プロローグの裏側で2(side玲の父)
(玲の父)
玲が死んでからの記憶はあまりない。葬式をした以外は、毎日妻と二人で泣き続けている。
心なしか、玲が生きていたころよりも、家が暗くなった気がする。
そんな毎日だけれども、疲れはするから眠る。
「父さん!母さん!」
あれ、玲の声がする。って、
「玲!!」
目の前には玲がいた。こんなに精巧な夢があるはずがない。じゃあ、玲が死んだほうが夢だったのか…?
「玲、会いたかった。突然別れるなんて信じられなかった。こうして、抱きしめあえるってことはあれは悪い夢だったんだよな。やっぱりそうだったよな。」
「ううん、僕は死んだんだ。そして、さっきまで、神様と話をしてたんだ。そこでね、いろいろあって、二つ僕の願いを聞いてくれることになったの。そのうちの一つとして、家族と話したいってお願いしたの。そしたら、父さんたちの夢の中で1時間だけっていう約束で、認めてくれたの。だから、1時間だけだけど、別れを言いに来たの。」
玲の話は信じられなかった。いや、信じたくなかった。けれども、1時間という限られた時間。玲の記憶に私たちとの最後の時間が幸せだったと残ってほしいから泣き叫びたいのを必死で我慢した。納得がいってなさそうだった妻も説得した。
玲の体が弱かった理由を聞いたときは思わず、怒り狂いそうになったがこらえたぞ。
そして、いつの間にか、1時間が経ってしまった。
玲の別れの言葉を聞いて、俺は、我慢できなくなってしまい、玲と妻を、強く強く抱きしめた。
そして、激しい光とともに、俺の目が覚めた。
「「今のは、夢だったの」か?」
思わず漏れたつぶやきが重なったのを聞いて、俺たちは笑い出してしまった。
「玲が未来に向かって歩き出していることを知った。ならば、親である、俺らがここで立ち止まっているなんてできないよな。」
こうして、俺たち夫婦は、悲しみは消えぬものの、未来へと再び歩み出した。
もし、また、玲と会えた時に誇れる人生を歩めるように。