レイナの成長
いつのまにか300ポイントになっていました。
200ポイントになって喜んでいた頃が懐かしいです。
俺がチャッカス先輩との話し合いを終え、クラスに返ってくると見計らっていたかのようにパチパチッと様々な所から拍手が鳴った。
「おめでとう!アラン、<魔王学園戦撃委員会>のメンバーになったんだね!凄いよ!まさか補欠要員としてじゃなくて正式に認められるなんて。」
「ちょ、ちょっと待てイフン。それは今さっき決まった事だが、なぜ分かったんだ?俺は最初から断るつもりだったし。」
興奮しているイフンにアランは落ち着かせるようにイフンの肩を掴んだ。
その時、エリカが横からにこやかにやって来た。
「盗み聞きは私も得意ですのよ。それよりおめでとうございます、アラン。称賛に値しますわ。」
俺はいつもの口調のまま言おうとしたが、学園内ではあくまで他人だ。だからエリカも「アラン様」ではなく「アラン」と呼び捨てだったのだ。
「ありがとうございます。まさかエリード家の人から言われるなんて。」
「いえいえ。それより、一年生の補欠要員の方は姉のルミナリエでよろしいのですか?彼女は病弱とお聞きしましたが。」
エリカが笑みを崩さずに聞いてくる。その言葉にクラスのみんなも一斉にルミナリエを褒め始めた。一クラスに二人も学園交流祭のメンバーに選ばれる事自体が異例なのだ。
だがこれ..............
多分エリカよりルミナリエを選んだからふてくされてるんだろうな。
「大丈夫だと思いますよ、もし姉に何かあったらあなたにお願いしますよ。」
「へぇ~そうですか、それではその時になったら呼んでくださいよ。」
エリカは笑った。それもおしとやかに。
「おー怖い怖い、これが嫉妬の現場ってやつなのね。」
「こらっ、そういう事言うんじゃない。ねっ、ルミナリエ。」
レイナにコツンッと叩いたリースはルミナリエの方向を見るが、本人はアランに選ばれた事で体をもじもじさせている。
「あっ............こっちもこっちだったわ。」
そんなリースの声は虚空に消えていった。
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以前、アランはレイナの練習相手になる事を約束した。
その練習がやりたいとレイナからの申し出があったので、アランとレイナは戦闘場に来ている。確か前にも来たことあったっけ。
現在は放課後、特に周りには人はいない。
「まだあの頃はアランの事魔王だなんて思いもしなかったけどね。」
「そりゃそうだよ。しっかりと魔力も抑え込んでいたし、目立つ行為は避けたてたし。」
「えー?そうだったかな~。いきなり校庭に<大地獄炎>を撃ったのはだーれだったっけ?」
レイナはアランの顔をじっと見つめる。
アランはまじまじと見つめるレイナに目を合わせないようにそっぽを向く。
「あれは違うんだ、自分でもやり過ぎたと思ってる。」
「そんな事言うから余計リースが反応したのよ。まっ、過去は置いといて、そろそろ始めましょ。」
レイナは収納魔法から剣を取り出した。
合わせて俺も収納魔法の中からリエスベスタではない通常の剣を取り出す。
「てか、レイナって魔法をあんまし使わないけど、何かあるの?」
「ううん、ないない。ただ魔法が苦手だから剣一本で行こうかなって。もちろん簡単な魔法は使うけどね。」
「そうなのか、なら俺は魔法を交えつつも近距離戦をすればいいのか。」
「そゆこと。じゃ、始めましょ。」
レイナは初速からダッシュでアランに近づいた。
その動きを予測して俺は地面に這うように<大地獄炎>を辺りに撒き散らかす。
ボワッとたちまち地面は燃え上がり、レイナの進行を拒む。
「ふっ、この程度!」
レイナは燃え上がっている火中に飛び込み、剣を左右に振り襲いかかってくる炎を振り払っていく。その姿は炎の中を駆ける鳥のようだ。
やはりレイナはこれくらい造作ないか。
「アラン、痛いけど我慢してね。」
「ふっ、本当に斬れるとでも?<強魔爆裂陣>」
俺は一歩身を引いてレイナを誘い込む。
レイナはアランのいた位置に<強魔爆裂陣>があると予想し、トンッと地面から足を離しそのまま勢いに任せてアランに上段斬りをする。
「レイナ、魔法っていうのは空中にも仕掛けられるんだよ。」
アランがそう言った瞬間、レイナの眼前に巨大な爆発が起こった。
それは綺麗に圧縮され、爆発をレイナの方向だけに仕向けられていた。ちょっとした応用技術だが、使い易い。
レイナは必死に魔法障壁をと剣を盾として防ぐ。だが即席の魔法障壁。防御性は期待しない方が良い。すぐさまレイナの体は吹き飛ばされ、地面にごろごろと転がる。
もちろんレイナは剣を地面に突き立て向かってくるアランに対応する。
「[魔技][操残像斬撃刃]」
レイナの剣が一瞬ぶれたと思うと、レイナの背後に薄い青色の剣の刃のような形が五本現れた。レイナが一降りするとその薄い青色の剣の刃はアランに斬り掛かる。
俺はその刃を<魔法障壁>で全て受け止め、片膝を付いているレイナに剣を降り下ろそうとした........................
