第14話 妹ちゃん、リリアルに移る
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第14話 妹ちゃん、リリアルに移る
どうやら、王都の孤児院は妹ちゃんの活動を期に、王家の管理下に入る事になりました。つまり……お父さんの仕事増加になりました。
それは即ち、私のお手伝い量が無事増加中なんだよ……ヨヨヨ……
「人攫いの件も騎士団が追いかけているが……」
「孤児のことだから、本気でやらない?」
「まあ……そのような所だ。手柄にならないとでも思っているのだろうな」
バッカだねぇ。レンヌで見つけた人身売買組織は連合王国の紐付き組織でしょ。つまり、王都にもその連合王国の影響下にある組織が活動し、王国民を誘拐して連合王国に送り込んでいるわけじゃない?
騎士団も攻勢組織に変えなきゃじゃんね。妹ちゃんの活躍に嫉妬して見当違いの喧嘩売ってる場合じゃないと思う。
「騎士団も近衛騎士団も再編される予定であるし、警邏の体制も見直しになるようだから、多少は良くなる」
だけど本質的には良くならないよね。売られちゃう子達は守ってくれる人がいない弱い立場の子達だし、売る奴らはやっても安全だと確信しているんだからちっとも良くならない。
だから、妹ちゃんが絡んで孤児院の子は王家の子って扱いに変えていくんだろうな。まあ実体は教会で今まで通り面倒みるんだろうけれど、所属って大事じゃない? これで、守る存在が育てば、孤児の子達や貧民の子達も攫われなくなるんじゃないかな。
妹ちゃんは、きっとそういう人になろうと思ってるんだろうね。
お姉ちゃん、ちょっと妖精騎士のお話、煽り過ぎちゃったかな……
今日も今日とて妹ちゃんは、学院で使う薬師とか錬金術師の道具を買い揃えに買い物に出かけているらしい。人数、何人ぐらいなんだろうね。十人くらいって聞いた気がするけれど、十人分の道具を自腹で買うとか……お金持ちだね妹ちゃんは。
「それで、あの子が周った孤児院で、問題がありそうなところの報告書が……これだけある」
ゲッ!! えーとなになに、栄養状態が悪い子が多い、読み書きを一切教えていない、内職ばかりさせている、建物の老朽化、寝室の環境が悪く、男女同室……まあ、そういうところもあるだろうね。
「これ、再調査だよね」
「ああ。孤児院はそれぞれの教区の教会の付属物だから、貧しい地区程孤児が多く施設に問題があるようだ。これは、王家から支援をして貰ってだな……」
「お母さんと私でチャリティーお茶会を開けばいいんでしょう?」
「そうだな。折角、ニース辺境伯の王都邸が使えるのだから、そちらで先代が来られた際に、堂々とお披露目かねてやるとかだろうな」
孤児院への慰問や寄付は貴族の夫人の嗜みなので、個々にするとどうしても綺麗な孤児院に行っちゃうんだよね。綺麗で裕福な人が住む孤児院は孤児も少ないし困ってないんだなこれが。
なので、子爵家主催でチャリティお茶会やって、寄付の集まらないボロい教会の孤児院の支援をする方が必要な所に寄付が流れるようになると思うんだよね。
「ほっとくと、妹ちゃんは孤児院全部に自前で色々始めそうだから、急がなきゃだよね」
「そうだな。家を出て目が届かなくなれば際限なく仕事をしそうだから、お前も顔を出して様子を見てやってくれ」
それはそうだろうけれど、恐らく王妃様絡みなので、手助けを求めるのは父ではなく祖母になると思うのね。
「お父さんからも、お婆様によろしくお願いしておく方が良いよ」
「……元王妃様の離宮であるし、声をかけておく……」
父も祖母に会えば、小言の一つも言われるので顔を合わせたくないんだろうなとは思う。でもさ、妹ちゃんの頼る身内ランキングぶっちぎり一位なのは自薦では私だけど他薦ではお婆ちゃんなんだよねー 残念。
まあ、この先は私になるように、頑張ろう。そうしよう。
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リリアルのある王都の郊外までちょっと足を延ばしてみたんだけどね……三時間かかったんだけど意外と遠い。まあ、狩猟用の離宮だったから王都の傍ってわけないんだけどさ。
川もあり、池もあり、葡萄畑も備わっていて……これぞ城館という感じだね。広々として、綺麗な所だよ。
人数は少ないけれど、警備の兵士もいるみたいだね。流石に放置はされていないみたいだけど……学院になったらどうなるんだろうね。
え、一応笑顔で手を振っておいたよ。子爵家の紋章入りの馬車だから多分問題ないはず。妹ちゃんが学院にするって話と、子爵家の令嬢だってことくらいは伝わっているよね。
若干不安に感じているんだけど、離宮の街道に出る手前の場所に何やら建設が始まる準備がしてあるんだけど。なんだろうね。
「すみません、お話聞かせて頂けますでしょうか?」
「ん? これは御令嬢。どうされたのですか」
