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誘い 

とある魔界の病室。

そこにはテセスとベッドに横たわる<魔王学園戦撃委員会(イェーデルホルムズ)>の第三位シギナン・エルスン。シギナンの方は体中ぼろぼろで包帯まみれだ。


魔力の暴走。一つの魔法に込める魔力の量を過剰に越えすぎていたり、自分じゃ扱えきれない魔力を手にした時に起こる事象。


「まさかあんなに強いなんて想定外だよ。」


「ええ全くだわ。でもあなた的には良かったんじゃない?笑みが隠しきれてないわよ。」


「やっぱり嬉しいんだよ。」


シギナンはわざと笑いを隠さなかった。そうしても特に得はないからだ。

そして横に置いてある時計を見た。


「テセス、あともうそろそろで学園へ行く時間になるけど、良いのかい?」


「ええ。別にここから学園までさほど時間はかからないし。でも..............あと一ヶ月もないのね。学園交流祭。」


学園交流祭。その言葉にシギナンは顔を曇らせ


「そうだね。忌々しい。何が他種族との平和を願って.......だ。あんなもの、なくなってしまえば良いのに。」


「でももうなくなるのね。私達の活躍によって。」


「そう、でもその為には圧倒的強者が必要だ。アラン・エリアル君を。彼ならきっと僕達の作戦に賛同してくれる筈さ。あんなに強いのに、学園交流祭に出られないなんて不平等だろ。そんな不満がある筈だ。」


「もしそんな不満がなかったら?」


シギナンは何とも言えない表情をする。


「んー、そんな事あって欲しくないけれど。もしそうだったら..................そうだね、不満を抱いてもらうしかないね。あのプライド高きあいつにでもぶつけさせようか。」


「あいつ........?確かにそれならこっち側に早くついてもらえると思うわ。でも私嫌よ、あんなプライドの塊みたいなやつに頼むなんて。」


テセスは露骨に嫌な雰囲気を出した。

それにシギナンは苦笑し


「分かってるよ、テセスとあいつに何があったのか。大丈夫、僕がちゃんとやるから。」


その言葉にテセスは安心し、「それじゃあ、お大事に」と言って病室を出て学園へと登校した。

病室に一人。静まり返った部屋に一つの喜ぶ声が聴こえた。


「あともうそろそろで計画も終わる。これで両親も報われる。」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




昼休み。それは各々持ってきたお弁当や、学園内で販売されている弁当やパン等を友達、恋人と楽しく食べる時間だ。今日もその光景は変わらない。


長いテーブルがいくつも並んでいる所にいつものメンバーはいた。

アラン、レイナ、リース、エリカ、ルミナリエ、ロント、イフン、ミネセス。皆、各々食事をしながら談笑している。


ただ、学園内では他人のふりをしていたエリカがそのメンバーに加わってるのに、少なからず嫉妬の目線がきているようだ。ルミナリエは姉と弟と言う関係があるので仕方ないとなってるらしい。


もちろんの事だが、俺が食べている弁当はレイナとリースとルミナリエが作った物だ。

なぜエリカも作ってないのか疑問に思う人もいるといるだろう。だがこれには理由がある。決して漫画であるような下手過ぎる訳ではない。ただ.............................いやこの話はまた後でにしておこう。


「ところでイフン、そのお弁当は母親が作ったのか?随分と美味しそうだが。」


「いやいやロント、そんな訳ないでしょ~。ちゃんとミネセスが毎朝作ってるんだもんね~。」


「へぇーそうなのか。」


ロントは驚くだけだが、当の本人のイフンは顔を紅くして下を向く。

リースも散々注意してたのだが、もう懲りたようで「またやってる...」と呟いた。


「ん?イフン、何を下を向いているんだ?別に恥ずかしがる内容でもないだろ、私は住まわせてもらってる身だ。この位の事はするぞ?」


「「「「「え?」」」」」


エリカを除いた全員が一斉に反応した。

住まわせてもらってる................?


ミネセスから発せられたその発言に静まり返る者達。


「イフン、それって本当なのか?」


イフンは小さく頷く。


「それは意外だったわ。」


「自分も.....まさか同棲していたとは.........。イフンもなかなかのやり手ですね。」


ルミナリエの「やり手」と言う言葉にイフンは動揺しながら手を振った。


「違うよ、そんな下心じゃない。あくまで護衛だよ、僕が誘拐とかに巻き込まれないようにする為なんだって。」


「確かに完璧に護衛するには同棲するしかない..........が。そういう事か、エリカもエグい事をするなぁ。」


「あら、何の事でしょうか?私はこれ以上イフン君が危険な状況に遭遇しないようにミネセスにしっかりと護衛をして欲しかっただけですが。」


まぁ良くも口が回るものだ。イフンがミネセスを好きな事を知ってるから、二人をくっ付けたくて仕方ないように見える。


俺は誰も助けてくれず縮こまっているイフンをさりげなくフォローしようとする。

だがそれははばかれる。


「ねぇ、アラン君。ちょっといい?」


テセスが座って弁当を食べているアランとすれ違いざまに小さな声で話しかけてきたのだ。

それもテーブルの反対側に座っているロントやミネセスに気付かれない程度の声で。一応エリカも反対側だが、そんな何も魔法の類いを使用していない小声など聞き取り難くはない。


