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9話 チェンジ

【嘘じゃ!そんな都合の良い話がある訳ないじゃろ!】


【ふっふっふ!やって見せれば納得せざるを得ないよね!】


どうやら自信ありげな様子のレイアは、一時的に精神感応を切って精神を現実に向ける。


「じゃあ、見ててね~」


レイアの身体が発光し、どんどん縮んでいく。光が収まると、豚の姿になったレイアが居た。

縮んだ際に衣服が脱げてしまったため、キリン柄のパンツが地面に落ちる。


「なんだ、やはり動物柄じゃないか。酒場で見栄を張っていたようだが、下らない嘘を吐くな」


「ぶひぃ!」


しまった!と言いたいようだが今は豚と化したレイアだ。

何を言おうとブヒブヒとしか言えない。


「マジかよ・・・レイア、お前実は豚だったんだな・・・」


「バカを言うなルシエル・・・こんなクソ強い豚が居てたまるか、一匹で国を滅ぼせる豚など勘弁してくれ」


「ぶふぃ!ふぃぃ!!」


もう!豚じゃないってばー!と言いたいらしいが、豚に人語は話せない。

早速煩わしさを感じたレイアは変身を解除する。


再び豚となっているレイアの身体が発光し、元のレイアの姿に戻る。

いそいそと例の下着やら衣類やらを身に着けているが、マリアのレイアを見る目がやたら冷たい。

その視線に気付いたレイアは「ふひゅ~ふひゅ~」と吹けない口笛を吹くフリをしている。

一方、レイアの変化を見たシオンは口をあんぐり開けている。


「どう?シオン、これをあなたにもやってもらうの。私は豚さんなら食べたことあるから、こうやって何となくイメージで変身出来るんだけど・・・」


そこまで言うと再び精神感応し続きを話すレイア。


【あなたも今まで食べちゃったヒト族の個体の中からイメージを作って、その姿に変身出来ると思うの!これが出来れば、ヒト族として戸籍も手に入るし、フレアドラゴンの身バレもしなくて済むよね!もちろん街中に入って普通に生活する事だって出来ちゃう】


【おほぉぉぉ!それはいい案なのじゃ!】


嬉しそうにするシオンの隣で「うげー」と言う感覚を隠そうともしないルシエル。


【ちょっと待て、それだと本当に常にシオンが付き纏うことになるなるだろ・・・私のプライベートはどこ行った】


【あー・・・ごめんごめん、形態変化って変身中は常に魔力使ってる状態だから、普通はそんな長持ちしないの。そうだね、シオンの総魔力量でヒト化だと、多分持って一日とかだと思うよ?だから、基本的にはフレアドラゴンの身体で居てもらって、どうしてもルシエルが街中に用がある時だけ変身する感じで使うことになると思うよ?】


