第21話 妹ちゃん、薬草園を拡大する
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第21話 妹ちゃん、薬草園を拡大する
妹ちゃんも、王家を守る戦車の両輪がリリアルとニース商会だとようやく理解してくれたみたいだね。戦車というのはチャリオットのことだよ諸君。二輪馬車だからねあれは。ベン・ハーとか見てくれたまえ!!
最近王宮に呼ばれた妹ちゃんは、正式にリリアル学院の院長の職に補任されたようです。成人をもってみたいだけどね。この辺の役職というのは相続財産なのだよ。だから、他の人に譲る場合、後任は対価を支払う必要がある。それが財産という意味になる。
言い換えると、これからリリアルの存在が大きくなればなるほど、『院長』という職を譲る対価が上がっていくわけだね。そうやって、仕事の質を担保しようとするわけだ。これ、別に収賄ってわけじゃないからね。相応しくない人に譲れば、それはそれで非難を受けるから、あくまでもお金がではありません。売官とかじゃないから、勘違いしないでよね!!
その際、宮中伯から「お前の才が王妃様に評価されているという事なのだ」なんて言われたらしい。まあ、見る目あるねとだけは言っておこうか。妹ちゃんの素晴らしさは、こんな所で留まるレベルじゃないけどね。
その時に、リリアルで育てた孤児たちを騎士団の下働きとか従騎士で採用したいという話も出たらしい。なんでも、南門の更に外側に王都を防衛する騎士団の城塞を新規に築いて増員するらしい。
いやいや、自分たちで使う人間は自分たちで選抜して育てろよ騎士団と宮中伯。妹ちゃんの仕事を増やすんじゃありません。それが回り回って私のところに来るに決まってるじゃない? 馬鹿なの、役立たずなの。いい事言った風にまとめてるんじゃない!!
でも、その後妹ちゃんはこういいました。
「では、精々騎士団に納品するポーションの価格を吊り上げましょう」
だよね。当然だね。騎士団が自分で勝手に強化策進めればいいだけで、リリアルは関係ないんだよ。気安く仕事を振るなよな。お父さんの上司とはいえふざけた話です。早く伯爵に陞爵して「それはお前の仕事だろ、寝言は寝て言え」と言いたい。
実家が侯爵家だって、うちだって婿の実家はニース辺境伯だからね。対等以上だし、妹ちゃんだっているんだから、こっちが断然優位だから。って、まあ怒ってもしょうがない。とりあえず、宮中伯とは距離を取るようにしないと、草臥れ儲けになるから要注意だね。
その後、王妃様から直々に「リリアルの騎士団駐屯地は小隊から中隊規模に拡大する」と言われたらしいです。さらに、礼拝堂建設とか、敷地の外にも薬草園を拡大する許可も貰ったとか。
リリアルのポーションで儲けよう作戦が順調に進んでいるみたいだね。
今後の学院生拡大に向け、様々な施設を拡張する予定だとのこと。騎士団の増員も、リリアルの存在が認知されるにつれ、危険性も高まるという事に対する警戒感の表れだね。
王都の防衛計画の一部も子爵家の仕事のうちなんだけど、騎士団主導で民間との連携とか事前の物資の集積なんかをこちらで考えているんだよね。必要であれば、リリアル周辺にも集積所を設ける事も検討しようそうしよう。
実際は、それよりさらに王都から離れた騎士学校の敷地内の方が現実的かも知れないね。
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そんな話を聞いた後、リリアルを訪問すると、凄い勢いで薬草園が拡大されていたよ。流石妹ちゃん、仕事が早いね。
リリアルの運営費を稼ぐにはポーション頼みになっているみたい。それと、意外と歩人が活躍しているんだってさ。だてに足が毛むくじゃらなわけではないらしい。足の毛深さと薬草を育てるのが上手になる相関関係が、私にはわからないけどね。でも、得意なことがあるのは良い事だよ。
そして、さらに興味深い事に、リリアル生を冒険者登録させることにしたんだってさ。薬草採取に行けば魔物と出会うこともあるしね。実績と信用作りなのかもしれないね。
でもさ、特例? 十二歳からってのを満年齢じゃなくって数えを認めさせるって事は、十歳から冒険者出来るって事だよね。うわーい、魔術師組の一期生ほとんど冒険者に登録できるじゃないのさ。
まあでも、物騒な世の中だから、早めに冒険者として経験を積ませて、自衛できるようにした方が良いかもしれないね。魔術師候補とか、人攫いからすれば美味しい案件だもんね。リリアル襲われかねないから、自衛の為に手を尽くすのはありだよね。
ちょっと間をあけてリリアルに行くと、いろんなことが変わっている。例えば、冒険者用の道具が並んでいたり、冒険者としての鍛錬が為されていたりだね。
今日も使用人コースの子達に帳簿の付け方を教えに来たんだけれど、気になる事が沢山あって困る。あー色々聞きたいぃー!!
