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第15話 妹ちゃん、男爵にならず

お読みいただきありがとうございます!

第15話 妹ちゃん、男爵にならず


 何故か、王都では『妖精騎士は王国最強』という話が流れている。え、私じゃないよ今回は信じて皆の衆。


 多分、王妃様周辺とレンヌの時に負けて馬鹿にされた騎士団が、意趣返しで流していると見た。でもさ、十三歳の少女が王国最強の騎士って大丈夫なのだろうかこの国はと思わないのかな。


 まあ、少なくとも、先のニース騎士団長であるあのお爺様の存在があるので、暫定一位という事だろうね。他にも、私たちの知らない騎士様もいるだろうし、そもそも、一人の強い騎士の存在って国の安全保障にあんまり関係ないからね。戦争は数だよ兄貴って昔から言うじゃない? 


 でも、兄貴ってどこのどなた様なんだろうね。




 最近リリアルも落ち着いたようで、そろそろ出かけようかなと思っているのだけれど、どう思う?


 最近、王妃様の差し入れが毎週日曜に届くらしい。お菓子とか? 楽しみにされているみたいで、お姉ちゃん的には少々……いえ、かなり羨ましいです。


「アイネ、最近、教会の施療院にリリアルが薬を配っているらしいが、何か聞いているか」


――― 何それ、聞いてないんですけど!!


 いやいや、そもそも私に妹ちゃんとかリリアルに関わる機会全然ないよね。最近ずっと一緒に仕事してるじゃない?


 教区の教会全てじゃないけれど、篤志家が多い所とかあとは貧困層の多い場所には『施療院』という病人や怪我人の面倒を見る施設があるんだよね。最後の秘蹟をするのにも、家が狭かったりとんでもない場所に住んでたりすると困るでしょ。だから、教会の施設にそういう最期をみとる場所みたいなところがあるわけです。


 都市によっては、子供・女性・老人・怪我人みたいに分けて専門的に見る場所もあるみたいだけど、王都は教区で分けているみたいだね。


 そんな感じなので、自前で薬草畑を持っているような教会なら、多少は治療めいたことをできるけれど、そうでなければただ寝かされているだけだったりする。


 職人でも、怪我をしたりして一度施療院で世話になると、長く寝付いて仕事に戻れずそのまま貧困に陥る人も少なくないらしい。なので、王都の課題としては、施療院の滞留日数を短くする試みも含まれているんだって。


「良い事じゃない? 見習薬師の作った薬だから、効果は保証できないとかだろうけれど。リリアルは王家の管轄だし、王家からの下賜という扱いなんじゃないのかな」


 孤児院は王家の管理になったので、施療院だけでなく孤児院にも渡しているんだろうけれどね。


「問題は、薬師ギルドなんだよ」


 どうやら、無料の薬を施療院で提供するという事で、自分たちの売り上げが下がると文句をつけているらしい。


「一蹴してやればいいじゃない」

「そうもいかん」

「いやいや、そもそも施療院で世話になったり、孤児院の子達が薬師の作る薬とか手に入るわけないじゃない? それに、王家が管理するリリアルで見習が作った薬を無料で王都の孤児院や施療院に渡す事に、薬師ギルドがなんでしゃしゃり出てきて文句言うのよ。元々客でも何でもないでしょう」


 赤字覚悟で大安売りして客を奪ったり、薬師ギルドが提供している先にちょっかいかけているわけじゃない。だから、話を聞く必要はないと思う。


「なら、茶会とかで話を回しておくよ。薬師ギルドが業突く張りで、自分の儲けが減るかもしれない……か・も・し・れ・な・い って理由で、王妃様の肝入りで作られた学院の生徒が作る試作の薬を施療院や孤児院に渡すのを止めるように子爵家に文句を言いに来て困っていますってさ」


 だって、そうじゃない。


「それは、やめてやってくれ」

「いや、ギルドという利益団体を作って薬を統制しようとしているってだけで感じ悪いのにさ。そりゃ、毒にもなるし効果のない薬を掴まされる可能性があるから、薬師ギルドって薬を扱う人間に認められているわけじゃない。勘違いしている奴らは、一度黙らせた方が、後々の為だと思うよ」

「……」

「あのね、お父さん。妹ちゃんの名誉の為にも、ハッキリ話をして頂戴」

「……ああ……」

「でないと」

「ないと……」

「お婆ちゃんとお母さんに話をします」

「ちょ、待ってくれアイネ!!」


 リリアルに全力投球している妹ちゃんのことを私以上に心配しているのは、母と祖母なんだよね。特に、祖母は相当心配している。大体、デビュタントもしていない十三歳の女の子がやるような仕事じゃないからね。