どうやら、父の知り合いの建築関係の人みたい。私は覚えていないけれど。
「実は、この離宮を妹が借り受ける事になりましたので、様子を見に来たのですが……ここには何が建てられるのでしょう?」
「騎士団からの依頼で、小隊規模の駐屯所を建設することになっております」
なるほど、妹ちゃんと王妃様の間でその辺りの話は済んでいるのかな。魔術師見習の孤児院なんてのは、人攫いからしたら宝箱だもんね。既に手は打っていたという事か。お父さん……知らされていないのか、私に伝え忘れているのかどっちかなんだろうね。
「このような案件が増えております。王都の近郊に警邏用の分屯地を多数設けるみたいですな」
「事件の影響でしょうね」
という感じで、レンヌの人攫い事件からの王都の治安強化を本腰入れて始めるというのは偽りが無いようです。とは言え、本来は来年の予算からになるんだろうけれど、妹ちゃんが拿捕した戦列艦を連合王国で買い取らせた資金で臨時予算を組んだらしいので、速やかに進んでいるという事です。
妹ちゃんの姿はリリアルの敷地の周りからは確認できていないんだけど、既に、子供たちを受け入れる前に使用人の教育をする為に、めいちゃんとあの建物の中で生活しているということを私は知っている。
だがしかし、会いたいのをぐっとこらえて私は王都のお家へと帰る事にしました。だって、今凄く頑張って仕事しているはずだから、ちょっかいかけると激怒するのが見えているからね。落ち着いたら、差し入れもって行こうかなと思うよ。
その後、三日と開けずに、私はリリアル学院となった離宮を馬車で訪れている。建築しているところに差し入れしたりして、学院の様子を間接的に聞き出したりしている。どうやら、子供は十一人で、その他に数人の世話役をする使用人見習の孤児の子が数人いるという話です。
「最初の頃は静かでしたから、子供がいるとは思えませんでしたけれど、ここ数日は庭で運動したり、和気あいあいと楽しそうにしておりますよ」
「そうですか。一先ず安心いたしましたわ」
妹ちゃんのことだから、色々工夫して子供が飽きないようにとか……考えまくってるんだろうな。でも、一人で薬草採取しているよりはずっと楽しそうだよね。大変そうでもあるけれどさ。
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――― 何それ、聞いてないんですけど!!
「ねえ、お父さん。妹ちゃん、近衛騎士とリリアルで模擬戦したんだって?
知ってたのかな」
「……いや、事前には知らされておらんぞ。まあ、王宮で宮中伯から事後で教えられたがな」
やっぱりそうかぁ。今回のたくらみも、王妃様主導だろうね。近衛の綱紀粛正と再編する際に文句を言わせないように、国王陛下と宮中伯が考えて王妃様経由で手配をしたと見た。
だってさ、妹ちゃんは実績がある『男爵』の十三歳少女なわけじゃない? で、孤児集めて第四の騎士団のような魔術師の学校を始めちゃうわけでさ、当然文句が出てくるよね。
王国には、戦時に徴兵した兵士の指揮を執る事になる『騎士団』、それと常備の『近衛連隊』、王宮や王族の警護を務める『近衛騎士団』、魔導具の鎧を装備する『魔導騎士団』が存在するんだけどね。
騎士団はレンヌの前に手合わせして実力も把握しているし、レンヌの件は実際にその場にいた騎士もいるだろうから、一先ず異論は出ないし環境の整備もなされているけれど、王宮内で警護しかしていない近衛にはその辺り分かってない貴族の子弟である騎士もすくなくないだろうから、黙らせるために今回のリリアルお披露目会を利用するって事だったんだろうね。
王妃様がリリアルの視察に赴く。そうすると、近衛も同行するから、自然、立会を希望する……なんて絵がすぐに描けるじゃない。
「近衛は黙ったの?」
「まあな。仕事がやりやすくなったと宮中伯には喜ばれた」
「恨みを買ったりしないのかな」
「それは……ないとは言えないが、あの子が大きく失敗でもしなければ徐々に認められていくだろうさ。それだけの力のある子だ」
お父さんは親馬鹿なので私達姉妹に対する期待度がとても高い。もう、仕事に対する観察眼が全く生かされていない気がする。
「近衛は王のための組織では無くなっているからな。再編は必要だった。抑え込める程度には、近衛の力は落ちているから問題なかろう」
王家としては、実際に王女殿下の危機を救い王都の危機も救った妹ちゃんの存在を近衛騎士団より上に考えているという事だね。それでいいのか、近衛騎士団と私は言いたい。
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【本作の元になるお話】
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/
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