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獲物その一 勇者 前編


 勇者エルドレッド・エルリーク。


 その名を聞くだけで、ワシの臓腑全てぶち撒けてしまいそうな程の吐き気を催す。同時にヴァルドス火山の燃えたぎるマグマのような怒りも。


 エルドレッド家は代々勇者の家系だ。中でも二十四代目勇者エルリークはエルドレッド家歴代最強の魔力を持ち、その剣技もアクトロス王国随一。

 その容姿は男装の麗人との噂も流れるほど容姿端麗、眉目秀麗。


 まるで非の打ちどころのないそんな男にワシ——魔王ガルヴァ・ガルマバーンは完膚なきまで叩きのめされ、我が城デスヘルデス城ごと封印された。


「魔王さま——」


 我が下僕ボーン・ザ・ボーンの声がする。

 “旋風の四本腕”スカルソルジャーの男、ボーン。ワシがつけた名前だが、少し安直すぎた気がしている。


「——ワシの眠りを妨げるとは、いい度胸をしているな。ワシの闇魔法で灰塵に……」

「魔王さま。魔王さまはもはや魔力を失っております」

「そうであった。すまぬ。ついクセで。しかしそんな食い気味で言わんでもよかろうに」


「——」

 ボーンは骨を揺らして笑っている。


「その笑い声を出さずに笑うクセなんとかならんのか? あとその全部の腕に剣持ってるの怖いからやめろと言っとろう。……というか今笑うところあった?」

「……魔力もないのに闇魔法とか」

「馬鹿にしとる?」


 そう。ワシの魔力はない。封印されるとき全てを剥奪された。


 こうして巨大な王座に肘なんて突いたりして偉そうに座っているが、ただのツノの生えた怖い顔のデカイおじさんだ。

 魔力のない魔族の王などもはや何者でもない。この濃緑色の肌が自分でも気持ち悪い。なんだこの色。


「で、なんの用だ」

「お休みのところ申し訳ありませんが、魔王さま——」


 寝ぼけ眼で気づかんかったが、よく見ればボーンの隣には頭に麻布を被らされた人間がいるではないか。


「本日の獲物はこちらになります」


 現れたその顔に、ワシは臓腑を全てぶち撒けた。


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