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第01話 プロローグ

 GW期間中続けて投稿いたします。よろしければお付き合いください。

 初めましての方は初めまして、そうでない方はご機嫌よう。


 私の名前は『アイネ』。家名を名乗るほどのものではありませんが、とある王国の子爵家の長女で年齢は十六歳です。


 私には三歳年下の妹がいる。仲は良いか悪いかは微妙だね。


 それは、私は妹ちゃんが生まれてくる前から大好きで、未だその愛は積み重なり続けているのだけれど、妹ちゃんは最近とてもそっけない。冷たいまである。


 そもそもだよ、私は最初は『姉』ではなく、妹ちゃんが生まれてきて初めて『姉』となったわけで、言うなれば、妹ちゃんに姉にされたわけじゃない? 責任とってもっと私のことを好きになっても良いと思う。


 え、そりゃ、ちょっと可愛がり過ぎたかもしれないよ。うん、だって可愛いじゃない? 確か、猫って可愛がり過ぎると良くないらしいね。まあ、うちの妹ちゃんはまるでおとぎ話に出てくるスノー・ホワイトのような見た目だからね。中身も私にだけ冷たいところがスノーホワイトなんだけれど。何故だろう。





 そんな妹ちゃんは、最近よく一人でお出かけしている。子爵の家なんて使用人は少ないし、成人した私や母が外出する時には従者が付くけれど、子供の妹ちゃんにはそんな気の利いたものはついて行かない。


 父に心配に思い話をすると「薬師の勉強をしているから」と告げられる。


――― 何それ、聞いてないんですけど!!


 それ以前に、祖母の家に勉強を教わりに出かけていることがあったし、今でもそれは続いている。祖母と言っても先代御当主様で、父の実母の上、若い頃には先代の王大后様のお気に入りの女官だか侍女であったとかで、父よりも王宮に顔が利く。


 そんなすんばらしいお婆様なのだが、とても厳しく冗談が通じない。私も子供の頃に勉強を教わったのだが、基本的な読み書きと計算、古代語の習得が終わった時点でご辞退申し上げたのだよ。だって、マジで怖いんだよ。父が一切頭が上がらないどころか、国王陛下も同じだというのだから、そりゃ私如きが何を言えるのかという事なんだけどね。


 でも、そんなお婆様を妹ちゃんはとても尊敬しているし、お婆様も妹ちゃんは実の息子よりも溺愛している。主に愛の鞭方面な気もするけれど。


 子爵家は血統優先で長子相続が当たり前なので、私が次期当主なのは確定で、妹ちゃんは王都のいい所の嫁に行く事になっているんだけれど、爵位は低いが王都ではそれなりに名の知れた家なので、嫁ぎ先には困っていないはず。


 むしろ困っているのは私だよ!! 婿で、ある程度家格のある家は王都住で子爵の配偶者になりたいという男はそうそういない。出来れば侯爵か辺境伯家の次男か三男で王都に関わりのない地方の出身が良いんだよね。


 でも、王都に社交で現れるのは王都近郊の貴族の子弟だから、出会いがない。全然ない。とても困っている。


 そんなことより妹ちゃんだね。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「では、行って参ります」

「気を付けてねー」

「……」


 妹ちゃんが私と母のいるサロンに現れ、母に出かける挨拶をするのだが、私の挨拶には無視をする。この時の横顔が可愛らしい。


 猫に話しかけて無視された時のような感覚。猫っぽいよね妹ちゃん。


 私は母と刺繍をしていたのだけれど、用事があると言い部屋に戻ると使用人から借りた街で庶民の娘が着るような質素なワンピースに着替え、裏口から妹ちゃんの後を追いかける事にした。


 だって心配じゃない。可愛い妹が攫われたり、悪さされたらどうするのよ。因みに、妹ちゃんも地味な庶民着に着替えているんだけど、子爵家の紋章入りのマントを羽織っているので、「使用人のお使いか」と思われているようでちょっかいを掛けられそうにもない。


 子爵家は王都の管理をする家で、便宜を図ってもらえなくなると困る街の顔役の皆さんが遠巻きに安全を確保してくれているらしい。街の中では絡まれる事がないはずで、あったとしても必ず助けてもらえる……はず。


 そんな感じで、私は少し離れた距離を年齢的には小柄な妹ちゃんの長い黒髪をじっくりと堪能しながら、後を付けて行く。伸ばした髪が、太陽の光を反射して輪っかができている。天使の輪って言うんだよね。


 まあ、それが無くても妹ちゃんは天使なんだけれどさ。


 チラチラと妹ちゃんに視線が向けられ、あらまあ随分と可愛い娘さんがいるわね……なんて声が聞こえてくると、そうでしょう、もっと可愛いエピソード沢山あるから、聞いて欲しいんだけれど、ぐっと我慢しつけて行く。


 やがて王都の中央を流れる橋を渡り、川岸を歩き商業地区と下町地区の間にある冒険者ギルドに到着する。あれ、妹ちゃん冒険者になったのだろうか。


 中の様子をちょろちょろ見ていると逆に目立つので、依頼をする風を装い中に入り掲示板を覗くふりをしつつ、背後にいる妹ちゃんの気配を確認する。


 どうやら、買い取りカウンターで何か容器に入った物を渡しているようだ。んー そういえば、少し前に父に「錬金術の勉強をしたいので、蒸留器の簡単なものを揃えて欲しい」と言っていたことを思い出す。


 いつの間にか錬金術とかできるようになったんだろうと不思議だと思っていたんだよね。最初は確か薬師だったはずなんだよ。薬師ギルドにも登録しに行って……私が成人した後だったから保証人になったんだよね。えへん。


 でもさ、魔力がいるじゃない錬金術師って。薬師なら薬草と油なんかで練薬作れるけどさ、ポーションは魔力いるでしょう? お婆様も私も魔力はそれなりにあるし、魔術も使えるけれど、妹ちゃんは当主ではないので魔術師としての鍛錬は行ってないはずなんだよね。不思議だね。


 や、やっぱり、私の妹って天才だから、知らない間に魔力が使えるようになっていたんだろうか? 


