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第02話 私の妹ちゃんは錬金術師

誤字訂正・ブクマ・評価・感想をありがとうございます!

 心から妹ちゃんを愛する姉であるアイネです。


 最近、妹ちゃんが王都の外に一人で出かけているのを知り、心配でならないのだけど、みんなどう思う?


 王都の城壁の外は、獣や魔物もいるし、悪い大人も沢山いるんだよ。そこの君、私が悪い大人と言うのは誤解だからね!!


 妹ちゃんが魔力の鍛錬をしていることを知り、意外と様になっているのに気が付いたんだよね。何度か『気配隠蔽』を掛けた後、危うく見失いかけたけれど、妹愛で何とかなったんだよ。


 血は水より濃いからね!! 愛の波動で見つかるわけだよ姉の目には。


 王都の外で薬草? ポーションの材料を探して森に一人で入っていったりするのはとても心配です。





 妹ちゃんも私も、直系の女性である私の祖母もとても魔力が多い。これは先祖から女性だけに伝わる特徴みたい。祖母の息子の父は魔力大してないし、母は姻族だから魔力少なめだし。先祖様の影響だね。


 子爵家とは言うものの、我が家は五百年以上遡れる歴とした王家の重代の臣下であり、王家の信頼に応えてきた由緒正しい家柄なのだよ。


 ご先祖様は王に仕える一人の騎士で、騎士の娘を妻として王都を守る戦いの中で戦死した。これは、良くある話なんだけれど、妻も王都を襲う魔物の群れから王都民を守るために命を落として一人息子が残された。これが我が家の始まりとなる初代様だね。


 王は夫婦揃って王都を守って亡くなった二人の忘れ形見を慈しみ、また、宮廷魔術師であった二人の幼馴染である男を後見として孤児を王の『猶子』としてくれた。


 血縁もないし、王位継承なんかとも無縁だから、正式に王家の人間というわけじゃないんだけれど、『仮親』として少年の面倒を見るという王としての感謝の気持ちを表したものだったみたい。


 結構凄い事だよね!


 それで、成人後は男爵に叙爵する事になっていて、死なずに済むようにまた、両親の護った王都を自身でも護れるようにということで、王都復興の責任者となるように取り計らわれて子供の頃から英才教育を受けたのだよ。


 それに、当時、ランドル辺境伯と同盟関係にあったことから、ランドル辺境伯の庶子の娘を王の『猶子』である男爵と娶せて関係を強化する事になったのね。この姫様は庶子乍ら、とても大きな魔力を持っていたので、王家としても積極的に幼い頃から王宮で魔術師たちに指導をさせ、夫婦ともに王都の藩屏となるように育てたというわけ。


 後見人であった宮廷魔術師と姫はとても仲良しで、二人で魔術の研究をするくらい関係は良好であったんだそうです。義理の父と娘みたいな関係だったのかな? 庶子だから、父親との関係が薄かっただろうと考えると、仲良しだったのも何となくうなずける。まあ推測だけど。





 あ、それと、私が妹ちゃん呼びするのに不満を持つそこの君、いいかね、この世で『妹ちゃん』と呼べるのは姉である私だけなのだよ。これが、姉である私の特権だということは、神様の前でも断言できます。


 まあ、呼ぶのは勝手だけど、「姉さん」と呼ばれるのも私だけの特権だ!!まあ、昔は「お姉さま」とか「姉さま」と呼ばれていたのが、いつの間にやらさん付けに……私的には「おねえちゃま」でも全然いいんだけどね。


 あ、でも、いい年したおばさまが「おねえちゃま」と呼ぶのはどうかと思うけれど、お婆ちゃんがそういうのは、一周回ってとても可愛らしい。私も五十年後には妹ちゃんに「おねえちゃま」と呼ばれることを夢見て老後の希望を星につなごう。うん。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 妹ちゃんが一人で王都の外の森に行くのが心配な私は、父の書類にこっそり、私が冒険者登録をして妹ちゃんの護衛として同行する旨の申請書類を書いて混ぜておいたんだけど、『不許可』のハンコが押されて、朝食のテーブルに置かれていたのは納得がいかない。


 残念ながら、朝食は両親と私の三人が仕事の打ち合わせがてら食べるので、仕事に関わりのない妹ちゃんとは別なのだよ。


「お父さん、この書類のことだけれど……」

「妹にかこつけて、外で遊ぼうとしているのは看過できないなアイネ」


 ちっ、バレたか。いや、仕事で一日屋敷にいる必要ないんだもの。父が王宮に出仕している時間は私暇だし。茶会とか夜会とか、毎日あるわけでもないしね。


 そもそも、未婚女子の参加できる会なんてのは婿探し嫁探しが目的の社交だから情報収集にもならない。人の噂や悪口を遠回しに言いつつ、マウント取る会に参加している時間はないのだよ諸君。


「お父さんは、妹ちゃんが心配じゃないの?」

「……あの子は十分強いぞ。それに、他家に嫁ぐ娘には外の風の冷たさも今から学んでもおかしくはない。今可愛がるよりも、多少は厳しい事も経験する方があの子の将来の為だろう」


 うん、この人良いこと言うわー 流石我が父。えーと、妹ちゃんが強い?


