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第18話 妹ちゃん、ブルグントに行く

誤字訂正・ブクマ・評価・感想をありがとうございます!

第18話 妹ちゃん、ブルグントに行く


 リリアル学院の話はトントンと進み、孤児出身で最初の使用人コースの三人のうち二人はニース商会の使用人になる事が決まっていますパチパチパチ。


 これで、「最近頑張ってるよ」的報告をするという口実で、リリアルに滞在することができるようになります。いやぁ、卒院生のその後がどうなっているのか、責任者と指摘になるところだからね。今後も良い関係を築いていく為に、連絡は密にしないとならないわけです。


 私と商会頭になるところの辺境伯令息三男坊の婚約者『ギャラン』も、時間をとってお仕事を教えています。ええ、ギャランも貴族の男なので、こんなんでもちょっかい掛ければコロッと行きかねないのが孤児のお嬢さん方なので、耐性を付ける為と躾の為です。


 妹ちゃんは義兄という事で遠慮しているみたいだけれど、万が一オイタが過ぎれば、多分そんなことは関係ないとばかりに去勢するくらいの勢いです。『去勢の勢い』って凄い勢いを感じるね!


 種なしカボチャの婿殿は洋の東西を問わず肩身が狭いものなのだよ。姑に虐められるのだよ。うちの母はそうでもないけれど、祖母は直系なので厳しいと思う。多分、次兄と差し替えだね。ギャラン兄もしくは兄ギャラン。


 そんなことで行儀見習をさせながら、婿の行儀見習も余念がありませんな。




 なんて忙しくもほのぼのな毎日を過ごしていた私の妹ちゃんライフが風雲急を告げる。


 リリアルに冒険者ギルドから指名依頼があったのだそうだよ。ほら、例のお馴染みの冒険者パーティーと妹ちゃんとめいちゃんに、『ヌーベの山賊退治』の依頼が、ブルグント領から出ているんだってさ。


 例のパーティーの女の子が騎士学校を卒業するので、そのタイミングで依頼が出ているんだ。ギルドとブルグント公爵の見立てだと、ヌーベ公爵家が傭兵を雇って山賊紛いの略奪行為を隣接する周囲の領地で行っているらしい。


 ヌーベ公爵って、今の王家に反抗的な古い家だよね。王国の秩序とか序列の埒外にいる存在。何かきっかけがあれば、討伐して直轄領にでも出来るんだろうけれど、表立って何かするわけではないので、大義名分が成り立たない。


 連合王国が侵攻してきた百年戦争でも、王家に抵抗する勢力に最期まで立っていたし、今も恐らくはレンヌやポワトゥに潜んでいる親連合王国の貴族や商人と連携して、王国に仇為していると思われる。でもさ、王国の人間を受け入れない孤島みたいな領地だから、冒険者ギルドも存在しないし、王国との交流は最低限なんだよね。その最低限の交流に当たる商人も山賊が襲うんだから、一体何やりたいのか意味が解らない。


「妹ちゃんへの依頼の件、ダーリンは何かご存知かしら?」

「勿論だよハニー。実は、祖父が関わっているんだよ」


 ギャラン曰く、ブルグント公と前ニース辺境伯であるお爺様は、若い頃からの友人であり、ヌーベ領近くの街には修行仲間の修道僧もいるらしい。つまり、今回の山賊討伐のプロデュースはニース家ということになる。


「ニースと王都の中間にあるブルグント公領は割と大切な地域だからね。ワインも多く生産しているから、王都に向けて出荷も増やしたいし、そこに商会も絡みたいわけだよ」

「なるほど、つまり、古い友情とこれからの利益の兼ね合いで、妹ちゃんを利用しようというわけだねダーリン」


――― 何それ、聞いてないんですけど!!


 妹ちゃんが危険な目に合うと分かっていて、黙っているようなお姉ちゃんじゃないんだよ!! ダーリンで誤魔化せると思うなよ、 この毛むくじゃらが!!





 しばらく、真剣なトーンで問い詰めたところ、爺様軍団が妹ちゃんをサポートして、名声を挙げさせた挙句……ブルグント公爵の養女にして……然るべき家柄の嫁にするという、どこのお見合い婆だよというお節介極まりない話であることが判明しました。

 

 全然望んでないから妹ちゃんは。そうなると、リリアル手放さないといけないじゃないか。


「妹ちゃんは全然望んでないと思うよダーリン」

「……えーと、やっぱり王子様と結ばれるのがハッピーエンドじゃないかなハニー」

「うん、ハッピーエンドではないねダーリン。もう少し、義妹のことを理解した方が良いと思うよ」


 そうです。妹ちゃんは王子様とか全然興味ありませーん。特に、王家のあれとか全然興味がない。嫌でしょ、将来王妃様とか。絶対ないね。それに、私と妹ちゃんの時間だって、全然無くなるじゃない? 王族とか絶対ダメ。全力で!! 子爵家の総力を挙げ叩き潰さないと!!


