新たな物語の始まり2
「待たせた上に、驚かせてすまんな。玲君」
おじいさんはそう僕に言ってきた。
「おじいさんは誰?それになんで僕の名前を知ってるの?後、ここはどこなの?おじいさんが連れてきたの?病院に、家族のところに返してよ!!!.........」
こんな状況なのだ、僕の考えは尽きない。
「混乱するのはわかるが、少し落ち着いてくれるとうれしいぞ。」
「こんな状況で、落ち着けというほうがどうかしてるよ!!!」
「まあまあ、とりあえずは自己紹介からかの。我は、君たちの世界では、神と呼ばれている存在に近い。正確には神と言い切ることは難しいが。まあ、神という認識をしておけば問題ないだろう。あと、君の名前を知っているのは、神だからだとでも思っておいてくれ。そして、ここは、わしら神の間で「魂の揺り籠」と呼ばれる場所だ。ここには…」
魂の揺り籠...?って何だろう。
「ああ、すまん。魂の揺り籠というのは、世界に生きるあまたの生き物たちが持っている総ての魂が、死後、新たな生を迎える前に一度休む場所のことだよ。私は、ここで「魂が持つ記憶を、生まれ変わる前に消して、新たな生へ送り出す」仕事をしている神の一柱だ。普段は話しかけないんだがな。」
「え、僕の考えてることをよんだの?それに、死後って…」
僕は思わず青ざめる。
「うむ。神だからの、心をよむことができる。あまりやらんがな。そして、玲君は血を吐いた後、意識を失ってそのまま死んでしまった。言うのが遅れてすまんかったな……。」
「……いえ、体の弱い僕は長くは生きられないことは分かってましたから。でも、こんなに早く、家族にも友達にも、最後に会えないまま死んでしまっただなんて…………ぐすっ………っつ………」
僕は思わず泣き出してしまった。
「お見苦しいところをお見せしてしまいすみませんでした。」
神様の前にいるんだ。しっかりしなくては。そんな思いがよぎり、僕は立ち直った。僕の母さんと父さんは、僕が丈夫になるようにいつも神様に祈ってくれてた。そのおかげなのか、本当は物心つく前に、余命一年って宣告されてたらしいのに、小学校に入れる年齢にまでなった。だから、両親はいつも「神様への感謝を胸に生きて。」って僕に言ってたから。
「うっ……。涙が止まらん。」
ありゃ、神様泣いてた。
どうやら、僕の思いにつられて泣いてしまったらしい。
「玲君はいい子だの~。自分がこんなにもつらい思いをしてるのにわしらへの感謝を抱いて生きているとは…くっ………うっ、また涙が………止まらん。うっ………。」
「確かに、唐突な別れは、つらいです。でも、世の中には、この程度の人いくらでもいるでしょう?僕は家族も友達もいて、愛されてた。幸せな人生でしたよ。それよりも、さっき、普段は話しかけないと言ってましたよね?なんで僕には話しかけたんですか?」
そう、さっきから、このことがずっと気になってたんだ。
「ああ、君に、興味があってちょくちょく君の姿をここから覗かせてもらってたんだよ。はじめは、信仰心の薄れた現代の日本にしては、神への感情が君たち家族は強くってな、興味を持ったんだ。けれども、次第に、君の病弱さに興味を抱いてね。本来なら、生きてけないほどだったんだよ、君の体の弱さは。だからずっと、君がこの揺り籠に来てしまった時は少し君の魂を調べさせてもらおうと思ってたのさ。」
「なんで、魂を調べるのですか?」
「いい質問だね。魂には、その生命の持つ、素質とかが総て記されているんだよ。本来は、無垢な魂として揺り籠から送り出され、世界が極端な魂が出ない程度にランダムに素質とかを全て決めるんだ。けれども、時々、我々側の失態で無垢な魂にしきれないことがあるんだよ。そんな魂は極端な才能や、体質を持った者になるんだ。まあ、たまに、わざと無垢に戻さないこともあるんだけどね。そんなシステムだから、君の病弱さも我らの失態なのではないかと考えたのよ……。君が気付く前に調べさせてもらったよ………そしたら、やはり失態だった。君の病弱さは、君の魂が送り出されるときに、生まれたばかりの力が弱い疫病神が取り付いていたせいだったんだ。かわいそうな人生にしてしまった。本当に申し訳ない。謝っても許されないことだとわかっている。」
そう言って、神様は、僕に頭を下げた。
「そんな、頭を上げてください。それに、さっきも言いましたが、僕は幸せでした。かわいそうな人生だったなんて、勝手に決めつけないでください。」
そう。僕にとっては、幸せだった。心残りといえば、家族には何の恩も返せてないことと、「ビスマルク」みたいな国のために生きる人生を送ってみたいという現代の日本には似つかない夢だけ。
「だったら、その思いを次の人生で、かなえてみないかね?」
「………っえ? どういうこと?」
「実はね、我らの犯した失態は、もちろん本来あってはいけないことなのだけれども、さらに、疫病神とはいえ、神がとりついたことに気づかないというのは過去最大の失態なんだよ。これが分かってから君が目覚めるまでに、急遽ほかの神達と会議をしてね。君へのわびとして、この事実を伝える前に、君がこの揺り籠で最初に願ったことを二つかなえるということになったのだよ。つまり、家族へ恩を返せて、国のために生きる人生を送ることもできなくはない世界への転生ができるということなのだ。ただし、これは、望むならだ。どうかな?」
「ありがとう。神様。もちろん望む。ただ、恩を返すんじゃなくて、両親と話をしたい。」
僕がそう言うと、神様は厳しい顔をした。やっぱり無理なんだろうか…。
「一時間だけそれが限界だ。すまないが、夢については、我々、魂の揺り籠に関わる神の管轄外なんだ。それ故に、そこが限界になってしまう。代わりに、転生時に君の望む能力を三つつけさせてもらうよ。」
「本当に、ありがとう。でも、代わりなんていいのに…」
「これは、我の神としてのプライドの問題だ。失態の上に、ごまかしなんてできるわけがない。渡すと決めたから、受け取ってくれないか。」
「う、うん。ありがとう。」
「では、まずは君の両親との話だな。準備はいいな。それ!!!!」
そういって、神様は、自身の持つ杖を大きく振った。すると、神様が現れた時と同じような光がまた起きた。