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第20話 妹ちゃん、余計なものを連れてくる

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第20話 妹ちゃん、余計なものを連れてくる


 最近、王都のニース商会も動き始めている。とは言え、大したことはまだないんだけどね。代理店みたいなお仕事が多いので、顔つなぎの業務が増えている。これが、少しずつまともな取引になることを願っているのだよ。


 ということで、リリアルに行く暇もなく、子爵家とニース商会とニース辺境伯の王都邸をグルグルと回り、その合間に茶会だ夜会だに顔を出す毎日。商会の仕事は、ニースや法国との遣り取りはギャラン任せだし、私は王都での御用聞き紛いの顔つなぎが今の主なお仕事です。まだ、ギャランの顔が認知されていないのと、子爵家のネームバリュは大きいからね。私がいたほうが話が進むわけです。





 今日は嬉しい事に、妹ちゃんが商会に遊びに来てくれました。まだまだ散らかっている店だけれど、将来的にはドンとした構えの店になる予定☆


 なのに、なんか余計なものがくっついているんだけど……何で?


「へー で、あいつをここに連れてきたってわけ」

「……しょうがないでしょう。お隣さんで姉さんの幼馴染なんだから」


 そうです。確か、隣の男爵家の長男は魔導騎士になる為に訓練中だったんじゃなかったかと思う。年は妹ちゃんと同じ年だから、今年あたりから出仕するのかもね。今は幼年学校生だったかな。


 妹ちゃん、私だけじゃなくって妹ちゃんも幼馴染だよね? なんで婚約者のいる私のところに連れてくるのかな。


 妹ちゃんはどうやら、私にこの男爵息子を押し付けたいらしく、何故かせっせと話をさせようとする。


「……毒を以て毒を制すよ」


 何か聞き捨てならない声が聞こえた気がする。だがしかし、そうはいかない。


「でさ、今日は二人で何してたの。デートか、デートだな!」


 ほら、とっても嫌そうな顔してるね妹ちゃん。昔から、この息子とは気が合わないんだよね。そもそも、妹ちゃんと騎士の家柄の男爵家で魔剣士の息子とは趣味趣向が合わない。妹ちゃんは読書や勉強が好きだし、子供の頃から習い事も多かったからね。


 私も習い事はしていたけれど、家にいるのは私の方が多かったから、この男爵息子とはよく遊んであげた気がする。妹ちゃんのついでにね。そのうち、妹ちゃんのいない時を見計らって遊びに来るようになった気がしたので、「父の仕事の手伝いをするから」ということで、頻繁に遊びに来ることはご遠慮いただいたのだよ。


 妹ちゃんの遊び相手のついでなら付き合うけれど、私、次期子爵として仕事覚えること沢山あるし、隣の男爵の息子は跡継ぎだから絶対的に何もないわけだよ。妹ちゃんも同じだね。商売人でもなければ文官でもない男爵家と何かあるわけないから。


 つまり、この男爵息子は、私たちに何を期待しているのかという話になるわけで、私たち姉妹には付き合う理由がないのだよ。本当に幼い頃ならともかく、七つ過ぎたら色々準備が始まるんであってだね、男女七歳にして席を同じくしてはならないのだよ。


 孤児院でも確か七歳以降は仕事もさせるし、男女は分けられたと思う。


「……呆れるわね。婚約者様と始終一緒にいる姉さんに言われたくないわ。今日は、お婆様にセバスのご挨拶と所作の指導のお願い、それに冒険者ギルドへの登録、薬師ギルドへのあいさつ、武具屋に装備の相談をして……彼に会ってここに来たのよ」


 いや、そんなにムキにならないでよね。


「お婆様のところで行儀見習いか……大変だね!」


 脚ギャランの顔を見ると、なんかりりしくなってるんだけど……あれか、ゾーンに入っているのかな。まあ、そうでもしないと、あのつらい現実から離れられないもんね……分かるよその気持ち。


 ギャランがNew歩人を見て感心している。いや、つい最近まで、駄目な大人の典型だったよ。あと、中身はおっさんだからね。見た目詐欺だから。


 そして、男爵息子に話しかける。ほれ、婚約者らしいところ見せたまえ。


「ああ、すまない。君もわざわざ挨拶に来てくれて礼を言う。本来は、こちらから男爵家に挨拶に伺うのが筋なのだが」

「いえ、子爵家が男爵家に挨拶に来られるのは畏れ多いことです。それに、私は、幼馴染の姉の婚約を……祝いたかっただけなのです」


 なんで辺境伯の息子が男爵家に挨拶行く必要あるわけ? まあ、ギャラン成りの牽制のつもりかね。男爵息子はなんか歯切れ悪いし、ホント何なのかな。


「そうなんだー ありがとねー」


 と、一応謝意を示しておこう。今後関わらないとは思うけれど、関係を悪くする必要はないからね。何を考えているかわからない奴だから、刺激しないようにしよう。


「いま僕たちは、来年の結婚に向け準備中なんだよ。君にもぜひ式には出席してもらいたい。案内状を出すよ」


 え、何言ってるの? 只のお隣さんのそれも御当主じゃなくって子供を呼ぶってどういうことなの。ほら、固まっちゃってるじゃない。ああ、これは俺の婚約者につき纏うなって牽制なんだろうね。


