第11話 妹ちゃん、めいちゃんと侍女になる
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第11話 妹ちゃん、めいちゃんと侍女になる
妹ちゃんは今、子爵邸にいません。恐怖のお婆ちゃん合宿に出向いて、礼儀作法の特訓中です……。
いやいや、お婆ちゃんの時代の王宮みたいに、煩くないから今の王宮。国王陛下の祖母の代とカステラ王女である母の代で、かなりルールが変えられたんだよね。おかげで、王太子妃であった今の王妃様はどっちの話を聞けばいいのか大変困った経験があるわけです。
なので、純王国風かカステラ風のどちらでも可という緩い作法に代わっているんだよね。妹ちゃんは全然問題ないんだけど、純王国風でビカビカに磨かれてるんだろうなー。
それと、レンヌ公国についての座学もすごい勢いで詰め込まれていると思う。王女殿下の側仕えとして、王女殿下の疑問に答えられないといけないとあの祖母なら考えるだろうから、ギュウギュウに詰め込まれているはず。
それを、当然のように受け止め、ドンドコ吸収するのが妹ちゃん。私は顔に出たり、必要ないと思うことは言葉にするので、次期当主としては評価してくれているけれど、可愛いお気に入りは妹ちゃん。
母と私の波長が似ていて、祖母と妹ちゃんも波長が合うという点でいいのかもしれないけどね。
妹ちゃんは一週間の合宿を終え、すっかり侍女らしくなって帰って来た。
「あら、腕をあげたんじゃない?」
「光栄です奥様」
「あらやだ、娘に奥様とか言われると何だか落ち着かないわね」
「お母さんは、いつも落ち着きがないよね」
「あらあら、一番落ち着きがない人に言われて、私ショックだわぁ」
今日はサロンで三人で過ごしているのだけど、妹ちゃんがお茶を淹れるというので、私と母は楽しみにしていたわけです。美味しくなってますって感じで特訓の効果が出ているね。
「準備は進んでいるのかしら?」
「ええ。冒険者の方を馭者でお願いしたり、同行する使用人の中に私の知り合いを加えてもらう手配をしています」
「あ、ニースの時の人達だね」
お姉ちゃんは大人の知り合いが加わってくれるので安心です。女の人もいたし、貴族の護衛も問題なくこなせる冒険者は希少だって聞いた記憶がある。良い出逢いだったと思えるね。
そういえば、めいちゃんが王都にやってくるタイミングで、王妃様たちに紹介する事になるみたいだね。妹ちゃんはこの後、王宮に向かって侍女の見習をする事になる。めいちゃんはその後に侍女として合流する事になるみたいだけれど、大丈夫なのでしょうか。向いていなさそうだったけど。
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妹ちゃんが王宮に去ってから数日後、めいちゃんと三男坊が王都に到着。挨拶だけすると、めいちゃんは早々に王宮に向かった。
「なんだか驚きだねハニー」
「ん? 何がかしらダーリン」
今回の王女様付き臨時侍女のお召は、ニース辺境伯家でもかなりの衝撃だったみたい。それはそうでしょうね。
「祖母と大叔母も久しぶりに王都に来たいという話が出ていてね」
「それは素敵なお話ね。お二人のお若い頃の王都のお話とか、とても興味深いわ」
そうです。ご隠居さん達もまだまだお元気。懐古趣味なものは意外と需要があるはずだし、その辺り、うちのお婆ちゃんより絶対あちらのお二人の方が詳しいはず。
旧友との親交を温めるという態で、お婆様方のネットワークに喰いこめるかもしれません。可愛がってもらおう。妹ちゃんの方が適役だけれど、私にも出来ないわけではない。
ニース商会の店舗探しもしなければならないんだよね。一応、当てはつけてある。王都は丸を四分割した形で考えるのが分かりやすい。川の西側に上位貴族の街・下位貴族の街その中央に王宮がある。川の東側、上位貴族の街の向かい豊かな商人の街、大学や王太子宮のような官庁がある。下位貴族の街の向かい側が下町になり、冒険者ギルドなんかは商人街に近い中央付近にあるけれど、その先は共同墓地とかスラムもある。
で、商人街でそこそこの広さのある商会にするか、店舗と館を別々にするというのもありである。辺境伯は新しく王国に加わった家なので、本来の家格としては上位貴族街に館を賜るべきなのだが、屋敷を維持する費用や王都への滞在もほぼないので、普通に宿を取って必要な時に泊まっているんだってさ。
「いずれは子爵家を継いでこの館に住む事になるのでしょうが、それまでは、商会のお客様を招くことを考えると、別の屋敷を確保したいものです」
いやいや、子爵から伯爵に陞爵する時点で上級貴族入りだし。知らせていないから仕方ないんだけどね。でも、王宮には既に話を通してある。上級貴族街の最も王宮近くで下級貴族街よりの館なら問題ないという判断だね。辺境伯家の滞在もそこで済ませられるように屋敷を整えて、商会の客と共用できれば無駄もないし、屋敷を構える意味もある。
将来的にはどうなるかわからないけれど、一先ず伯爵級の屋敷を構える事は問題ないみたいだね。