「まず、ダーリンからその考え方を変えないとね。子爵家の娘で、子爵家の為になる選択に、王家は入ってないから」


 自分が支えるべき存在になるとか、考慮外だよね。


 という事で、ニース辺境伯家にギャランは大至急お手紙を書くように命じました。婚約解消でもいいのかなって言ったら、素直に手紙を書いてくれて、とても良い婚約者だと私は感心した。もう少し、王都のこととか、子爵家のことも理解した方が良いと思うよ君は。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 そんな話をしている間に、妹ちゃんたちはブルグントに旅立っていきました。行商人とか、旅の巡礼者とか色々怪しい設定を設けているらしい。まあ、妹ちゃんは商人の娘とかに合うと思う。可愛いし。


「山賊って何人ぐらいなんだろうねー」

「わからないですよ」


 私は妹ちゃんのいない間に、リリアルで過ごしています。これは鬼の居ぬ間にとかではなく、お留守番係を拝命しているからです。日常業務は回るけれど、外からの使いとかあった場合、貴族の娘とかの方が対応しやすいからね。この子達だと、侮られる可能性もあるし。


 良い留守居がいると安心できるんだけどなぁと思う。


 孤児のみんなは、妹ちゃん達がいない間も、決められた作業を黙々とこなしている。妹ちゃんがいなくても、ルーティンは守れているみたいで何よりだね。


 特に、使用人のもうすぐ成人になる子達は、魔術師見習や薬師見習の子達とは年齢も働く意識も違うから、丁度良いバランスなんだと思う。


「アイネさん」

「アイネ先生でよろしくてよ」

「……アイネ先生」

「なにかな」

「お二人は、無事に帰って来るでしょうか?」


 え、みんなそんなにじっと見ないでよ。お姉ちゃん緊張しちゃうじゃない。そりゃお姉ちゃんも心配だけどさ……


「困っている人がいれば、助けるのがリリアル魂でしょう」

「……聞いたことありません……アイネ先生」


 ありゃりゃ、そうか、この子達にはまだ時期尚早だと思って妹ちゃんは伝えていないのかもしれないね。


「今、妹ちゃんたちは山賊討伐の依頼を受けて旅をしているんだけどね、多分、孤児院の子達の中に、山賊に襲われて親兄弟を殺されて、自分だけ助かった子がいたと思う。ああいうのは、戦争がない時の傭兵の生活費稼ぎみたいなものでさ、自分より弱い者を虐げて生きるのが当たり前の悪い奴らなわけ」


 小さい子供ならともかく、ある程度の年齢になって人を殺して物を奪うような奴らは、改心なんかするわけないからね。捕まえて鉱山にでも放りこんで死ぬまで働かせるとか、犯罪奴隷として使い潰すくらいしか役に立たないと思うわけです。


「だから、害虫退治みたいなものだね。生かしておけばみんなが迷惑する。でも、誰もが退治できるわけじゃない」

「ああ、だから僕たちがここで訓練しているわけですよね」

「そんなところ。だから、楽しい事ばかりじゃないと思うけれど、妹ちゃんの力になって欲しいね。お願いするわ」


 子供たちの思いは色々だと思うけれど、ここがこの子達の居場所であるとなったのであれば、この子達は妹ちゃんについていくと思う。それで今の所は十分かな。


「お願いされてやる」

「わ、私も、頑張ります!!」

「お腹いっぱい食べられて、温かい布団に綺麗な服、もう十分に頑張れる」

「守るのは当然。それが仕事」


 言葉は一人一人違うけれど、やっぱここがこの子達の居場所になっているんだろうね。だから妹ちゃんは、無事でさっさと帰ってきて欲しい。この子達も心細いと思うから。





 なんて私が殊勝に考えていたんだけれど、妹ちゃんはまたやってくれちゃいました……偽装山賊をほとんど討滅しちゃいました……まあ、元気な老人三人組に助けられた面もあるみたいだけどさ。


 でも、話によると一時は拉致されて酷い目にあったという噂もあって……事実確認が早急に必要だよね。


「どうやら、首領はブルグントの領都で公開処刑となったようです」


 ギャランからの一報。妹ちゃんが一刻も早く戻ってきて欲しい私からすると、どうでもいいんだけどね。


「二人とも、潜入の為に捕まっただけで、身分を明かしたうえで身代金を要求するように交渉したので、全くの無傷だったそうです」

「……流石だわ。ねえ、ダーリン」


 妹ちゃんの細かい交渉術にはお姉ちゃんも関心するね。確かに、生きるのにも困って山賊に身をやつしたやつじゃなくって、偽装山賊なら、回収する金銭の額を高くするためにも人質は大事にするもんね。


 でも、その配慮が自分の寿命を縮めるなんて皮肉だね。




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