 その後、話題は魔導騎士の話になり、私は全然聞いていないんだけど、妹ちゃんは「興味深いわね」といった印象で話を熱心に聞いていた。


「あの鎧はすごいよね。騎士の衝突力と、歩兵の柔軟性を同時に両立しているじゃない?」

「確かに。戦場で味方に絶対的勝利の確信を、敵には敗北の烙印を刻み付ける存在だね」


 私とギャランは適当にヨイショしておいた。だって、魔導騎士って滅茶苦茶金食い虫だし、専用の整備ラボがないとまともに活動できない。つまりだね、拠点防御は可能だけれど、攻撃用には持ち運べない装備なんだよね。


 だから、今の国王陛下の代になって配備が拡大したんだよ。先々代の戦争大好き国王の頃は見向きもされなかった。法国や帝国で何度も戦争していたからね。大砲とか、近衛連隊の常設なんかは効果あったみたいだね。


 とにかく、妹ちゃんが面白がって男爵息子を連れて来たんだけれど、適当に婚約者と仲良しアピールをしておいたよ。まあ、ギャランと婚約解消しても、男爵息子とは何もないけどね。両方跡取りなんだから、最初から成立していないじゃんね。私が嫁に行くとでも思っているのかね君たちは。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 妹ちゃんの訪問は嬉しいサプライズだったけど、おまけの奴らはいらないサプライズだったね。まあ、歩人はまだしもね。


「ハニー、あの少年とは仲良しだったのかな」

「いいえダーリン、ただのお隣さんで、昔は妹ちゃんの相手のついでにちょっと遊んであげたことがあっただけね」

「ふーん、でもあの少年が君を見る目は、とても想いの籠ったものであったとおもうのだけど」


 えー それがどうしたのかな? 私は二十三歳を相手にする事は考えるけれど、十三歳の男爵嫡男を相手にする事はないよ。そもそも、マッチングが適応しないじゃない。


「思ってもいない事は言わない方が身のためだわダーリン」

「はっは、お見通しかいハニー」


 この人があのガキンチョに嫉妬を感じる事はないよね。まあ、されたらされたで「めんどくさ」と私は思うだけだけれどね。


「あの少年ももう少し年上に生まれていれば……」

「それはないよね。年齢だけじゃなく、様々な要素で私とは合わない」

「手厳しい」

「事実でしょう。ダーリンくらいよ、私の希望に叶う男は」

「条件か。本当にそれだけで決めたんだね」

「それはお互い様でしょう?」


 え、違うの。それ以外何かあるのかな?


「これでも、君の婚約者になれた幸運を神に感謝しているんだよ私は」

「それはなかなか信心深いわね。これからもその幸運が続くことを、もっとお祈りすると良いと思うわ」


 その程度の軽い関係であるべきだと私は思う。子爵家を継ぐのも、商会を回していくのも、妹ちゃんを援けるのも中々大変そうだからね。だから、あんまりウエットな感情を向けないでもらいたい。


「商会がきちんと立ち上がるまで、婚約延長になるんじゃないのかな?」

「それは困るね。いつまでも、館に私一人で暮らす事になるのは遠慮したい。出来る限り早く、結婚して欲しいからね。それじゃあ、もう少しお仕事頑張りましょうか」

「ええ。私は子爵家に戻らなければならないので、後はお願いするわダーリン」

「任せてほしいねハニー」


 親しい婚約者の間にも礼儀ありだよ諸君。これからお家に帰って、子爵家の仕事とか、恐らく持ち上がってくるリリアル関係のお仕事も私の担当だから片付けないといけないのだよ。


 それに、お邪魔虫が現れて微妙な空気になったから、ここは一時戦略的撤退をするべきだよね。クールダウンって大事だと思うのだよ。




 私は早々に帰宅し、今日あった事を父と母に伝える。母は「幼馴染だからねぇ」と大目に見ましょう的な反応だったけど、父としてはギャランの反応含め問題ありと判断したようだね。


「アイネ、辺境伯邸の仕上がり具合を勘案して、早々に婚約のお披露目を行おうと思う」

「そうだね。式にはお隣さんは呼べないけれど、婚約者の紹介くらいには今までのお付き合いを考えて出席をお願いすることは出来るかもね」

「まあ、それは良い案ね。是非進めましょう」


 隣の夫人と母は令嬢時代から割と仲が良いので、隣の息子のこともかなり可愛がっていた。それだから、小さなころは家族ぐるみの付き合いがあったのだと思う。流石に、年頃になってからは、婚約もしていない男女が親しくするのは問題だと距離を置いていたが、母同士は仲良い友人であるし、私も機会があればお茶会には参加していた。


 その辺で、私の知らないところで、私の話がお隣さんででていたのかもね。まあ、思春期の少年だからしょうがないと言えばしょうがないんだろうけれど、社会的距離は保ってもらいたいね。




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