という事で、子爵家からも王宮からも近く、店舗のある商人街にも便の良い場所に屋敷を構える事にしました。直ぐには使えないけどね。王様の許可取って、ニース辺境伯家名義にしておく。それで、大改装をしてニース風の外観にするけど……日差しは多く入るようにしよう。寒いから王都は。
母の友人中心に、婚約が成立したことと、婿の顔を見せるお茶会を子爵邸で連日開催中。お土産はタロットカードと法国で流行の焼き菓子です。砂糖とバターを沢山使うので、お金が掛かるんだけどね。
そのうち、ニースの物産展的なガーデンパーティを開くのも良いかもしれないね。料理にお酒に、織物にガラスの器に陶器、カトラリーも揃えてニース風のお持て成しも是非やってみたい。そう考えると、屋敷の改装の際に広めの芝生の広場も必要。
その芝生が禿げる勢いで稽古を始めそうなお爺ちゃんを私は知っているので、稽古をする場所は石畳か煉瓦敷きにしようそうしよう。
「素敵な屋敷になりそうですねハニー」
「王都で皆がこぞって足を運びたがる場所にしましょうねダーリン」
ワインセラーも整備して、ストックしないとね。最近は、瓶で封をしたものが味の劣化がない高級品になっているし、樽のままだと春先には不味くなるしね。あ、妹ちゃんに錬金術で蒸留酒を作ってもらおうかな☆
ボルデュとかで作るブランデーとかコニャックみたいな濃いお酒の方が、運びやすいし値段も高くできるからそれも研究したいね。
夢が広がり、財布の口も広がって欲しいものです。
選べるほど屋敷に空きは無いので、いくつかの中から、部屋数も多く庭の広い物を選ばせてもらう。将来的には辺境伯家の王都邸になるか、我が『伯爵』家の王都邸になるかはわからないけれど。
私は広い芝生に寝転んで、ああ、もう少しきれいに刈り揃えて欲しいなと思いつつ、妹ちゃんが毎日森に出かける気持ちが少しわかるような気がした。草の上って気持ちいいね。
「良い物件なんでしょうねハニー」
「ええ、辺境伯家の御屋敷としても十分な格だと思いますわダーリン」
「辺境伯家は考えなくてもかまいませんよ。ニース商会として王都で活動するのに、十分であればよい……と父からはあなた方にお任せするように言いつけられておりますから」
うむ、母と義母は馬が合ったようで、王都の話もそれなりに弾んでいたみたいだし、かわりばんこにこの屋敷に訪れてもいいようにした方がいいだろうね。当主の部屋と夫人の部屋を私たちの分と別に用意しよう。
幸い、左右にシンメトリーな館なので、対称に二組作らせればいいかな。それと、別棟の客用の別館は、長期滞在用に先代様夫婦とその妹夫婦が生活できるように整えなきゃだね。上級貴族用の城館だからできることだな。
今の子爵家だと、二組以上の宿泊は無理なので、王都の貴族用の宿に泊って頂くしかないもんね。使用人が多い人とか、収まらないしねうちじゃ。そう考えると、下級貴族と上級貴族では家の構えから使用人の人数、全て違う。護衛に自前の騎士団とかあるしね。
お金……ニース辺境伯家持ちで良いのかな? いいんだよね。いやいや、子爵家は貧乏だから無理だからね。改修とか見合った家具とか、使用人を雇うとか……最低限にしても無理だから。
「あなたの好きなように改修して構わないんですよ。勿論、私……の実家で費用は持ちますから。それに、別館は祖父母がこちらに来た際に整える事になっていますから、とりあえずの家具を入れて生活できるようにしておけば間違いないですよ」
私たちの生活用品と、別館の生活用品だけ一通り揃えて、細かい物はおいおい揃えて行きましょうという事になりそうだね。家具だって、良いものを頼めば、数年待ちなんてことはおかしくないから、ニースから持ち込んだり、私の使っている家具を移したりすることになりそう。
でもさ、私の家の家具ってかなり庶民派だけどこの屋敷に合わない気がするんだけど……まあしょうがないか。
「婚約から式をあげるまで二年位ありますから、徐々に整えて行きましょう。それに、商会の立上げも進めて行きますから。二人で、作り上げて行けば楽しみではありませんかハニー?」
なんだか、一緒に頑張ろう的な事を言われ、あまり経験のない事だからちょっとポカンとしちゃったけど、たぶんこれは、ニース辺境伯家の考え方なんだと思う。一人ではなく、みんなで協力して一つのことを成し遂げるというのは、元公国の統治者のような家は当たり前のことなんだろうね。
そう考えると、三男坊も良い男なのかもしれない。
でもね、ギャランドゥなのはあまり好きではないので、指の毛は手袋するか脱毛するかして欲しいと思う。胸毛は……服着ていればOK!!
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『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/
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