もちろんアランの隣にいるレイナとリースには聞こえている。


「ごめんみんな、ちょっと用事を思い出した。しばらく席を外しとく。」


「はい、分かりました。」


「いってらっしゃいませ。」


アランを除いたメンバーは各々声を掛けた。

そしてアランはあまり目立たない位置に立っているテセスの所へ行き、テセスは何処か人気のない場所へ歩く。アランは「付いてきて」と言う意味だと判断し、付いて行く。


それは学園内でも屈指のお化けが出ると噂されている教室で、肝試しでもなければ近寄る生徒もいない。テセスがあえてそこを選んだと言う事はそれなりの秘匿性が高いのだろう。


俺の体のすべてがその教室内に入りきると、後ろの扉が勢い良く閉まった。

急な出来事に大して驚かなかったアランに「へぇ」とテセスは一段階評価を上げる。


「よく驚かなかったわね。普通ならビビる所よ、しかもこの教室呪われているらしいし。より一層ビビると思ったけれど。」


「まぁ、この教室の話は前々から知っていましたし、扉が急に閉まるなんて今時魔法を使えば誰にでも出来ますよ。」


魔法を使ったと見破られたテセスは決まり悪そうに横を向くが、気持ちを切り替えてアランの事を真っ直ぐ見つめた。


「単刀直入に言うけど、アラン君には私達の作戦に協力をしてもらいたいの。」


「作戦に協力です........か。一体どんな作戦なんです?」


「学園交流祭があと一ヶ月もしない内に開催されるのは周知の事実だと思うけれど、私達はその学園交流祭を廃止したいの。」


アランの首が横へ曲がる。


「なぜ?学園交流祭は他種族との交流の良い機会だと思いますが?」


「でもその会場は知ってる?血のハロウィーン事件。その跡地なのよ。」


以前エリカとデモクレスが言っていたな。だが何故学園交流祭を廃止したいんだ?

なかなか分かってくれないアラン(テセスが言葉不足なだけだ)に対してテセスはいら立ちを感じつつも切り札を出した。


「私の両親は血のハロウィーン事件で殺されたの。」


冷たく凍えるような弱い声でテセスは言った。

アランもその言葉で大体の事柄が分からなくはない。自分の両親が亡くなった所なんかで学園交流祭をしたくないと言う訳か。確かに筋は通ってそうだが、浅い。


「テセス先輩。こう言っては先輩が傷付き兼ねませんが」


「いいわ、言って。」


「両親を殺されたかと言って関係のない者まで巻き込むのは止めた方がいいかと。」


アランの言葉にテセスはいら立ちを高めるどころか、虚を突かれその場で停止した。

学園交流祭を廃止したいとは言った。しかしどういう手段を用いて廃止まで持って行くかは言っていない。廃止にして欲しいと書類を提出すると言う手段もある。


だが、アランの言い方は「実力行使するんだろう?」と遠回しに言っている。


完全に停止したテセスにアランはやっぱりと思った。

今のはちょっとしたかまを掛けた。こうも分かりやすく掛かるとは意外だったが。


「どうしてそう思ったの?」


「学園交流祭まで一ヶ月もありません。署名を集めて学園側とかに提出するには時間が足りません。他にも手段は多々ありますが、どれも時間不足です。そうなったらもう手段は一つしかありません。学園交流祭自体をめちゃくちゃにする。その為に俺の実力を計ろうと試合を持ち込んだ。」


「................そうよ。結果は期待以上。で、アラン君。その計画を暴いた所で、私達に付いてくれるかしら。」


テセスは真っ直ぐとアランを見る。


「嫌です。テセス先輩にどれだけの憎悪があるのか俺なんかに分かりませんが、その手段では完璧に廃止させる事は不可能です。」


「そう、残念だわ。」


テセスがそう言うのと同時にアランのこめかみに銃が突き付けられる。

何処かの漫画のような光景だ。「お前は知りすぎた」と言う意図が銃口から伝わってくる。でもアランの表情には何も動揺や汗の類いは見られない。


「あら、汗一つ流さないなんて余裕そうね。何か策でもあるのかしら?私がトリガーを引くだけで君の頭は体とおさらばしちゃうのよ。」


「撃てませんよ。今俺をこの場で射殺すれば、それはそれで面倒になる。まぁちょっと脅して口止めするくらいですかね。」


「ちっ。そうよ、今の私には撃てない。君をこちら側に引き込む事は出来ない。でも、君の方からいずれ頼み込むことになると思うわ。その時になったら私達は君を歓迎するわ。」


「そんな事は一切起きませんが、頭の隅に置いておきます。」


俺は扉を開け、今後どうするか考えることにした。

絶対このあと俺に対して何かくると思って。



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