過ぎないから仕方ないけどさ。


 ゴブリンの魔銀製両手剣は、妹ちゃんが使うと魔力量が多いので、魔力の刃がビョーンって伸びるらしい。魔銀の剣の周りに魔力の刃が形成されるんだけれど、それが魔力量が多ければ実体を越えて大きく伸びるんだよねたぶん。


 なら、私も魔力量の多さには定評があるので、勿論伸びるんだろうな。でもさ、剣で伸びるのは剣戟の最中に間合いが変わって相手が躱し難くなるってメリットがあるから良い効果だね。メイスには必要ないから。そこはスパッと諦めるよ私。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 今日も今日とて、私は父子爵のお仕事を手伝っています。実質的に補佐官みたいな存在だねもう。引退したい気持ちが溢れ出ているから、子爵閣下から。ニースニースへ行きたいって煩いんじゃ!! と言いたくなるよ。


 でも、今日のところは真面目なお話。最近気になる事件の報告書を手に何事か考えているね。


「アイネよ」

「なにかなお父さん」

「……リリアルで、レヴナントの調査……受けてくれるだろうか」


 そんなことは、直接妹ちゃんに頼めばいいんじゃない? 多分喜んで引き受けると思うよ私は。


 レヴナントというのは、まあ亡者の類だね。王国ではたまに見られる存在で、自分が死んでいる事に気が付かない死人のことを示す場合が多いね。


 ほら、人間突然死んだりすると、死んだことに気が付けなかったりするわけ。で、魂が天の国に旅立つはずが、肉体に戻って来ちゃったりして、それで死体が生前の記憶を持ったまま生きているかのように振舞ったりするのだよ。


 でも、やっぱり死んだ存在だから、徐々に魂が希薄になったり、悪霊に体を乗っ取られて元の人から全然違う存在に変わっていっちゃうのね。最初は生前と変わらない生活をおくれているんだけれど、最後は生前の面影がなくなるみたい。


「事件が増えているんだっけ」

「ああ。まだ死人は出ていないが、怪我をするなどの被害者は増えているな」


 それは騎士団案件なんじゃないのでしょうか。


「騎士団も勿論捜査しているが、ほら、暴力犯罪なんかであれば良いのだが、話を聞いたり、探してるするのは……冒険者の方が得意だろう」


 強面の騎士達に聞かれれば、怖いもんね。


 ここで私は考えました。ゴブリンと猪の砦の討伐の話は残念ながら、舞台化の話は没になりました。理由は、セット作りが大変なのと、キャスティングが孤児と村人とゴブリンばかりで華やかさがかけるからだそうです。


 でもさ、王都の闇に潜む亡者を追う『妖精騎士』って、結構絵になると思うんだよね……これは話を進めるしかありません。


「レヴナントばかりではなく、使役する吸血鬼も存在する可能性があると噂する者もいるな」

「吸血鬼って実在するの?」


 血を吸う……蛭とか蚊みたいなもんだけど、でも、お話では美男美女であったりするよね。身なりも良いし、地位や財産もあるのだろうか。がめつい人のことを悪し様にいう時に「吸血鬼」とか言う事もあるけどね。


 でもさ、お金を借りる時は拝み倒すくせに、いざ返す段になると「吸血鬼」とか罵るのはおかしいよね。そもそも、自分の「血」を貸したんだから、吸われる血のかなりの部分はお前の血じゃねぇだろって思わないのかな? そんな事を考えていると、「……さあな」と父は答える。


「話は宮中伯様か騎士団経由で冒険者として依頼したらいいよね。妹ちゃん濃赤等級だから、冒険者ギルド経由で指名依頼できるんじゃないかな」

「……そうか、そうなのか。ならば、応相談だ」


 で、私と父子爵がなんでこんな話をしているのかというと、この噂のある場所に問題がある。


 事件の頻発している場所は『王都共同墓地』のある下町地区の外れ周辺なんだよね。昼間はともかく、夜になれば人通りもまばらだし基本、近づく人は……とあるお仕事とそのお客になる男性だけなのだよ。


 勿論、警邏する夜警のおじさんたちもいるんだけれど、ほとんどはそういう人たちしか周囲にはいない。


 でも、問題は別のところにある。




 王都の共同墓地は、元々石材の切り出しを行っていた鉱山の跡を用いていたのだよ。この石材は、王都の城壁や建物や敷石なんかに使われている。あんまり切り出すと地面が陥没するということで、今ではその地下の空間は『地下墳墓(Catacombes)』になっている。


 でも、元々は地面に死体を土葬した後、骨だけになったものを掘り起こしてその坑道に安置するわけだよ。でもさ、あんまりにも死体の埋葬が多くて、土に還るのも限界。おまけに、地下水・井戸水も汚染されているし、周囲は王都の少なからずな場所を占めているにも関わらず異臭も漂う環境なわけで、王都を預かる子爵家としては永年の課題だったんだよね。


 幸い、王都の代表者と王都の大家さんである王家の許可も得て、王都の西にある丘の一帯を新たな共同墓地として開発する事になり、既に、新墓地は開業間近なのだよ。


 でもさ、今の下町にある墓地に関しては、地下の納骨堂にある骨はそのまま残すとしても、地面に埋めてある比較的新しい骨は回収して、納骨堂に納めて地上部分は再開発したいのだよ。


 今の下町でも『旧騎士街』であった、空き家群とその周辺のスラムを丸ごと綺麗にしたいのね。一部は王都南門外の新街区に貧民宿を設けて、そこにスラムの住民を移動させ、ついでに職も与えようという事なのだよ。


 王都外郭の拡張と新街区の建設、南門近くの新騎士団本部建設としばらく王都の周りでは土木工事建設工事が続くからね。そこで雇う人、働く人間に食事を振舞う場所なんかも必要じゃない?


 みんな、貧民の生活って知らないでしょう? いや、私も実際体験した事はないんだけどさ、なんで食べ物売りが多いかって話なんだけど、煮炊きする場所も燃料代も賄えないから、その場で即食べられる物が必要なんだって。つまり、自分の家で料理ができるって言うのは、本当の貧民じゃないんだって。驚くよね。


 


 ということで、事件が続くと土木系のギルドだって人を集められない事になるし、集めるのにより高い賃金で募集しなければならなくなる。


 それに、さっさと墓を掘り返して移転させないと、再開発自体が順送りになって計画が進まなくなる。この共同墓地周辺の再開発の完了が、父子爵の最後の仕事であり、私たちの子爵家が王都の管理人さんを務める最後の仕事になるはずなんだよね。


 私の代に何をするのか? それは先々のお楽しみ☆




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