表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/30

第13話 妹ちゃん、男爵に陞爵するかも

お読みいただきありがとうございます!

第13話 妹ちゃん、男爵に陞爵するかも


 妹一番、旦那は二番、三時のおやつは何にしよう?


 元気ですかぁ!! 妹ちゃんの姉のアイネです。いやー 会えないほど心に妹ちゃんへの愛が雪のように積もるね。王都の周りはあんまり降らないけど。私の心には、妹ちゃんへの愛が十三年分積もりに積もっているのだよ。


 そんな事より陞爵だ。


 このまま行くとだね、数年後には『宮中伯爵』『伯爵』『男爵』と、なんだか爵爵している家族になり兼ねないんだけど我が家。


 王国の宮中伯は民間の優秀な人間を王の側近に加える為の名誉職のようなものだから、領地は無いし年金が死ぬまで貰えるってだけの法衣貴族なんだけどさ、男爵は子供に爵位を継がせられる本当の貴族になるわけで、妹ちゃん……お嫁にいけない体にされてしまったよ……ヨヨヨ……


 なんでも、レンヌでも大活躍で、パレードの最中に人攫いの男を見つけて捕まえたらしい。その前には、王女殿下とめいちゃんとトレント? エントとかいう木の魔物を追い払ったらしい。あー 私の大魔(Megiddo)(frame)で焼き払えたのにぃ!!!


 それで極めつけは、公太子様と王女殿下が舟遊びをしている時に、連合王国の戦列艦から攻撃を受けて、絶体絶命のピンチを、妹ちゃんとめいちゃんの二人で密かに忍び込んで、油ぶちまけて乗員を大やけどさせて身動き取れなくさせた後、船長を捕縛して戦列艦ごと捕獲? 拿捕したらしい。


 最新鋭の連合王国の戦列艦を無傷で接収って、城一つ落としたのと同じ勲功に相当するって事で、妹ちゃんは騎士から男爵へ、めいちゃんは王国の騎士に叙任される事になったのだそうです。うん、よかったねめいちゃん。君も憧れの騎士になれたわけだから、そこは喜んでいいと思う。


「そこから先は外では口に出してはならないのだがな」

「どういうことお父さん」

「これは、王都でも起こっている可能性がある。なので、口外無用なのだよ」


 海賊船? 私掠船の免状を持っていた戦列艦の中に、レンヌの商人や一部の貴族が関わる、人身売買の帳簿や契約書が押収されたのだという。


「確か、御神子教徒の奴隷、人身売買は違法だよね」

「ああ。但し、犯罪奴隷は例外なんだよ」


 連合王国では、戸籍のない住民は「犯罪奴隷」として扱う事が認められ、向こうの王都には奴隷市場もあるのだという。


「ようは、外国人を攫ってきて『住民の記録がない』って言いがかりをつけて奴隷にしているって事?」

「推測だがな。陛下は、連合王国と交流のある商人経由で奴隷市場の実態調査を行う命を出している」

「でもさ、向こうの市場に出た奴隷をこっちでどうやって取り戻すの」


 動産扱いになるので、知らずに買った買主には奴隷を手放さなければならない法的根拠はない。まして、外国の話だからなおさらだ。買い戻すとしても、そのお金を本人か家族が負担しなければ難しいだろう。


 そもそも、攫われている人間は貧しい者か孤児が多いという。


「攫われないようにする以外ないのね」

「王都にも孤児は二千人ほどいる。毎年成人して社会に出ても、まともな職には就けないし、貧しいままで犯罪者になる者や不法な仕事をせざるをえないものもいる。どうにかすべきだが、どうすればいいか皆目見当も付かない」


 今は孤児は教会とその教区の住人に委ねている。王都として国が何かしているかと言うと、何もしていない。貴族は教会に寄付をしたり、炊き出しを行う事もあるが、それは貴族としての嗜みに過ぎない。問題は全然解決していないんだよね。


 王都の人口がおよそ三十万人。二千人の孤児は決して少ない人数じゃないし、国が豊かになるためには、二千人の子供を役立つように育てる仕組みが必要なんだろうけれど……どうするかね。


「それで、あの子はまだ帰ってこないのかな?」

「王妃様にご挨拶に行っている。陞爵の件含めて色々お話があるのだろう」


 私は子爵家と商会の店舗とニース邸をグルグルしているので、妹ちゃんと全然会えていないのだよ。ああ、妹ちゃん、妹ちゃん。


「あの子は何か思いついたみたいでな。王妃様に相談すると話していたよ」


 王都の孤児と人攫いの件ね。王妃様に相談するとか、命知らずな妹ちゃんだと思う。でもまあ、教会関係は王妃様担当だから、間違いではないかな。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 妹ちゃんは絶対仕事のし過ぎで死ぬタイプだと思う。


 王妃様に孤児の中から資質のある魔力持ちを探し出して、親衛隊? 新兵団? に育てるって提案をして、無事検討中らしい。というか、多分国王陛下に聞いて即「面白いから採用」と言われるに違いない。


 子爵家の領分でもある王都の整備計画と連動できるし、才能のある物を大切にするって姿勢も大事だよね。生まれだけではなく、才能あるけど孤児の子達も王都の為に活躍してもらえるようにするのはとてもいいと思う。


 で、その魔力あるかどうかの確認、二千人分妹ちゃん一人で頑張るん

だって……


 いやいや、ちょっとよく考えてみようかぁ!! 王都の教区ごとに孤児院があるんだけど、大体五十箇所でそこに平均四十人くらいいるからざっと二千人いるんだって。それを、毎日午前午後の一箇所ずつ周って約一月かかる計算です。まあ、妹ちゃんならやれるな。毎日森で薬草採取続けられる子だからね。不可能ではない、普通はやらないけど。


 王妃様から王都郊外の離宮をお借りして、そこに魔力持ちの孤児を集めて共同生活? 魔術学校みたいなものを開くみたい。妹ちゃんが院長先生をするのか。


 え、もしかして、この家出て行っちゃうの!!


