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7話 シオン~ざ・ぐれいてすと・どらごん☆~2

【わらわは・・・のじゃ~】


レイアの意識の表面に、思念波を送り込むことに成功したシオン。

しかし、慣れの問題があるのか、言葉の始まりと終わり以外が上手く聞こえなかったのでもう一回とお願いすることにしたレイア。


【ごめんね、途中なんて言ってたか聞こえなかったの、もう一度聞かせてもらえるかなぁ?】


まるで赤ちゃんにでも語り掛けるように優しい思念を送るレイア。

するとそれに呼応するかのようにシオンが感応する。


【わらわは齢500歳のフレアドラゴンなのじゃ~!エルフの小娘が、まるで赤子をあやす様な語り口はやめるのじゃ!!そもそも何じゃ、お主ら!わらわの威容に恐れをなして平伏す素振りもなくぅ~・・・!わらわ、これでも1000の同胞を喰らって進化した最上位種なのじゃぞ!?それがなんじゃ!わらわ、この中で最弱ではないか??お主ら頭おかしいんじゃないのかえ?なんなのじゃ!主様と言い、この思念波を送りつけてくるお主と言い・・・主様の隣のダークエルフも何なのじゃ!あ奴からはかなり禍々しいオーラを感じるぞえ???何か死霊や悪辣な魔道の生き物の存在をひしひしと内から感じてわらわ怖いわ!お主らまとめて皆怖いのじゃぁぁぁ~!!】


哀れ、レイアの優しい思念波での気遣いも、一笑に伏すかのようなシオンの魂の叫びが、レイアの意識を串刺しにした。


【ちょ・・・人聞き悪いこと言わないでよね!ルシエルとマリアはともかく、私はこの中じゃあ一番優しいって自負してるもん!】


心外だ、特にルシエルは傍若無人な言動に加え、シオンは実際に戦い敗れているわけなので恐れられても仕方ない。

マリアはあれでダークナイトとして数多の敵勢力を屠って来た歴戦の戦士だ。男の前以外では仏頂面で、謎の威圧感もあるし、これも怖がられても仕方がない。

しかし、私は牧場でのんびり平穏に、馬達と戯れながら暮らす、穏やかで清楚かつ淑やかなエルフである、と。

粗暴なチンピラエルフでも、色魔のエロエルフでもないのだ、そう主張したいレイア。しかし・・・


【なにを言い出すかと思えば、わらわにはお見通しじゃぞ!この猫かぶりめが!お主から発せられる思念波にはの、ちょいちょいわらわの精神を支配せぬように・・・と言った謎の気遣いが込められておるわ!裏を返せばじゃ!即ちそれは、わらわなど本気を出せば物言わぬ傀儡人形、もとい傀儡フレアドラゴンに仕立て上げられると言う何よりの証拠じゃろうて!はぁ~~!恐ろしいエルフじゃ!一番頭おかしいのはお主なのじゃ!自覚がないとは言わせぬぞ!?ふふん、もしやお主、わらわを飼いならし騎竜に仕立て上げようとしておるのじゃろ?わらわ成りは小さいがカッコイイし、火竜種最高戦力じゃしぃ?んん~・・・まぁ気持ちはわかるが諦めるが良い!なぜならば、わらわの心は主様に屈服された時より主様のもの!お主が幾ら強力な洗脳スキルを施し、精神と肉体を支配されても、真の心は主様のものなんだからね!なのじゃ!!】


