輪廻の喫茶店
ガチャリ
男は喫茶店に入ると、発券機より整理券を受け取る。そしてキョロキョロと辺りを見渡し知り合いを探す。
しかし、広い店内には相応の人数がいて、探すのは苦労しそうであった。
「おーい」
と、聞き覚えのある声が男を呼ぶ。見れば、知った顔がこちらに手を降っていた。男は軽く手を上げて応え、その知り合いの方へ向かい、テーブルを挟んで正面に座る。
「久しぶりだね」
「ああ、そうだな」
そう声をかけ合うのは、男と同じ程度の年齢の女であった。卓には、すでに半分ほど減ったコーラがシュワシュワと泡をたてている。
「それで、今回はどうだった?」
座りながらコーヒーを注文する男に対して、ニヤニヤしながら女は聞いた。
「さてな。そっちは?」
「やー、ヤッてる最中に頭かじられてね。もう勘弁さ」
「お互いうまくいかんよなぁ」
二人して笑いあう。男は運ばれてきたコーヒーを受け取り、ズズッとすすった。
「うまくいく確率なんて、くじが当たるより低いのかもな」
「それなら、100%だ」
女はニヤリとして店内を指し示す。
「ひどい理論だな」
そう笑って、男はもう一口コーヒーをすすった。女もまた、ストローに口をつけ、ズズッとコーラを飲む。
「いつもコーラだよな」
思い出したように、男は言った。それに女は苦笑する。
「当たりの習慣は変えられないのさ。それに君だって、いつもコーヒーじゃないか」
女はいたずらっぽく笑う。
「言われてみればな」
男もまた、つられて笑った。
ポーン
音が鳴った。店内全員の視線が音源へと向く。その先には電光掲示板が設置されていて、いくつか番号が映し出されていた。
女は自分の整理券を確認すると、残ったコーラをズズズと飲み切り立ち上がる。
「どうやら次らしい。じゃ、またね」
「そうだな。当たることを祈っているよ」
気休めだけどな。そう、男は肩をすくめた。
「ふふ、ありがとう。じゃね」
「おう」
別れの挨拶をすると、女は出口へと歩いていった。
その後ろ姿が見えなくなると、男は入り口が見えるように座り直した。
時折、ガチャリと入り口が開き、そのたびにそちらを窺うがが、知り合いが入ってくることはなかった。
そのままぼぅっとしていると、またポーンと音がなる。
「案外、早かったな」
整理券を確認した男はポツリと呟くと、ぬるくなったコーヒーをグイッと飲みほす。
そうして立ち上がると、のんびりと出口へと歩いていった。当たりますように、なんて呟きながら。
なんだか急に思いつきました。てかジャンルはヒューマンドラマでいいのか。
一応宣伝を。「追放されたゴーレムマスターはのんびり旅をしたかった」という冒険モノの連載をしたております。現在一章が完結してまして読み始めにちょうどいいので、興味があればぜひ。