実力検査
ブックマークが増えてニヤニヤしている今日この頃
今日は土曜日。
皆さんもご存知の通りお休みの日だ。自由気ままに街を散策するのもよし、自宅でゆっくりとごろごろするのもよし。だがアラン、リース、ルミナリエは学園に来ていた。
その三人が呼ばれたのは他でもない、学園交流祭についてのペア等を決める為だ。
もちろん他の<魔王学園戦撃委員会>のメンバーだっている。一位のチャッカス。二位のユウノ。三位のシギナンは魔力暴走したため、アランが入る。
続いて四位のホーネス。今はまだ来ていない。
五位のテセス。六位の人は来ていない、と言うか来ないらしい。チャッカスに聞いてみると
「ああ、あいつか。多分今日も来ないぞ、フラングスは極力外出することを嫌うのだ。なかなか学園にも登校しないから俺様が直々に家まで行ってやっても、色々なトラップを仕掛けられてめんどくさくなった。」
「そんな人がいるんですね......。」
「うちの学園は個性的な連中が多い。フラングスも戦闘になればかなり強いのだがな。まったく、才能の持ち腐れだ。」
そうこう話している時、学園の校門から「すいませーん!」と大きな声を張り上げてホーネスが走って来た。その顔には汗がたらたらと流れている。
「ホーネス!何をやっている?一年より遅く来るなど、貴様は恥がないのか!?罰として校庭十周!」
「は.....はぃ!」
チャッカスに言われ、ホーネスは嫌な顔一つせずに校庭を走り出した。
ここで嫌な顔でもしたらさらなる罰が待っていることをホーネスは知っているからだろう。
ホーネスが走り出した所でユウノがパンッと手を叩いた。
「さて、あとは二年生の補欠だけですね。」
「あっ、ユウノ先輩。二年の補欠なんですが、どうやらそいつフラングスの双子らしいです。」
テセスが言うと、チャッカスやユウノは「はぁ」とため息をついた。
「なぁリース。本当にフラングスって言う人大丈夫なのか?不登校気味だけど。」
「うーん、でも実力は折り紙付きなのよ。二年生にありながら、ユウノ先輩を一度負かした事もあって<魔王学園戦撃委員会>もむげに出来ないのよ。」
「そんな強者がどうして不登校なのか気になりますね。機会があれば自分とも対戦して欲しいです。」
「まっ、大事な時には必ず来るからその時にお願いしてみれば?あの人が承諾するかわかんないけど。」
半ば諦めているリースにアランとルミナリエは苦笑いをする。
そういう人なんだと理解したからだ。
「じゃあそろそろホーネスも走り終わるし、今回<魔王学園戦撃委員会>を召集したのは知っての通り、学園交流祭に向けての皆の実力を調べる為だ。一応説明しておくが、学園交流祭はシングル戦が三つ。ダブルス戦が二つ。そして勝利条件は各試合の勝利回数で相手校を上回ることだ。」
「補足を加えると、もし試合で相手選手を二度と魔法を使えない所まで攻撃した場合はその校はどんな理由があろうとも負けとなります。」
「と言うことだ。今日はお前達の実力を計り、最適な試合を組ませる為に呼んだのだ。」
「チャッカス先輩。具体的にはどのように実力を調べるのですか?適当に試合をさせるのですか?」
リースが手を挙げて質問する。
チャッカスは「いや.....」と言葉を続けた。
「確かにそれもいい手段だが、それでは相手との相性やその場の運要素が強い。だから今回はまず初めに皆の使える魔法、[魔技]、を全てこの紙に書いてもらう。出し惜しみはするなよ。」
早速ユウノが一人一人に紙を配っていく。
その紙を受け取った俺達はどうしようか迷った。ここで真実を書いてしまったら絶対に面倒だし、かといって書かなさ過ぎると実際試合で使ってしまったら大変だ。
俺達以外の<魔王学園戦撃委員会>はさくさくと書き始めている。
「アラン......。あの.....自分はどう書けば?」
様付けを押し殺したルミナリエが小声で、アランに問う。
「うーん。使える魔法は最高位の一つ下で良いだろう。あと[魔技]は二つ、多くても三つだ。リースは元から強いってイメージ付けられてるし、そのままでいんじゃないか?」
「そうね。でもルミナリエはともかく、アランって私と対戦した時に<超滅連獄炎>を撃ってるし、注意しときなさいよ。」
「そうだな。」
俺達はかりかりと用紙を書き終えた。
念のためリースがアランとルミナリエの用紙をチェックする。するとリースは「これは.......。」と頬を吊り上げた。
横からアランが見ると、こう書いてあった。
ー使える魔法ー ー使える[魔技]ー
・暗殺に適した魔法全て。 ・[無音の一撃]気配も全て消して行う一撃。
・最高位は使えない。 ・[脱出術]拘束を脱出する。
「んまぁ、合ってるんだけど...........」
「ちょっとこれは暗殺方面に偏りがあるわね。ルミナリエ、私と一緒に考えましょ。」
「..はい....。」
頭に「?」を浮かべるルミナリエだったが、リースに連れてかれてしっかりと用紙を書き直した。暗殺方面に偏りがあった用紙は、ちょっと隠密系の魔法が得意にしておいた。
もしルミナリエが試合をして、その暗殺に適した動きを見せても得意だと言っておけば何とかなるだろう。こうして事前に報告もしてあるのだし。
「アラン君はどんな魔法を使えるの?」
走り終わって何とか呼吸を整えたホーネスが気さくにアランに話し掛けた。
アランの持っている用紙を見たホーネスは「へー凄いね!」と素直な表情で褒めた。
「一年生で最高位魔法を使えるなんてリースさんを含めて片手で数えるのが収まるくらいなのに。使える[魔技]は..........[姿ずらし]?」
「はい。自分の今いる位置を強制的に移動させ、相手には元いた位置の自分を認識させるような[魔技]です。簡単に言うなら自分の認識をあやふやにさせる[魔技]ですよ。」
「へ~、それは興味あるな。ちょっとそこで実戦してもらえる?あっ、別に莫大な魔力を消費するとかだったらやらなくていいよ。」
「まぁ、出来なくもないですが。[魔技][姿ずらし]」
アランが[魔技]を発動した瞬間、アランの姿が認識しようとも輪郭がぼやけるようになった。
そしてホーネスがその認識があやふやなアランに触れると、ホーネスの手はあやふやなアランの体を貫いた。
「おー凄い凄い。本当に認識があやふやになるんだね。」
「で、本物の自分はその間に<全身透明化>を使うなり、回復に専念するなり出来ます。」
認識をあやふやにした自分の後ろから本物のアランが[魔技]の発動を停止した。
たちまちあやふやなアランは消え去り、その後ろからしっかりと認識出来るアランが現れた。
これが[魔技][姿ずらし]。アランが転生してから編み出したアラン・エリアルが使う[魔技]。魔王アラン・イェーデルホルムは使わない[魔技]。
「良い[魔技]だね。認識をあやふやにしてずらす...........か。目のつけどころが変わってるね、普通なら高威力なのを身に付けたがる年頃なのに。」
「え、ええ。ありがとうございます。」
「おっとそろそろ本格的な検査が始まるようだね。」
用紙を受け取って真剣な表情を浮かべるユウノの姿を見てホーネスが言った。
アランはこれから始まる先輩達の実力がどれくらいなのかわくわくしていた。