 それはともかく、父には確認しておこう。だって心配じゃない。爆発したりしたら怖いし、困っていても絶対助けを呼ばないからね妹ちゃんは。変に意地っ張りなんだよね。原因は、子供のころ私が揶揄い過ぎたからなんだけど。


 だから、最近無視されちゃうのも仕方がないんだけどさ、余計に気になるじゃない? なんでも相談される姉妹に憧れるんだけど、うちの場合それは難しい。


 私は当主としての役割とそれに見合った教育を受けなければならないし、出来る仕事は今でも父を手伝っている。周りもそれに見合った扱いをするし、会う大人も社交の場での立場も「次期当主」として扱う。


 でも、妹ちゃんはそうじゃない。それにまだ未成年だし、社交の場と言っても子供同士の茶会程度にしか招かれない。出かけても、彼女は余り会話をしないし、表情も薄いから会話も弾まない。


 それに、あの子は同世代と比べても頭二つくらい抜けて大人の真似をするし、商取引の契約や法律の内容なんかに造詣が深いから、父と同年代の商人や法衣貴族のおじさんとの会話を楽しめたりする反面、同世代の女の子とは距離があるんだよね。


 可愛げがないと言えば可愛げがないけどさ、媚びを売るのは犬の仕事で、猫はやっぱり孤高な存在じゃないとね。可愛げがない所が可愛いと思えないのは、妹愛が足らない証拠だよ諸君。


 などと考えていると、職員とのやり取りが終わったようで、笑顔で挨拶を交わし妹ちゃんはギルドを出て行った。


 笑顔を向けられるギルド職員は羨まけしからん存在だ。私もギルド職員になれば、あの笑顔を向けて貰えるのであれば、今すぐ就職したいと思う。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 その後を追いかけて行くと、すぐそばの薬師ギルドに入っていく。さすがに、薬師ギルドは狭いし敷居が高いので外で観察する。


 薬師ギルドで何をするのだろうかと考えていると、妹ちゃんは大きな頭陀袋を抱えて出てきた。どうやら、ポーションの容器をここで購入する事になるらしい。


 確か、ギルドを通さないもぐりのポーションを締め出す為に、容器をギルドで買わないといけないルールになったと父が話していたことを思い出す。容器を売るだけで丸儲けとは、なんと素晴らしいビジネスモデルだろうと私も将来はそういう仕事をしようと考える。


 家の仕事として王都の管理をする役人と言う役職があるものの、何代も代を重ねて計画的に王都を構築して来ているので、私が朝から晩まで駆けずり回るような仕事はほとんど……いや全くない。


 出来れば、高位貴族の息子であったとしても、商人としての感覚を持っている男が婿に欲しい。貴族のプライドが服を着て歩いているような中身スカスカの男は我が子爵家に相応しくないからだ。


 土地から上がる年貢だけで体面が保てる時代はとうに終わっているのだから、貴族であったとしても、商人と付き合い、年貢以外の形で利益を上げる手段を持たなければ長く家名を保つ事などできないのだよ。


 私も妹ちゃんも、勿論当主である父もそれは理解しているし、何をすべきか娘二人に薫陶を施している。私は家業の他に社交を通じて、王都の利権に確実に食い込めるだけの人脈を育てる事。我が家だけでは利益を生み出す仕組みを作るのは無理だからね。


 妹ちゃんには、その役に立つ家に喰いこんで、当主を尻に敷く『女帝』のように振舞えるだけの力を身につける事が命題なのだよ。


 なので、私がちゃらちゃらフワフワして見えるのも、社交の為。妹ちゃんがしっかり者の面白みのない子になっているのも、まあほら、性格って部分がないわけじゃないけれど、ある程度その辺りの将来設計の問題があるんだね。


 でもさ、真面目で堅物な所が妹ちゃんのチャームポイントなんだよね。なんていうの、一周回ってツンデレからのデレ抜きって感じで、生まれたときから姉である私にしかわからない良さもあるのだよ。


 将来的には、姉妹で仲良く王都を牛耳れるようになるのが希望だね。結婚しても一緒に住んで、朝晩食事も共にしたいし。二人で社交に出るのも楽しみなんだよね。


 その為にも、妹ちゃんとの関係を改善しないとね。お姉ちゃん頑張っちゃうぞ!!



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【本作の元になるお話】


『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/

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本作の元になっている長編。
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

『妖精騎士の物語 』第四部の裏でアイネがプロデュースする修道女達の成り上がり。
没落令嬢どんとこい!~修道院に送られた四人の令嬢の物語~『聖エゼル奇譚』
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