――― 何それ、聞いてないんですけど!!


 それは王妃様の好意だし、まあ、いらない物だから貸してくれただけ何だろうけれど、薬草畑作ったり勉強教えたりするんだって。何それ楽しそう!! あー 私も学院に誘われないかなー 妹ちゃんと学院ライフはじまるよ!! いやそれは無理だな。お父さんの仕事の手伝いと、ニース商会のお仕事もあるし、社交もあるし……ああああ!!!


 この妹ちゃんムーブに乗り損ねた私……反省。だがしかし、妹ちゃん学院(仮)に関わる方法は沢山あります。


 例えば、学院出身の子を冒険者にして商会の護衛として専属で採用する……とか、使用人として採用する前提で、商取引の教育をさせる……とか。幸い、妹ちゃんは契約関係含めて、商売の知識はある。自分が商人の奥さんになる気満々だったからね。

 

 でも、男爵家の当主になれば、そうはいかないでしょう? だったら、その培った知識を学院で活用してもらって、ニース商会も求人が楽になるわけで、まさにWin-Winな関係です。ウィ、マダーム。


 私の灰色の脳細胞が、銀色に輝いてきた気がする!!


 今度会った時、さりげなく使用人募集の件伝えておこう。きっと、責任感の強い妹ちゃんのことだから、孤児の就職先のことも心配するし、うちで採用して良い印象を持たれれば、お母さんの友達の奥様方の使用人に採用して貰えたり、子爵家の伝手で送り込むなんて事も可能かもしれない。


 妹ちゃんの育てた子達が王都の色んな所でお仕事するという事は、妹ちゃんと我が子爵家の目と耳が王都の隅々にまで広がるという事になるから、悪い奴らの情報も集まりやすくなるじゃない? ほら、対策立てられるようになりそうな気がしてきた。というか、もう既に達成した感じがする私。


「王妃様のどの辺りの離宮を頂いたのかお父さん聞いてる?」

「昔、王都の南にあった狩猟用の離宮だな。それを、王太子妃時代に先代の王大后様から頂いて、石造りの壁を漆喰塗に変えて、女性の好む瀟洒な外観に変わっているな」


 一度、王太子時代の国王陛下の従者として訪れたことがあるらしい。


「周りは原っぱと少し離れた所に森が広がっている何もない場所だ。敷地の外側を、近くの川から引き込んだ水路が流れているから、水車は設置できる。まあ、王妃様の好きそうな城館にはならなかったようで、今は全然使われていないようだね」


 但し、王妃様の持ち物なので、全く使わないのにもかかわらず維持管理費は発生しているのだという。男爵になった妹ちゃんは、その男爵の年金の全額を学院にぶち込むから、男爵にした費用=離宮の管理費ということで王家は全然懐傷んでないのではないか疑惑誕生。


 お母さんの言う通り、王妃黒いわぁー 私とは同族嫌悪で絶対合わない。


 でもさ、妹ちゃんが私を避けても王妃様を避けないのは納得いかないんだけど。私も王妃になれば、妹ちゃんともっと仲良くなれるのだろうか。王妃無理だけど。


「娘二人とも家を出るとなると、嫁に出した気分だな。もう少し先でもいいと思うんだがな」

「うん、そうだね。でもさ、今まで妹ちゃんとお父さんはお仕事の話一切していなかったけれど、これからは孤児の話とかで色々機会が増えると考えれば、心の距離は縮まったと思うよ」


 父も寂しがり屋のおじさんだから、娘の成長を喜ぶ半面、寂しく感じる子離れできない中年なのだと少し思うところがある。


 孤児を集めた魔術学校はホグワーツ? じゃなくって『リリアル』って名前みたい。リリアル魔法学園……ではなくリリアル学院だってさ。まあ、王家を象徴する妹ちゃんらしい名前だね。





 そんな感じで、妹ちゃんはレンヌから戻ってきて一層忙しそうで、朝食の時くらいしか顔を合わせる事がないのでとても寂しいのだよ。


 それに、リリアル学院のことはまだまだ検討中だし、毎日百人近い孤児と面談しているので、段々心が疲れてきたみたい。それはそうだよね、孤児は必死に妹ちゃんにアピールするだろうし、まともに受け止めちゃう妹ちゃんの性格からしたら、どうにかして上げたいって思うよね。


 お姉ちゃん的には、妹ちゃんの小さな可愛らしい手で握れる者は、ほんの少しの子達だけなんだから、その手からこぼれた子の事まで考える必要はないんだよと言ってあげたい。言わないけど。


 冷たいこと言うと、妹ちゃんに嫌われそうだから、怖くて言えません。





【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。


よろしくお願いいたします!


【本作の元になるお話】


『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/

下部のリンクから移動する事も出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作の元になっている長編。
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

『妖精騎士の物語 』第四部の裏でアイネがプロデュースする修道女達の成り上がり。
没落令嬢どんとこい!~修道院に送られた四人の令嬢の物語~『聖エゼル奇譚』
下の『妖精騎士の物語読者アンケート』をぽちっと押してご参加ください。
☆『妖精騎士の物語』読者アンケート☆
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