ほっと胸を撫で下ろすルシエル。自由こそがルシエルの全て、四六時中シオンに付き纏われてはたまったものではない。

そんな事を考えているルシエルに対しマリアが言う。


【ルシエル、私は今日言ったな。お前がコントロールし、お前が餌をやり、お前が死ぬまで面倒見ろ。と、それは変わらんぞ】


【うッせ!わかってんだよ!んなこた】


【大丈夫だよルシエル、マリア、この子すごく賢いから。多分生活の知恵だけ身に付けさせてあげれば、迷惑かけずに一人でも生きて行けるようになるよ!】


【一流ブリーダーのお墨付きだ。良かったな、ルシエル】


とてつもなく面倒くさいペットが、少しだけ面倒くさいペットに変わっただけである。

ルシエルは「うげぇー」と思いながらも、懐かれてしまったものは仕方ないか、と諦め半分で納得するのであった。


【じゃあ、そろそろヒト化してみようか?シオン】


【おおっ!わらわ、やり方全くわからんのじゃが!】


【そうだよね、多分マリアもルシエルもわからないと思う】


【知らんな】


【知らねェよ】


【ついでに二人も覚えてみる?食べたことあるものにしか多分なれないけど・・・】


【用途がないな】


【バーカ、なんで私より雑魚い生き物に敢えてなる必要があるんだよ】


【そ、そうだよね~、私も初めて今の変身したし・・・じゃあ興味があったら聞いてて。まずは、シオンの中のヒト族をイメージしてみて?】


豚に化けたのが初変身だったらしい。戻れなかったときの事を考えていたのだろうか。


【わらわの中でヒト族と言えばこれなのじゃ!】


【うんうん、それでいいよ!そのイメージを持ったまま、自分の身体を思ったサイズ感まで小さく縮めていく感じ、わかるかなぁ?】


【むむむ・・・小さく、小さく・・・】


シオンがイメージを固めると、シオンの身体が光と共に小さくなっていく。

身長170cmくらいまで小さくなると、発光が収まり、一糸纏わぬ裸体の男性が姿を現した。

フレアドラゴンは元々衣類など着用していないので、先ほどのレイアの豚変身を思えば当然だろう。

なお、大事なところには山岳地帯特有の謎の煙や、角度によっては山岳地帯特有の光線が入っている。


ぶふぉっ!と噴出すレイアとルシエル。マリアは真顔で上から下までくまなく観察している。


「な、なんでこの流れで男のヒトになって来るのかなぁ!?」


目を背けてはいるが、どうしても気になってしまうシオンの下半身に、レイアの視線がちらちらと動く。ムッツリめ。


逆に正面切ってガン見するマリア。


「シオン、今夜は私のところに来い。ヒト族の生活の基本は私が一晩かけて叩き込んでやるから覚悟するといい」


マリアの言う生活の基本とはなんなのだろうか。


そしてシオンの存在が一番の影響を及ぼすルシエルはと言うと、固まっていた。

男嫌いが高じて粗暴な性格になってからと言うもの、男性との接触を性的な意味で避け続け、そうした意識で男性を見ることなく生活してきた野生児。

その野生児の目の前に、純然たる野生の象徴であり生命の息吹を放出する性なる剣が露に。


【おおっ!これがヒト化と言うものじゃな!わらわ、初めての試みにしては上手くできたと思うのじゃが、どうじゃろうか?】


ヒト化したため喋れるはずだが、言葉を発するのに慣れないせいか思念で会話をするシオン。

それにしても再現度が高い。今まで食してきた屈強な兵士達の平均値を見事なまでに再現している。


「素晴らしいぞシオン。お前、もう私のモノになるといい。そこで固まってしまっている情けない主様から乗り換えて、私と共に暮らすべきだ、それがいい。そうしよう」


勝手に話を進めるマリア。全ての兵士の中間に位置する今のシオンの肉体は、ゴリゴリのアックスレイダーから、身軽だが筋肉質なシーフの肉体の真ん中くらいの肉感で程よく鍛え上げられていると言った印象だ。

いわゆるパーフェクトボディ。毎晩この身体で癒しを得られるなら、と考えるマリア。いつも仏頂面のその表情筋が緩みに緩んでいる。


「そ・・・その、すごく上手に出来てるとは思うんだけどね、えーっと・・・あの、さ、再現性が高すぎて直視出来ないと言うか・・・あわわわ」


幾つかあるレイアのポンコツ行動のうちのひとつが出てきた。イケメンに弱い。しかも全裸のオマケ付き。


「ま、前は隠したほうがいいとおもうの!きっと、すごーく立派なモノをお持ちだと思うんだけどね!?そこはほら、わ、私たち女の子だしぃ・・・?」


と言いつつ、その「すごーく立派」と評するモノをチラッチラッと何度見しているかわからないくらい視線を泳がせるレイア。

そうこうしている内に、硬直の状態異常が解けたルシエル。

死んだ魚のような目をしたルシエルはただ一言、言い放つ。


「・・・チェンジ」


「「へ?」」


意味がわからない。それこそフレアドラゴンからチェンジしたばかりだと言うのに。何を言っているんだこの子は?と怪訝な表情で見つめ合うレイアとマリア。

シオンはただ憮然とした表情で腕組みし、その場に立つ。もちろん腕組み中なので野生の象徴は丸出しだ。

何かのタガが外れたのか、プルプルと震えだすルシエル。そして・・・


「チェーーーーーンジ!!!!チェンジチェンジチェンジチェンジチェンジ!!!!!チェンジっつったらチェンジィィィィィィ!!!!チェンジチェンジチェンジ!!!!!!チェーーーーーーーーーーンジだぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」


ついに爆発したルシエルは壊れたおもちゃの様にチェンジを連呼。


【あ、主様?わらわの姿がお気に召されなかったじゃろうか?】


人生でこんなにチェンジを連呼した経験がないルシエルは、繰り返した絶叫の末にやや過呼吸状態。ゼェハァと息を切らしながらシオンに答える。


「ハァ・・・ハァ・・・シオン・・・その姿にしかなれないなら、私はお前を飼えねェ・・・」

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