開幕
やっと涼しさが帰ってきたような........
都市アードゥノアのホテルの一室。
そこに方手を耳に当てたテセスがいた。今日は学園交流祭の予選一日目。
両親を殺された血のハロウィーン事件。その憎しみは忘れもしない、いつまでも自分の心に残っている憎しみの炎。
だがその炎は昨日のアランの言葉によってゆらゆらしていた。
「ねぇ、シギナン。本当にアラン君は私達の作戦に必要なの?あの調子だと邪魔する気よ。昨日だってよく分からない事言ってたし、あれは危険よ。」
その言葉は魔法によって、シギナンへと届く。
「うーん。確かにテセスの言うことは一理あるね。チャッカスをけしかけたのに、あの俺様野郎は意外にもアラン君のこと気にいっちゃったみたいだし、ははっ、予想外だよ。」
「そうよ。........ねぇシギナン。私達のやろうとしてる事はバカなのかな?」
その声には悲しみ、不安、様々な感情が込もっていた。
「そんな事ないさ、血のハロウィーン事件。僕達の両親が殺された事件、復讐なんてバカげた事だと言う人もいるけど僕は問いたい。じゃあこの感情をどうすればいいんだ?ってね。」
「そうよね。バカなんじゃないわよね.......。」
「そうだよ、大丈夫、忘れていないよねテセス。僕らが誓ったあの日を。僕らの両親が殺されたのに学園交流祭なんて催し、あっちゃいけないんだ。」
「忘れるもんですか。...........よし!じゃあ切るわよ、あともうそろそろで開会式も始まるし。」
「分かった。頑張ってね、僕の分もね。」
「えぇ、もちろんよ。」
テセスは魔法行使を止める。
そしてコップの水を一口で飲み干し、開会式へと向かった。
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開会式は試合会場で行われる。
その為、試合会場の中の通路にはたくさんの人がぎゅうぎゅうの手前の状態になっている。
「委員長~、ぎゅうぎゅう過ぎなんで帰っていいですか~?」
「はぁ。その程度の理由で帰るなど言語道断だ。我慢しておけ。」
「はーい」
何やら委員長にあんな口の聞き方をしている人がいるが、誰なのだろうか?
見た目はぼさぼさの髪を肩らへんで結び、ずっと気だるそうな顔をしている。
「リース、あの人ってもしかして..............」
俺と同じ事を考えていたルミナリエがリースに尋ねる。
「そう、あの人がフラングス先輩。めんどくさそうな顔をしてるのはいつものことよ。」
「あれが引きこもりの.....」
「あっ!今誰か俺のこと呼んだなー。」
引きこもりと言う言葉に反応したフラングス先輩が俺の前へと来た。
「君かい?俺のこと呼んだのは。確か君は.........」
「アラン。アラン・エリアルです。」
「そうかそうか。君があのアラン・エリアル君か。校庭に魔法をぶっぱなしたりそこにいるリース君をも倒してしまう程の能力だとか、色々聞いてる。ところでアラン君さ、俺のやってる研究に興味なーー」
「勝手に下級生をお前の変な研究に付き合わせるな。」
フラングスが最後まで言おうとした時には委員長が首の襟を掴み、ちゃんとした三年生の位置へ戻す。フラングス先輩が何の研究をしているかは気になるが仕方ない。
「フラングス先輩も委員長には敵わないからね。それよりほら、あそこ見てごらん。」
ホーネスが指差した方向には一際目立つ魔力を持った者がいた。
その格好は、おそらくその学園の制服なのだが一つ違う所がある。
一人だけ制服の胸辺りに紋章が描かれているのだ。鳥が羽ばたく瞬間をそのまま写真にしたような紋章を。
一体どういう事だ?
わざわざその学園内に違う印を押すとは。それだと周りの生徒との格差で恨みや妬みを買う恐れもあるが、それも理解した上なのか?
それにこの魔力....
