新たな物語の始まり3
「では、まずは君の両親との話だな。準備はいいな。それ、!!!!」
そういって、神様は、自身の持つ杖を大きく振った。すると、神様が現れた時と同じような光がまた起きた。
しばらくして、僕は目を開けた。すると、僕は、病院の庭のようなところにいて、目の前にはもう会えないと思っていた母さんと父さんが立っていた。
「父さん!母さん!」 「「玲!!」」
僕は父さんたちと抱き合った。そのまま動けなかった。しばらくして離れると、父さんと母さんは僕の目を見た。二人は、僕が生きていると思いたがっているようにみえた。
「玲、会いたかった。突然別れるなんて信じられなかった。こうして、抱きしめあえるってことはあれは悪い夢だったんだよな。やっぱりそうだったよな。」
父さんは僕に早口にこういった。僕だって、まだ、生きてないなんて信じられない。けど、時間は1時間しかない。
「ううん、僕は死んだんだ。そして、さっきまで、神様と話をしてたんだ。そこでね、いろいろあって、二つ僕の願いを聞いてくれることになったの。そのうちの一つとして、家族と話したいってお願いしたの。そしたら、父さんたちの夢の中で1時間だけっていう約束で、認めてくれたの。だから、1時間だけだけど、別れを言いに来たの。」
「「そんな…。」」
やっぱり父さんたちは認められないみたい。
「でもね、もう一つの願いとして、僕の夢をかなえられるかもしれないんだ。だから、悲しまないで、前を向いて。お願い。」
「わかった。」
「そんな、あなた。」
「仕方ないだろう。死は誰にでも訪れるんだ。それに、1時間しかないんだぞ。玲の記憶に私たちとの最後の時間が幸せで、有意義なものであったと残ってほしいんだ。」
「………そう、ね。ごめんね、玲。こんな情けないお母さんで。」
そこから、1時間という期限が来るまで、僕たち家族はみっちりと話し合った。僕の夢や、来世、僕の体が弱かった理由も含めて。そして、僕が父さんたちに、どんなに感謝しても足りないって思っていることも。
そして、いつの間にか、1時間が過ぎようとしていた。
「玲君、そろそろ最後の別れを。」
そんな神様の声が、僕の頭に聞こえた。
だから、僕は、父さんたちに、
「今まで、僕を産んで、育ててくれてありがとう。そろそろ時間みたいだ。」
そう伝えた。そして、最後に、僕たちは固く抱き合った。
これが、永遠の別れだなんて信じたくなかった。このままずっと一緒にいたかった。
けれども、期限は来てしまった。
再会した時と同じ激しい光があたりを包み込んだ。
そして、僕は、神様の元に戻ってきた。
「玲君、大丈夫?」
なんでそんなことを言われるんだろう。
「目、真っ赤だよ。」
僕は言われるまで気づいていなかった。それくらい、とても悲しかった。でも、こういうことにした。
「大丈夫です。神様のおかげで、最後に家族に会えたんですから。」
僕は、死んだ。だから、前に進まなくてはいけない。
「そっか。じゃあ、せかすようで悪いんだけど、君の来世にについての願いを三つ言ってくれるかな。」
「はい。でも、その前に、僕の来世の世界がどんなところなのかもう少し詳しく教えてくれませんか?」
事前情報なしで、願いを言って、役に立たなかったら意味がないしね。
「もちろんだよ。君の行く世界は、地球でいうと、中世風の世界だ。地域によっては、古代中国のような文化を持った地域もあるけれど、基本的には王政の国が多い。あと、君の夢である、「国のために生きる」というのが、想像の通り、政治にかかわることでいいなら、国によるけど、貴族であることが最低条件かな。ただ、例外として、一国だけ、平民から官吏になることができる国もある。その国では、厳しい試験を受かることで官吏になれる制度を国王が作ったみたいだけど、貴族の反発が強くて、受かった平民もあまり活躍できてないみたいだけどね。あと、世界全体として、騎士は存在するけど、魔法は存在しない。奴隷制度が全ての国にある。そんな感じかな。」
「ありがとうございます。それと、さっきの話からだと、生まれる環境を選ぶことはできないんですよね?ランダムで世界が決めるみたいなことを言ってたし。」
「うん。すまないが、三つの願いでかなえられるのは、君の魂に刻める素質と体質だけなんだよ。」
「いいえ、それでも十分すぎますよ。では、僕の望む願いは「体に全く負担をかけずに、見たものを全て記憶して忘れないけど、忘れたいと思ったものだけは忘れられる力」「丈夫な体」「今持っている記憶を持ったままの生まれ変わり」です。」
「えーっと、二つ目の「丈夫な体」というのはわかる。一つ目の願いはいわゆるカメラアイのいいとこどりかな?」
「はい、そうです。僕の夢をかなえるために役に立ちそうな能力がそれくらいしか思い浮かばなくって…。やっぱり、駄目ですか?」
「いや、問題はないよ。それと、三つ目は?」
「父さんと母さんのことを忘れたくないんです。お願いします!!」
渋い顔をする神様に、僕は慌ててしてしまう。
「わかったよ。」
しばらくして、神様の声が聞こえて、僕は安心してしまった。
「ありがとうございます。これで、神様のことも忘れずに済みますね!」
すると、神様の顔が一瞬赤くなったような気がした。気のせいだろうか…?
「……っほら、そろそろ、旅立ちの時間だよ。」
どうやら、僕が次の世界に旅立つ時が来たらしい。
神様が、杖を振る。すると、真っ白い、向こう側が光って見えない門が現れた。
「玲君、この門をくぐれば、もう生まれ変わりだ。行きなさい。」
「はい!短い間でしたけどありがとうございました、神様。今度の人生は長生きして、夢をかなえたいと思います。」
「あたりまえだよ。この我が、失態の結果とはいえ、一人の人間にこんなに話すことなんてそうそうないんだからな..........。まったく、夢をかなえるんだよ、玲君!!」
そんな、照れ隠しのような神様の激励を受けながら、僕は恐る恐る門に足を踏み入れた。
その瞬間、激しい光が起き、僕は、意識を失った。