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第17話 私、王都とリリアルについて考える

お読みいただきありがとうございます!

第17話 私、王都とリリアルについて考える


 初めてのお泊り会……リリアル訪問は色々実りある内容だったね。妹ちゃんとリリアルで接点を持ち続けられそうだよ私。


 例えば、リリアルで作るポーションも、王都で販売するとなると色々問題がある。過剰供給になって値崩れとか、薬師ギルドと摩擦が既に起こっているしね。


 いくらお父さんが私同様『妹第一主義』だからといって、公平さを欠くのは王都を預かる子爵としては問題だからね。子爵ってのは元々、伯爵の補佐、城代みたいな役割だから、元々『ルーテシア伯』であった王家にとって、子爵の補佐役と言うのは別におかしくはないのね。


 伯爵は同僚、侯爵は独自の軍と専断権をもつ伯爵の上位種、公爵は王家の血筋か王家に準ずる集団の長といった感じで貴族の元々の役割りから爵位ってのは決まるわけです。侯爵と似た役割に『辺境伯』が存在するのだけど、これは帝国風の爵位名だね。


 ニースさんちは、王国に敬意を表して公爵から侯爵相当に爵位を落して、尚且つ、名目上は『帝国とは仲悪じゃありませんからねー』と名乗りで示したわけです。もっとも、辺境伯は帝国でも『公爵』に陞爵している家系が多いのでそのうち『ニース大公』になるかもしれない。


 まあ、三男坊で入り婿確定のギャランの実家の話はどうでもいいんだけど、つまり、ニース商会の販路で帝国や法国に高くポーションを売りつける事が出来れば、リリアルにとっても王国にとってもメリットがあるわけです。


 サラセンとの戦いが続く帝国・法国とその親族である神国は、常に内海で戦火が絶えません。船乗りというのは、経験がものを言う世界なので、傭兵のように簡単に人を集めることができないのだよ。


 そこで、王国謹製リリアルポーションがとても役に立つわけだよね。これは、王国が高く売りつけるだけじゃなく、元々希少価値で割高になっている内海周辺のポーション相場を押し下げる役割もあるわけだ。


 金貨一枚で救える命が多い方がいいよね? ほら、王国に貢献しつつ、帝国や神国、法国の船乗りたちや商人にも感謝される。これ、ニース家にとってすごく良い事でしょう!!


 おまけに、リリアルで妹ちゃんと接点も増えてWin-Winだね私たち。今金貨三四枚の回復ポーションを金貨一二枚くらいにできればいいね。




 妹ちゃんは、二期生とか考えているみたい。夢は広がるリリアルライフ。気が早くない? 囲い込みたい気持ちも分かるし、ニース商会がそのためにできる事は結構ある。雇用先であったり、ポーションの換金先であったりだね。


 二期生すでに二十人も候補がいるらしい。でも、ちょっと難しいと思うな。みんな十歳くらいで自分のことが自分で済ませられる程度でしょ? それより、薬師の子を増やして半年くらいでドンドン成人間近の子を速成教育して

即戦力にした方が良いと思う。


 とは言え、数年かけて育てていくことになるんだろうね。


 ニース商会のリリアル支店の話も少し進めているんだよ。王都の中で商売すると、ほら、色々権益の問題とかで揉めるじゃない? 王都に本店はあるんだけど……実際はリリアルの門前でお取引している……オフショア的存在。それがリリアル出張所だね。


「まあ、カタログ販売みたいな感じになるでしょうね」


 これこれ。一々商人がお伺いして「あれはあるかしら」みたいな話をするとそれはそれで今まで通りなんだけどさ、店舗のメリットって言うのは、目に入った商品が欲しくなるって事もある。でも、誰もがそれをできるわけじゃないでしょう。


 そこで、カタログ販売です。暇なときにうっかり読んでしまう、イラストと紹介文のあるカタログ。本誌と季節ごとの小冊子で構成しようかと思っております。見ているうちに、あれもこれもと欲しくなる不思議。文章? それは当然、妖精騎士の物語の作家たちを動員しております。あら不思議、似た語り口がぁ……て感じだね。


 冊子の裏には、妖精騎士の物語の舞台のチラシ的な要素もあり、これが、貴族の子女の間でまた受ける事間違いない。少なくとも、王女殿下は「とても素晴らしいですわぁ」と喜んでもらい、次いでに注文もして欲しい。


 といった感じで、リリアルを絡ませて私と妹ちゃんの夢は広がる。ん、だれ同床異夢とか難しい古語知っている人は!! 同床同夢だよ☆ 妹ちゃんの夢は私の夢でもあるんだからね。


 妹ちゃん的には、リリアルの周りに街をつくりたいみたい。まあ、王都には色んな人がいるし、目も届きにくいからね。小さな街ならそんなこともない。貴族が気軽に街歩きできる小さな街ってのはいいかもね。


「街づくりとなると、子爵家にも相談しなければならないでしょう」

「……そうなりますか」

「ええ。川向こうとはいえ、王都に近い場所ですからね。まして、王妃様の肝いりの学院とその付属の門前町になるはずですから」


 そんな話になっていて、私はピコン!と閃いたよ。


「あ、お姉ちゃん閃いちゃった」

「……領地はいらないのだけれど」

「ええぇー だってさ、自分の領地ならある程度は自分で決められるじゃない。この別邸ごといただけば、王妃様も安心なんじゃない?」


 王家の臣下で自身の領地を持つ者は『伯爵以上』と決まっているのだよ。男爵子爵は代官に過ぎない。それと、領地を持つ者は独自の騎士団を編成する事もできる。リリアル騎士団……いい響きじゃない?