だが..............
「いっ........つぅ。」
残像の斬撃がアランの足を切っていたのだ。
先ほど<魔法障壁>で完全に相殺しきった筈なのに。
そのアランの一瞬の動揺はレイナにとっては最高の好機だった。
「隙あり!」
レイナの一太刀がアランの脳天に入りそうになる。
がしかし、その太刀がアランに入る事はない。カキンッと言う音が鳴り響き、アランの剣がその一太刀をギリギリで受け止めていたのだ。
「ふー、危なかった.....。」
純粋な力比べでは圧倒的にアランが上回っている。
だがアランには一つ懸念があった。
「アランいいの?こうしてる間にも私はアランの事を傷付けられるけどなー。」
「くそっ、ならば..」
先ほどの一撃。まだ俺はそのメカニズムが分かっていない。確実に<魔法障壁>で防いだ筈だ。なのに俺は足に食らっている。
脅しをかけていると言うことは、まだレイナは[魔技]を掌握しきれていないのか?
だとしたら余計厄介だ。本人でさえ分からないのだからほぼ運となる。
俺は力任せにレイナの剣を弾き、後ろに手を回して<闇牢獄の最果て>を発動させた。様々な可能性がある以上、この魔法を唱えた方が安心だ。外界と内界を切り離す魔法。これならば中で何があろうとも心配ない。
「[魔技][操残像斬撃刃]!」
「させるか!<強制拘束鎖>」
[魔技]を発動させようとするレイナに銀色の鎖が飛び、その剣を縛る。
元魔王が放つ魔法。もう剣は使えないと瞬時に判断したレイナは剣を放棄し、アランに掴み掛かる。
レイナの手がアランの首元の襟に触れそうになる時、アランはレイナの向かってくる勢いを利用して手首を掴んでそのまま投げ飛ばした。
「近接の組み手は戦闘での基本だ。剣ばっかじゃ強くなれないぞ。」
吹き飛ばされたレイナは受け身を取って立ち上がる。
その目に戦いの意志を宿して。
「もー!怒ったんだからね、今さら謝っても許してあげないよ!」
「え.........あ、あぁ。」
初めてあんな感情を表したレイナに驚きが隠せないアランだったがすぐに気持ちを切り替える。でもよく考えてみればレイナの剣はアランの足元に落ちている。
レイナの所持している剣もアランからもらった剣のみだ。一体何をするのだろうか?
「<大地獄炎>」
レイナは両手を突きだし<大地獄炎>を唱えた。
たちまち地獄の炎はレイナの手に集まり、発射され....................ずに剣の形を形成していったのだ。炎の剣。正しくその言葉通りの剣が出来ていた。
燃え盛る炎の剣。その剣を握りしめ、レイナは再びアランに向かってダッシュした。
その姿は魔王と勇者のようだ。
「[魔技][操残像斬撃刃]!!」
「かかってこい勇者!!<超滅連獄炎>!」
レイナの炎の剣がぶれ、五本の炎の剣が現れる。その炎の剣は向かってくる<超滅連獄炎>とぶつかり、燃え盛った。拮抗しているとは言えないが、確実にその勢いを失わせている事は確かだ。
「おりゃー!」
そしてレイナのジャンプ斬り。ズパンッと<超滅連獄炎>が真っ二つに切り裂かれた。レイナはその流れのままアランに向かって駆けようとするが体が動かない。
「無駄だレイナ。魔力切れだ、[魔技]だって魔力を消費するんだから考えて使うこと。いいね?」
アランは体が動かないレイナに駆け寄り座らせた。
レイナは頬を膨らませたが一つため息をついた。
「もー、負けちゃった。今のは結構自信があったのになー。それより、なんでさっき私の事勇者って言ったの?」
「あー、なんて言うか........勇者って時たま、光魔法を剣として形成して使ってたからさちょっと思い出しちゃって。でも凄いなレイナ。魔法を剣とするのは高度な技法だぞ。」
褒められた事に照れるレイナは「あははー勿論だよ。」と笑った。
「でもいまいち[魔技]がよく分からないんだよね。なんとなくは感じ取れるんだけどさ。アランにはどう見えた?」
「俺的にはその[魔技]は、自身の持っている剣を複製して操る[魔技]だと思ったんだが。多分あの時、魔法障壁を通り抜けたのはその複製した剣自体の存在が不安定だからだと思う。」
「存在が不安定?そんな事ありえるの?」
「まぁね。でも普通なら起きないけど。簡単に例えるなら、小さい頃に初めて魔法を使った時にその魔法が消えたり現れたりする現象の延長線みたいなものだね。」
「へー。もっと練習するしかないか。」
少し休んだ事で歩けるようにはなったのか、レイナは立ち上がる。
「んー」と思いっきり背伸びをしてアランに近づくとアランの頬に口づけをした。
「お返しとお礼よ。ふふっ。」
そう言って銀髪を揺らして踵を返すレイナは美しかった。
お次は400ポイント!