先ほどにも増して凄まじい勢いでレイアに思念の嵐をぶつけるシオン。

これにはさすがのレイアも困り果て、一度緊急エルフ会議inシオンを行うことにした。


シオンと感応しているチャンネルにルシエルとマリアを招き入れる。


【ちょっと!二人とも、助けてぇぇ!】


そして招き入れるなり早速二人に泣きつくレイア。


【ふえぇぇん!私、そんなつもりないのにぃ・・・ぐすっ・・・人のもの盗ろうとなんてしないのにぃ!】


【ん?珍しいじゃねェか、レイアが複数チャンネル開くなんて】


【本当だな、頭ぐちゃぐちゃになるから個人としか精神感応したくないと言っているのに】


【今回は特別なの!ちょっとルシエル!この子に言葉の概念伝えたから何とかして!飼い主として!】


ルシエルの思念を感じ取ったシオンが興奮気味にルシエルに話しかける。


【おぉ~!主様!わらわ!シオンなのじゃ!】


【あァ?お前シオンか?なんだその口調?あと主様とかやめろ】


【主様は主様なのじゃ、わらわ、今日この日、主様に命を見逃して頂いた時より運命を感じておりますのじゃ・・・わらわは主様と出会うために1000の同胞を喰い散らかし、遭遇するヒト族どもを餌にして、この500年を生きてきたものと心得たのですじゃ!あのうさぎ肉の香りは天より賜りし、わらわと主様を繋いだ宿命の香り!あのうさぎ肉も主様の血肉として天命を全うし、大変満足しておることでしょうぞ!加えてシオンと言う大変煌びやかな名前を授けてくれましたこと、誇りに思っておりますのじゃ!】


【なんというか、癖が強いな】


【そうなんだよぉ~!私、困っちゃって・・・】


【とりあえずお前、話がなげェ】


【ハッ・・・主様への溢れる思いがつい・・・】


強烈な自己主張で溢れる思いがダダ漏れのシオン。溢れ返って脳内がびしょ濡れである。

ところで、とマリアが鋭い思念波をシオンに送る。


【貴様、「遭遇するヒト族を餌にした」と言い放ったな?】


しまった!とぎょっとするシオン。


【あ、あああれはわらわが安息の地を探して行く先々で愚かなるヒト族どもがじゃな!寄ってたかってわらわを取り囲み鱗を採取しようとしたり、この赫灼の如く煌めく自慢の尻尾を執拗に狙い切り落とそうと・・・】


ヒト族サイドは軍を率いて討伐しようと総力を挙げ決死の覚悟で兵をブチ当てた戦闘行為なのだが、シオンサイドから見るとまるで自分から素材採取でもしようとしているかのように感じていたらしい。


【わらわも安心して暮らしたいのじゃ、わらわフレアドラゴンになるのに産まれてこの方、闘争を繰り返しておった。進化の暁には穏やかに暮らしたかったのじゃが、何故か環境の良い土地にはヒト族が蔓延っておる。わらわの鱗を取りに来た連中は運が悪かったというか、生き残りがおるとわらわの存在がバレてしまうじゃろ?穏やかにひっそりと暮らすためにはあのヒト族どもには消えてもらうしかなかったのじゃ!それに、せっかくの新鮮な肉が勿体無いしのぅ・・・故に奴らにはわらわの血肉となることを許したのじゃ。あ奴ら基本不味いが】


飛来するなり、いきなり襲い掛かってきたヒト族が悪い、殺めた命を腐らせるだけは勿体無いから不味いけど食したのだ、と主張するシオン。

エルフの感性とドラゴンの感性に隔たりがあるのは仕方なく、育って来た環境が違うから好き嫌いは否めないのだ。


シオンの主張も一理あるとは思いつつも、エルフ的な感性では納得しがたい部分も多々ある。

しかし、戦争が始まれば襲い来る敵兵として、ヒト族同士で殺しあうヒト族の業の深さを考えれば、平穏を脅かす存在を排除しようと言う考えは当然か、と理解は出来るマリアとレイア。