「そうですね。あなたに払う年金を学園とこの屋敷の維持管理に使えるようになるわけですから、王国としては喜ばれることになるでしょう」


 今でもそうだけどね。でも、爵位と領地が整えば、立派に王国の期待に応えた証明にもなるし……何より私の陞爵と合わせられるじゃない? 姉妹で伯爵とか結構カッコいいと思う。


 まあ、妹ちゃんはそんなこと一ミリも考えていないと思うけどね。


「学際的な副都として育てていくのも悪くありませんね」

「そうそう、王都はもう場所がないからね。学ぶ場所だって王都の外にあっていいんじゃないかな」


 ほらね、全然自分の利益のこととか考えない真面目ちゃんなんだよね。

そこが危ない。


「何より、街の税収があなたの収入になるのですから、商会としても全面的に街の開発をお手伝いしますよ」


 お、ギャランよくわかっているじゃない。リリアルを守る事は、ニース商会とニース家を守りついでに、私の行為を勝ち得る手段であると即看破したね。そういうところ、嫌いじゃないよ。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 夢が広がるリリアル学院……私と妹ちゃんの夢の学院です。


「お父さん、何で仕事が増えているのかな?」

「……リリアルの調整だな」


 王都の薬師ギルドと一部商人ギルドの権益にリリアルが引っ掛かるので、その調整として、一部免税を期限付きで行うんだってさ。


「王宮は税収減ると問題にならないの?」

「そこは上手くやる」


 父子爵曰く、文句を言うギルドや王都の参事会、あとは定期的に行われる王領の三部会という、「税金払わせるなら文句言わせろ」な奴らに対して、色々見えないところで工作するらしい。


「あ奴らは、とられる税金の額だけ気にしている。その税がどのように使われ、周り回って自分たちを支えている事に気が付かん」


 王家というのは、王都の地主であり大家でもあるわけです。子爵家は王都の管理人さん。王都があるお陰で、金持ちぶっていられるわけで、嫌なら出ていけばいい。王都はそのお陰で、入城税は取らないんだよ。


 それで、その税金は王都を支えるために使われている。勿論、王家の生活を支える資金になっているけど、騎士団とか城壁の維持管理とか、そして……貧困者の救済にも使用されている。


 具体的には、孤児院と施療院への寄付という形だね。


「働いたものが怪我や病気になった際、ギルドに加盟できるような上位の職人なら休業の保証が得られる。その為に金を払っているから。だが、普通の労働者や使用人は首になって終わりだ。その者たちの世話を誰が見ていると奴らは思っているのだろうな」


 施療院も孤児院も土地や働く人の収入は地域や教会が面倒を見ている。でも、全部じゃないよ。どれだけの食費や衣料や医療が必要になると思っているんだろうね。王家やそれに従う貴族たちが寄付しているから成り立っている。


 つまり、恩恵を受けているのは王都の文句をいう奴らで、与えているのは王家なわけ。これを弄るという事だね。


「安い労働力扱いの孤児や貧民をリリアルを介して徐々に教育して組織化していく。まあ、当てはある」

「ふーん、王家が直接寄付しなくても良くなれば、王家の予算が減るから見た目税収が減っても問題なくなるってわけだね」

「そうだ。王家は支出を減らし、リリアル経由で今まで以上に王都の貧しい民を支える。やがて、王都の業突く張り共は、自分たちが使い捨てにする事で利益を得てきた貧しい者たちがいなくなっている事に気が付く」


 名目上、王国には奴隷はいないから、安く使える貧民がいなければ、商売は成り立たない。余所から人を連れてくるのだって、その費用が発生する。そのバランスの取れる金額まで、王都の貧困層の所得は上昇する。


「使えるお金が増えれば、益々商売が増えていくね」

「そうだ。少しお金が増えただけで、死なない程度の生活から余計なものを買いたくなるのが人間だ」

「その辺りに、商売の種があると」

「まあ、行商をするのは売るだけではない。手間賃の安い農村に行き、組立などをやらせて賃金を払う。そのお金もまた、行商で売り上げとなる」

「つまり、王都から仕事を持ち出し、商圏も広げる仕事をニース商会ですればいいわけだね」


 既存の商売にない貧民相手の小物売り、その小物は農村で加工し王都に出荷され、王都の経済圏に農村が組み込まれていく。これも、王都のギルドには関係ない話だね。


「その行商、リリアルの子達にできるといいね」

「できるだろう? 孤児院を巻込んで、おおいに変えていけばいい」


 孤児院で読み書き計算の他に、色々できるようになると良いかもね。



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本作の元になっている長編。
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

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