「ああ、お前よりは弱いが、それは三歳の年齢差を考慮した上での話だ。身体強化も十分なレベルだと聞いているぞ」


 妹ちゃんは、私と違って社交なんかの勉強はしていないんだけど、商家に嫁ぐとすると、自分で馬車や馬に乗れないといけないだろうし、自衛のための剣術や護身術に応急手当、野伏(レンジャー)の真似事迄しているという。信じられない。


「なんて楽しそうなことを妹ちゃんにだけ……」

「アイネ……本音が出ているぞ」


 そ、そうかな。いや、危険に感じる時ほど心躍るじゃないですか皆さん。あー 妹ちゃんと野営したり、馬で遠乗りしてみたい。馬乗れないけど。


「兎に角、お前は心配する必要はない。あの子はあの子の考えで今を生きているのだ。家を出る者にはそれが必要だからな」


 そんなに家を出る出る言わないで良いじゃないね。ホント、私も妹ちゃんについて家を出て行こうかなー と一瞬真面目に考えたりする。できないけど。





 そんな妹ちゃんなのだが、錬金術の腕前が上がっているのがうれしいのか、ポーションが順調に作れて回りから褒められてうれしいのかわからないけど、最近少し表情が柔らかくなっている。私に気が付いていない時。


 それで、気になっているのは、妹ちゃんがいつも草刈りの後みたいな匂いを漂わせている事だね。草臭いって言えばいいのかもしれないけれど、率直に言えば多分ますます避けられるようになるので言えないのだよ。


 母にも言ってもらえないし、年頃の娘に嫌われたくない父にも言えない。ほら、妹ちゃんって繊細だから、みんな気を使うんだよね。それを、「私は避けられている」とか「家を出る次女だから」みたいに思い込んで、家族の関係が微妙なんだよね。


 お婆ちゃんにも色々言われて「大人にならなきゃ」って頑張り過ぎてめんどくさい子になっている気もするんだけど、これは両親の作戦ミスだと思うんだ私的に。ああ、あと数年でお嫁に行っちゃう妹ちゃんの事を考えると、いま姉妹仲良くしないでいつするのだよと思うんだよね。


 石鹸を贈るというのも「お前臭いぞ」と言わんばかりでどうかと思うし。悩むところなのだけど……ピコン! 私良いこと思いついたよ☆




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 私の家の庭には、とても良い香りのするハーブの木が植わっている。レモングラスとか言う柑橘系の臭いのする木だよ。


 今日も草の臭い全開の妹ちゃんが夕食の時に食堂に現れたのだよ。


 当り障りのない話を家族で(主に妹ちゃんは聞き役)話している中で、思い切って私は妹ちゃんに相談する態で話しかける事にした。


「ねえ、庭に植えてあるレモンの香りのするハーブがあるじゃない?」


 錬金術には香水やトワレを蒸留器で作る技術もあったと思う。ポーションもその派生形だしね。東の国の女王様が、若返りの薬だと言ってその手の物を作ったのが始まりだとか聞いた記憶がある。若作りじゃないよ!!


「レモンバームね。それが……どうかしたのかしら」

「あの葉っぱからレモンの香りのするトワレとか作れないかな?」

「……実費は頂くけど、それで良ければ作るわ」

「ありがとね!」


 その後、庭でせっせと採取する妹ちゃんを眺めながら愛でる充実した時間を過ごす事にした。うん、見つけられたときの笑顔がとても可愛い。まもりたいこの笑顔☆ いや、これは終生私が護るべき存在だね。


 旦那は勿論、子供よりも多分優先。


 だがしかし、隔世遺伝でお婆様そっくりの娘が生まれた場合、私の心が妹ちゃんと娘の間でグラングラン揺れる自信がある。





「姉さん、出来たわよ。そうね、銀貨一枚で良いわ」

「そう? またお願いしても良いかな」

「構わないわよ。レモンバームはすぐに育つから、庭の整理の為にもこまめに採取した方が良いと思うから。ついでに作るのも吝かではないから」

「ありがとう!! ん、いい香りだね」


 レモンバームの香りは勿論、香水として作られたアルコール溶液の入ったガラス瓶の周りからしてくるんだけどさ、作っていた妹ちゃんにもしっかりレモンの香りが染みついているのだよ。


 これで、私の残念な草臭い妹ちゃんの状況終了だよ☆



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本作の元になっている長編。
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

『妖精騎士の物語 』第四部の裏でアイネがプロデュースする修道女達の成り上がり。
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