「ねぇー ここどうするんだっけー」
「姉さん、同じことを何度も聞かないでちょうだい」
「だって、帳簿とか契約書とか急に色々覚えなきゃならなくって大変なんだよ」
「仕方ないでしょう。商会の仕事が分らなければ役に立たないじゃない。社交がいくら上手でも契約の話に関してまるでできないのではお話にならないでしょう」
妹ちゃん、お姉ちゃんちゃんと帳簿解ってるから。大丈夫だから。でもさ、一応、確認しながらじゃないと、仕訳明細とか違うじゃない? まあ、一律のルールを適用すれば、どこにどう仕訳けようとかまわないんだけどね。
「はぁー こんなことなら、貴方が勉強しているときに、一緒に習えばよかったわ」
「……領地経営にも契約書や会計知識は必要だってお父様もおっしゃって、習うように何度も促していたじゃない」
「ほら、貴族の家の経営なんてさ、執事や家令や代官がいるじゃん。よきにはからえできると思ってたんだよ」
まあ、ぶっちゃけ代官の仕事とか、私やらなくても問題ないんだけどね。家宰なり執事に任せて、他の仕事しなきゃだし。やればできる子だから私。でも、必要ないからやらないだけ。他の人の仕事を取るのは良くないと思うからね。
妹ちゃんには社交大丈夫って反撃したけど、礼儀作法だけできれば十分とか反論するし。令嬢の社交は必要ないからって、行儀作法だけではあきまへんでぇ!! と言いたいよ私。
「お婆様には準備が整い次第、講師のお一人として学院に住んでいただく事になりそうなのよ。今から……いろいろと楽しみだわ」
「……そうなんだー……」
――― 何それ、聞いてないんですけど!!
なんか、私がリリアルに来づらいようにするためなのだろうかとちょっと気になる。いや、とても気になる。
「おばあ様は教えるの大好きだから、きっとお互いにいいことよね」
「そう思うわ。姉さんと毎週会えるのも楽しみみたいね」
「ま、ほら、それは、商会の仕事が軌道に乗るまでだよねー」
「仕事を覚えるまでの間違いでしょう。ふふ、大変ね」
これは絶対私が足を運びにくくなるようにって事だね妹ちゃん。だがしかし、私の妹愛があれば、苦手なお婆様とだって協調路線で頑張れるんだよ。お姉ちゃんの底力みせてあげましょう!!
でも、ちょっときづらくなるかもねぇー
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そんな感じで、リリアル生も冒険者になる魔術師組に、薬師として勉強する魔力のない薬師組、成人間近で使用人としての就職を目指す使用人組と分かれて活動するようになり、妹ちゃんとめいちゃんは冒険者組中心に活動するようになってきている。
実際、冒険者の装備で身を固め、ギルドで登録してリリアルと王都に近い採取場所で薬草採取や、時には狼やゴブリンの討伐をついでに行っているのだそうです。半年一年前は、妹ちゃんが一人でやってたことなんだけど、今では教え子と一緒に森に入っている。
そんな妹ちゃんの成長を感じつつ、十歳前後の子供に魔物狩りをさせていいのかなと思わないでもない。でも、七歳過ぎたら職人や猟師の子なんかは大人の手伝いをする傍ら、そういった経験もないわけではないので、当たり前になれば、これからリリアルの魔術師コースの定番になるのだろう。
小さな冒険者たちがワイワイと戻ってくる姿は、ちょっと可愛らしくも思うが、行っている事はもっと年上の駆け出し冒険者と同じ命の危険の伴うことだし、怪我や万が一の時は子供たちも妹ちゃん達も大いに動揺するだろう事を考えると、やっぱりお婆様のような鋼の精神を持った年配の人が常駐している方がいい気もする。
まあ、そのうち主のようになるんだろうなぁ……
妹ちゃんたちは、近隣で問題になっている猪討伐に向かうようだね。私も行きたいのはやまやまなんだけれど、他の仕事もあるから難しいね。
猪は魔物ではないけれど、体も大きいしかなり気性も荒いから、危険な動物だよね。狼よりも『固い』し、頭も大きく力も強いから、なんかいい手を考えないと、十歳の子供たちを連れて討伐なんて危険だよね。
と思っていたんだけれど、ガンガン猪狩りを進めているみたい。冬の孤児院の食糧事情を改善しようって話になって、猪の脂……臭いんだけれど、でもベーコンとかソーセージとか干し肉とかあれば、冬の食糧が不足する時期にお腹を空かさずに済む度合いが改善されるだろうって考えたみたい。
リリアルの子達も、猪の肉を食べて体を大きくしないといけないからね。魔術師も体の中で作られる魔力を増やすには、やっぱり食事内容とか大切だし、体が大きい方がより魔力量も増えるからね。
そういう意味で、この時期に猪狩りの依頼を受けて、冒険者の実績を積みながら、肉の確保をするのは良い事だね。
でもさ、最近、『魔狼』ならぬ『魔猪』というのも王都の近郊で見かけられたという話もあるし。妹ちゃんとめいちゃんがいればどうとでもなるだろうけれど、少々お姉ちゃんは心配だったりする。
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【本作の元になるお話】
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/
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