実力検査 <下>
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波に乗りたい今日この頃
「ユウノ、あらかた見終わったか?」
「ええ、まぁ。それなりに分かったけど、ちょっと実演してもらいたい所もあるわね。」
「そうか。ならこれの出番だな。」
チャッカスはそう言うと、収納魔法の中から黒い大きな正方形のキューブを取り出した。
「これから必要と思われた生徒は今から指示される魔法か[魔技]をこのキューブに向かって使え。ちなみにことキューブは学園に入る時にした魔力検査に使用された物だ。いくら高威力でも壊れたりしない。」
チャッカスが説明するが、ルミナリエは何の話かさっぱり分からないルミナリエに俺は耳打ちした。そういえばルミナリエってエリカが無理やり入れたから知らないのも当たり前だ。
みんなの用紙を持ったユウノが一歩前へ出た。
「それでは皆さんの魔法や[魔技]がどのようなものなのか調べさせてもらいます。初めにチャッカス、あなたの得意技をして頂戴。」
そのユウノの言葉にチャッカスは不思議そうな表情を見せた。
「ほう、いつも見ていると思ってたが......。まぁ良いだろう。」
チャッカスは黒いキューブと数メートルほど離れて仁王立ちをした。
チャッカス・ボーン。ボーン家の跡取りにして天才とうたわれている。彼が有名な(この時代では)ボーン家の天才と言われているのには理由がある。
ボーン家はその血筋になると、とあるオリジナル魔法が使えるようになる。
しかしそのオリジナル魔法は難度が高く、使えると言う資格を得ても使いこなすのは難し過ぎるのだ。チャッカスはその分家の一人だった。
本家の中でもそうそうとオリジナル魔法を使える者はいなかった。だから分家のチャッカスが使えるのは本家の者達のプライドが許せなかった。当然チャッカスにも本家の者から嫌がらせ等は多々あった。
だから本家の者はこう考えた。チャッカスは元から本家にいる者の息子であったのだと。
そうすれば本家のプライドも守られる。そして分家の者には本当は自分達にもオリジナル魔法を使える者はいたのだと自信を得られる。
そう大人は考え、実行したのだ。だが分家の者を本家として存在させるには、チャッカスだけを本家に迎えなければならない。つまりチャッカスの両親とは離ればなれになるのだ。
さすがに両親と離ればなれになる事には様々な意見が飛んだが、上の大人達は無理やり実行した。
そしてチャッカスは両親の暖かさを得ることはなくそのまま本家として生きた。確かに大人達は喜んで迎え入れた。だがチャッカスと同年代はどうだ?同年代なのに分家から自分より有能な者が入ってきたら嫉妬もするだろう。
結論を言うと、チャッカスはいじめられた。だからこそチャッカスは他の子供たちが使えないオリジナル魔法を極めようとした。友達を作ることなく。ただオリジナル魔法を。強さを。周りの同年代と比較にならない程強く。
そのオリジナル魔法は
「<無限の武具召喚>」
チャッカスがそう唱えると、黒いキューブを囲む形で無数の武器の輪郭が現れ、実体化して黒いキューブに勢いよく突き刺さった。
これがボーン家に伝わるオリジナル魔法。<無限の武具召喚>
自分の目視出来る範囲ならどんな形状の武器をその場で構築し、自分の意思で動かす事が出来る。しかも構築出来るのは武器だけでなく防具を構築可能なのだ。
そんなチート級の魔法、完全に使えれば無敵だ。
だからこそチャッカスは日々努力しているのだ。完全に使いこなせる日を目指して。
チャッカスの<無限の武具召喚>を間近で見たみんなはその凄さに圧巻されつつあった。
「さすが委員長。鮮やかなお手前ね。」
「ああ勿論だ。俺はこれに命を賭けているからな。」
テセスの褒め言葉にも一切の照れを感じないのは褒められる事に慣れているからだろうか。
隣のリースも先ほどの魔法には「おぉ」と感嘆していた。
「さすがは委員長ですね、あれほど慎重に魔力操作をするなんて。まぁ魔王様には届きませんが。」
「ルミナリエ。俺の事を褒めるのは嬉しいが、素直に評価してやったらどうだ?」
「命令と言うならしますが?」
いたって真剣な眼差しでアランを見つめるルミナリエにリースはアランの首に腕を回した。
「駄目よアラン、ルミナリエって元はただ任務を遂行する為に生きてきたんだから。変な命令しちゃ、アランの側にいる意味がないじゃない。」