ルシエルだけは「んなこたどーでもいい」と無関心であるが。


そして、ひとつ重要なことがわかった。このフレアドラゴンは、ただただ平穏に暮らしたいだけなのだ。

本人が言うとおり、闘争に疲れ安住の地を探して彷徨っているところである。

今回はルシエルを襲ったわけではなく、うさぎ肉の良い匂いに誘われて、罠かも・・・と警戒しつつ接近しているとルシエルに狙撃された格好だ。

つまり、仕掛けたのはルシエルの方であり、言うなればこの騒動の被害者はシオンの方なのだ。


【まぁ、貴様の主張は理解できなくもないのだが・・・貴様はこれからどうするのだ?】


【はて?どうするも何も、わらわはもう主様の傍で生涯お仕えすると決めたのじゃ!】


【はァ?勝手に決めんな!刺身にすんぞ】


【あふぅ・・・主様のイケズ!】


どうやらシオンは、今まで同種争いで暴虐の限りを尽くして来てはいたが、圧倒的強者に出会ったことが無く、ぞんざいな扱いを受けてきた経験もない。

崇めよ、称えよで生きてきた故にはじめてのこのテキトーな扱いに新しい感情の扉が開いてしまったようだ。


【ゲッ!デカいトカゲみたいな生き物がそういうの止めろ気持わりィ!それにお前メスだろ・・・】


「極度の男嫌いだからオスでもダメだろ」と思念の底で突っ込むレイアとマリア。

ふむ、とシオンが何か得心する。


【主様、わらわ一応進化の行き着く先であるが故、生殖と言う行為を必要とせぬ。と言うか出来ぬのじゃ。故にわらわに性の別は無く、主様達で言うところのオスであるともメスであるとも言えるのじゃ。つまり、何が言いたいかと言うと・・・わらわはどちらにも属さぬ、故に気味悪がられる道理などないと言う事なのじゃ~~~】


ルンルンで解説の上、思念波上ではあるがルシエルに擦り寄ろうとするシオン。

デカいトカゲについては敢えて触れない。触れたら負けらしい。


【止めろ!その思念波ぶつけてくんな!ぶっ殺すぞ!!】


【ああっ!甘美なのじゃぁぁぁ~~】


恍惚の思念波をルシエルに飛ばし続けるシオン。

同じ回線上でそのやりとりを見ているレイアとマリアはドン引きである。

思念波の世界でぐおぐおゲゲゲする二人。これ以上見るに耐えない、とマリアが二人の間に割って入る。


【シオン、お前がどうしたいかは大体わかった。とりあえず、ヒト側から攻めて来ない限り、お前はヒト族に危害を加えた事はない、そこは間違いないな?】


うーん、どうだったかなぁ?と大体500年分の記憶を思い起こすシオン。


【わらわ、お主らも周知のとおり火竜であった頃は知能も低く、本能に従って生きておった。故に定かではないのじゃが、フレアドラゴンとして覚醒してからであれば・・・寝込みを襲われたり、食事を邪魔されたり、いきなり矢で射られたり・・・って!全てお主らヒト族から吹っかけてきておるではないか!!間違いないわ!わらわからヒト族に危害を加えた記憶など微塵も無いと言うに、全くぅ!!】


思い返しながらプンスカと腹を立て始めるシオン。そりゃそうだ、何もしてないのにいきなり殺しにかかるなんて酷い話だ。


【まぁ、それを聞くには殺されたヒト族は自業自得だな】


【昔は魔物って呼ばれてたゴブリンさん達だって、ちゃんと教育さえすればお話聞いてくれるのに、いきなり襲い掛かるのはちょっとねぇ・・・あ~・・・これってもしかして・・・】


言いながらふと何かに気付いたレイア。


【ねぇ、シオン?】


【な、なんじゃ?暫く黙っておったかと思えば、またわらわを誑かそうと謀略を・・・】


シオンのレイアに対する警戒心が半端ない。


【だから違うって言ってるでしょ、そろそろ怒るよ!】


まずい、と急にしおらしくなるシオン。


【じ、冗談なのじゃぁ~・・・ほんの可愛いドラゴンジョークなのじゃ・・・わらわ、お主のように静かな怒りを向けられるのは苦手なのじゃぁ~・・・】


しゅんとなっているシオン。本当に少しは反省したらしい。

うーんと少し考えて、あっけらかんとした感じでレイアが尋ねる。


【シオンは今までどれくらいのヒト族を食べたのかなぁ?】


なんて事を聞くのか、とマリアはともかくルシエルまで「ふぇ??」と困惑する。質問の意図が意味不明だ。

正直に答えて良いものか、悩みながらもシオンが質問の答えを示す。


【わ、わらわの覚えている限りでは一万には届いていないと思うが・・・なんじゃ???さては食したヒト族分の罰でも与えるつもりか!?涼しい顔をして恐ろしい事を・・・あわわわわ】


ガクガクブルブル、とはこのことである。シオンにとってレイアはいつでも我が身を操れる、恐怖の対象でしかない。

いい加減にして欲しいな、と呆れているレイアだが、食べたヒト族の数に嘘はなさそうなので、正直な子であるのを確認したレイアは皆に提案を投げかける。


【私に良い考えがあるの!】と。

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