「なら、黙らせて」

「……わ、わかった。話せばわかる」

「でも、お茶会では話をするのは決定事項です。じゃないと、私があの二人に潰されます。お父さんも中途半端に日和見すると、痛い目会うから気を付けてね」


 本人は全然わかってないけれど、子爵家の愛を一身に受けているのは妹ちゃんです。私ではありません。少なくとも、私の分が減るので妹ちゃんに敵うわけがありません。妹ちゃんは私が妹ちゃんを思うほど、私のこと思ってくれてないし……多分。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 皆さん朗報です。妹ちゃんは成人まで男爵位を賜らなくなったそうです。いや、やろうと思えばできるんだけれど、男爵位に相応しい『家』を作らないといけないわけです。家宰も必要だし、それなりの社交も必要になるから今すぐは無理じゃない? 暫くは子爵令嬢としてリリアルに専念するみたい。


 なんだか、別の家の人になるというのは寂しいからね。良かったと思う。当主の仕事はそれなりに大変なんだよ。式典とかに数合わせで出席しないといけないとか。そうすると、その調整をする家人も必要だし、衣装の調達とかスケジュールの管理も必要になるじゃない。従者も必要になるし、歩いて行くわけにいかないんだから馬車も必要。貴族が必要な式典は、全員馬車に乗って参内するわけだから、借りるわけにもいかないしね。


 まあ、子爵家の馬車で仲良く出かけてもいいけれど、妹ちゃんリリアルから直行だと無理だし。


 それに、既に騎士である妹ちゃんとめいちゃんには『従卒』が必要じゃない。ペイジとか言う、身の回りの世話をする見習騎士みたいなの。まあ、リリアルの子達の中で見繕うつもりだろうけれど、そっちが早急だよね。騎士は、騎士として出征する時は明日にでも対応しなきゃだし。


 そういう意味で、完全文官の我が子爵家は安心だね。王都のお留守番が仕事だから。お父さんも鎧くらい着て雰囲気出すんだろうけれど、魔術も剣もどっちも駄目だから。


 その代わりに、私が、歩く砲台となって大魔(Megiddo)(frame)で敵を焼き払うって寸法だよ☆


 王都の南門からリリアルまでの道を、私の魔術で焼き清めていくんだ。汚物は消毒? まあ、有り余る私の魔力と妹愛で焼き払うよ。





 因みに未成年の妹ちゃんは、リリアルの院長ではなく、ジト目宮中伯のお父さんの年下上司が務めている。実家は侯爵家なので、年下上司は全然あり何ですが。


 妹ちゃんは『学院副校長兼教授』という仮の肩書です。副院長じゃなくって副校長ってなんなの? 教授かぁ……妹ちゃんの好きそうな肩書だよね。長とか教えるという職業が好きなんだよね。


 とは言え、最近妹ちゃんはリリアルに擦り寄る王妃様と仲良くしたい貴族の応対とか、騎士団を蹂躙したことでいらぬ嫉妬を受けて疲れ気味らしい。


 そこでお姉ちゃんは考えました!! リリアルにニース商会の出張所とか設ければ、お手伝いできるんじゃないかって。いやほら、私の都合じゃないんだよ。両親と祖母の……特に祖母のプレッシャーがお父さん経由で私のところに来ているわけです。


 姉というのは、妹を援けるために存在するのだよ諸君。


 学院で入用な物資とかの手配を私の方で受けようかなって。商会の仕事もまだ忙しくないし、与える仕事としてはリリアル学院の運営というのも悪くないと思う。身内だし、リリアルの使用人の中で窓口決めて貰って、その子を育てて、最終的にはニース商会の使用人として引き取るという形で、教育も助けられるし。


 簿記や帳票類の記載、契約書の読み方作り方なんて、わざわざ妹ちゃんが教える必要ないしね。勿論私もやりません。その為の使用人だからね。確認はするよ、きちんとした内容かどうか目は通すし、教育内容だってチェックする。


 ほら私、妹ちゃんに感謝されそうじゃない?




 めいちゃん経由で三男坊から打診させたところ、妹ちゃんからは「是非」という回答を貰いました。無事任務達成。これで、私とお父さんへの風当たりも和らぐというものです。


 そして、私と三男坊はリリアルに正門から堂々と招き入れられるのだよ。


 ちょっと見ない間に、妹ちゃんはすっかり落ち着いた「教授」になっていた。雰囲気変わっちゃったけど、中身はどうなのかなと思う。


「久しぶりー 最近、ここにずっと住んでるんだよねー。たまにはお家に帰ってきなさいって、お母さんも心配しているよ」

「そうね。一段落したら顔を出すわ」


 今回の任務も、母と祖母の命令に近い。直接会って嫌われたくないからって私に押し付けるのはどうかと思うあの二人。


「それ、全然来るつもりないでしょ。今度は、子爵家みんなできちゃうからね!」

「……やめてちょうだい……」


 うんうん、それが嫌だったらさっさと家に帰っておいで。三男坊が苦笑いしているのは、妹ちゃんの認識と私の微妙な立場のズレを思ってだろうね。三男坊、よく見て理解してくれていてありがたいよ。



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