「気付いた?アラン君なら気付くかなーって思ったけど、予想通りだね。」
「あの魔力。質、量、どれもが高いですね。それに魔力の特性が普通の人とは違いますね。」
「とてもじゃないけど、破滅に偏りがありすぎる。あれじゃ回復魔法も回復じゃなくて逆に傷付けてしまうよ。かわいそうだよね。」
魔力が破滅に偏っているとは、魔力自体に破滅因子が濃く混じってる事だ。これは俺にも言える。俺の場合は零へと還す因子だ。だから回復魔法は俺にとって扱い難い。
「一体何年生なんですか?」
「アラン君と同じ一年だよ、名前はナルク・シュード。戦術学園、期待の一年らしい。」
「戦術学園......当たらない事を祈るだけですね。自分も破滅に偏りがある魔法は相手にしたくありませんし。」
ルミナリエが誰かと話しているナルクを観察しながら言う。ホーネスはその言葉に驚きを見せた。
「驚きだね、あの運動神経が良いルミナリエさんでも相手にしたくないんだ。てっきり避ければ良いとか言ってそうだから.....。」
「まぁ、そう言われればそうですが、自分は手数や戦法で押しきるタイプでその手数とかをまるごと滅せられそうで、面倒そうで。」
「それはあるわね。そこまで破滅寄りなら、例え同じ質、量の魔法を撃ったとしてもその破滅因子のせいで押し負けることもあるわよ。」
「そうだな、リースの言う通りだ。まっ、当たらない事を願うだけだ。もうすぐ開会式も始まるし、今考えてもどうにもならない。」
俺は深く考え込んでいるリースとルミナリエの意識を肩を叩いて現実に戻し、魔王学園の列に並んで開会式へと向かった。
開会式は何やらお偉方の長い話や、会場の設備の説明。使用不可能な魔法を提示するだけであった。
ちなみに使用不可能な魔法とは、以前イフンが使った禁忌魔法<禁忌庇護絶対陣>や触れれば侵食していく闇魔法<深淵なる暗光>等だ。
そして最後の言葉としてデモクレスが壇上に立つ。その瞬間、会場がどよめいた。
それをデモクレスは右手で制止させる。
「これより、学園交流祭予選大会を開幕する!皆の者よ、魔王の名に恥じぬ試合を期待しておるぞ。」
その開幕の言葉により、学園交流祭予選は始まった。
開会式の次にやる事は試合メンバーを決めるミーティングだ。如何に三年生の手札を見させないで予選を勝ち抜くかが勝負になる。
そのミーティングに<魔王学園戦撃委員会>はいた。
「先ほど俺に渡された紙によれば、この予選大会はシングルス二つ、ダブルス一つで戦うらしい。でも本選への枠を争う時は通常通りにシングルス三つ、ダブルス二つでやるらしい。」
「初戦の相手は第二魔工学園。特に気にするほどの相手ではありませんが、油断大敵です。そして初戦のメンバーですが、一年生と二年生を主力とした編成で構いませんよねチャッカス?」
チャッカスは静かに頷く。
「無事委員長からの許可も出たことですし、初戦のメンバーを発表します。」
ユウノは通常の紙より二回りくらい大きな紙をミーティング用の黒板に貼る。
恐らくもう最初から組んでいたのだろう。チャッカスが良いと言うのが分かっていたようだ。
「第一シングルスにアラン君を、第二シングルスにルミナリエさんを、第一ダブルスにホーネス、テセスを指名します。」
そのユウノの指名に<魔王学園戦撃委員会>にどよめきが起こる。
それは第一シングルスにアランが入ってるからだ。アランはシギナンの代わり。確かに一年生と二年生で固めるのは合っているが、最初からアランをぶちこむとは思わなかったのだ。
「皆も驚いていると思うが、アランを最初にしたのは意味がある。アラン、この試合は魔法の使用を控えろ。周りには剣術が得意なふりをするのだ。ただ、あくまでふりだ。それっぽくしていればいい。」
「そういう事ね。わざとまだ情報を知られていないアランは剣術が得意だと他の学園に印象付けさせるのね。」
リースがチャッカスの考えている策を見破る。
「そういう事ならその策、完璧にこなしましょう。」
アランは立ち上がり、そう宣言した。
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