「なんで俺がルミナリエに変な命令する前提なんだよ!」
「だってルミナリエってアランが命令したら本当に何でもやるじゃない。だから気をつけなさいよって話。絶対今アランが脱げって言ってたら本当に脱ぐわよあの子。」
「なっ!俺はそんな事言わないぞリース。俺はデルスに頼まれたんだからな。ルミナリエを普通なそこら辺にいる女の子にするって。」
ルミナリエが所属していた影の集団。そのリーダーであったデルスに頼まれたのだ。
もちろんエリカが強制的に学園にルミナリエを入れさせた後に聞いたのだがな。実は最初からアラン本人に直接言うつもりだったが、エリカが「アラン様に言っときますね。」と嘘をついたのである。
もしかしたらアランがルミナリエの記憶を改竄して普通の女の子として別の道を歩かせるとエリカが思ったからだ。それは可哀想だとエリカはルミナリエの想いを察したらしい。
「何をいちゃいちゃしているんですか?もうそろそろホーネス先輩の[魔技]が始まりますよ。」
妙にむすっとしたルミナリエが声をかけた。
二人は「あっ...」とお互いに離れ合うが、その光景がよりいっそう恋人のような感じがしてルミナリエは見なかったことにした。
「じゃあ次はホーネス。」
「はい、分かりました。」
ホーネスは一つ、大きく深呼吸をする。
「[魔技][潜在魔力解放]」
刹那。
ホーネスの雰囲気ががらりと変わった。いつもニコニコしていたりしている顔は一切感情を失くしたただの人形のようだ。
「<電撃貫通砲>」
ホーネスの手から電撃の力が凝縮された長細い電撃がほと走った。
たちまちその電撃は黒いキューブに当たりバチバチッと音が鳴った。黒いキューブの吸収速度が追い付いていなくて、地面などに放電してしまっている。
ここまで強力な魔法にするとは.....................意図的に魔力を凝縮する事によってより濃密になっているが、それだけではない。<電撃貫通砲>に込めた魔力の量が多かったと言うことか。
「アラン、今のホーネス先輩って.........」
「ルミナリエの予想通りだ。今のホーネス先輩はほとんど別人だ。」
「それってどういうこと?」
「多分ホーネス先輩はその体に二つの魂を宿している。ルミナリエにはなんとなくその違う魂を感じ取ったんだろう。」
リースがぽかんと口を開けている。
「二つの魂?そんな事あるの?」
「あぁ普通にある。通常、一人の生物に一つの魂だ。だがしかし、時たま違う魂が入ってしまう事があるんだ。例えば魂をバラバラに破壊されて殺されたのが、生物の魂の器に惹かれてその中に入ってしまったりな。」
魔法の質。魔力の込め方はその一人一人の魂によって違う。そして魔力そのものの質さえ魂によって変わってしまう。魔力の最大容量は変わらないが、質は変わる。
これについてはよく解明されていない。
千年経った今も研究者の悩みの種らしい。なぜ質が変わるのか?ここが解明されれば大きく魔法学は発展するらしいが。
「ふむ。大体分かりました。もう解除していいですよ。ホーネス」
ホーネスは静かに頷くと、その雰囲気も魔力もいつものホーネスに戻った。
「はぁ」と疲れているホーネスにアランは近づきながら水を出した。ホーネスは「あ、ありがとう。」とアランから渡された水を飲み干した。
「それにしても先輩。さっきの凄いですね。」
「そう?ありがと。なんか自分の中にある別の魂を解放するんだって診察した医者に言われたけど、実際自分でもよく分かってないんだよね。」
「へぇ。でも自分じゃない魂を解放するって体にかかる負担は相当なものですよね?」
ホーネスは苦笑いしながら「まぁね」と相づちを打つ。
「でもここまでしなきゃ<魔王学園戦撃委員会>を名乗れないよ。」
そう言うホーネスはどこか辛そうだった。
<魔王学園戦撃委員会>の肩書きを持つと言うことは特別な覚悟があるのだろう。
「それじゃあ、上級生の能力も分かった事ですし次は一年生の方も計りましょうか。」
そうユウノが言った。
テセスが何もしていないのは、以前シギナンに回復魔法をかけた時に見ていたのだろう。それに、あの黒いキューブに回復魔法をかけたとしても、元から完璧状態になっているからよく分からないしな。
にしても..............これからが重要だな。ここで、どれだけ怪しまれずにやり過ごせるかだ。
自分の鼓動が速くなるのをアランは感じた。
<下>って書いてもまだもう一話あると言う矛盾ね笑




