獣の正体
本当に暑い。
なんで外はこんなに暑いんだ........
今はデモクレス以外誰も使わなくなった魔王城。
そこにアランとデモクレスはいた。
「デモクレス、あの獣...........やはり聖獣ではなかったか。」
「はい。魔王様が<超滅連獄炎>で倒した後、その灰となった部分を解析魔団に回しました所、聖獣の波長が検知出来ませんでした。魔王様の火力が高過ぎてと言う可能性もございますが。」
「ふーむ。俺の火力が高過ぎたか。その可能性はなきにしもあらずだな。だがもしも、あの獣が聖獣じゃなかったら一体何だ?」
「獣人の使い魔でしょうか?」
「獣人か.............」
アランは深く考える。獣人...........千年前の時点では歴史の片隅にしかなかった奴らがこうも戦闘的になっていると言うことなのか?
俺は目の前のコーヒーを一口飲んだ。
「デモクレス、ここ近年、今まで歴史の表舞台に出てこなかった種族が出てきてるらしいが、詳しい事を教えてくれ。」
「はい。まず魔王様が転生なさった後、魔王様の言い付け通りに他種族との国交は少しずつですが回復していきました。いざこざは勿論ありましたが、なにせ勇者も平和を望んでいましたし五百年もすれば貿易くらいは出来るようになりました。」
「ほう、五百年でそこまで出来たのか。俺的にはもう五百年くらいはすると考えていたが。」
今まで戦争をして憎しみ合ったんだ。胸の内を燃やす憎悪は消えはしない。
五百年。人間は寿命が魔族よりも短い、子や孫に自分の憎悪をそのまま移せる訳でもないしそりゃただの歴史としてしか認識しないか。
人間側は分かるが、寿命が長い魔族がたった五百年で許すとはな。
「魔族達の反発はどうしたんだ?そりゃ戦争に参加していない他種族は憎しみはあまりないと思うが、魔族達は被害者であり加害者だ。」
「魔族達の方は意外にも反発はあんまりありませんでした。魔王様のお言葉のおかげでしょう。」
俺のお言葉か........
確かに転生する前、魔族に向けて自分が転生する事やら種族に関係なく接する事を説明したが、まさかそれが役立っていたとは。
「それは正直言って嬉しいな。それで、その後はどうなんだ?」
「ここ近年では他種族達は人口が増えた事で学園を作ったり、部隊を設立したりしています。以前、魔界にも視察に来られたましたし。」
「へぇー。でもまだ問題はあるのだろう?」
デモクレスは目を瞑り頷く。
「無論ございます。今まで他種族と会う機会もない者達がどの界でもほとんどです。ですから食わず嫌いと言いますか...............会わず嫌いが発生していまして、あまり友好的ではないのです。」
「その状況を学園交流祭は払拭してくれる良い機会なのか。」
「ええ、その通りです。学園交流祭の影響で各界の旅行客や留学生も年々微々たる量ですが、増えてきているのです。おっと少し話が逸れてしまいましたな、最近の他種族は特に目立った事件は...................」
「血のハロウィーン事件。」
扉を開けてエリカがそう言った。
デモクレスは「あぁ、そういえば。」と悲しそうな表情をした。
「血のハロウィーン事件?それは何だ?」
俺は復唱した。エリカは席に座り
「血のハロウィーン事件。五十年前辺りに起こった事件ですわ。場所は各界の境界線辺りにある、様々な種族が住む都市ウィーン。その中のとある富豪が所有していた建物で、様々な種族を招いたハロウィーンのパーティーで事件は起こりました。突如として現れた集団にそのパーティーに参加していた者達は惨殺されました。」
「今現在、その場所は巨大な慰霊碑を建て、これからの様々な種族との平和を願って学園交流祭の会場となっております。」
デモクレスが捕捉説明をする。
そういえば、開催地を聞いていなかったな。都市ウィーンか。
「様々な種族が住む都市か。確かに様々な種族が競い合う学園交流祭にうってつけだな。」
「はい、これも魔王様が平和を作ったからです。」
「やめてくれ。そんな言われ方をされたらむず痒い。さて、これで話も............あっ!」
アランは帰ろうとするが、何か思い出した様子でデモクレスを見た。
「<魔法的衣装>って誰が製作したんだ?そいつに一言礼を言いたいんだが。」
「おおっ、やはり魔王様あれを気に入りましたか。あれを製作したのはソルとその仲間達です。」
「でもソルって製作が終わったらすぐに転生しちゃったわよね。」
「そうなのか................転生したか.........。残念だが、まぁいい。いつか出会った時に礼を言っておこう。」
その後はちょっとした昔の話に火がつき、多くの時間が経ってしまった。
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翌日。
先日の獣の襲来もあって警備態勢が上がった学園に俺らは登校した。
クラスの話題はもちろん獣の襲来に関してだ。表ではテセス先輩とルー先生が協力して倒したとなっている。しかし当の本人にはそんな記憶はない。
だが既にクラスの生徒達や他の先生達はテセス先輩とルー先生が活躍したと信じている。
周りの人々がそう言っているんだ。自分がただ忘れてしまっただけなのかと思い始めるのは普通の流れだ。
ガラガラと音をたててルー先生が入る。
それと同時にクラスから歓声が響き渡る。
「み、皆さん。静かにしてください!」
ルー先生が大きな声で言うと、ようやく歓声は静まった。
そして「ごほんっ」と咳払いをし
「皆さん、先日はすいませんでした。急に獣が来て怖かったでしょう。その侵入を許したのも学園側の責任です。これからは警備を強化すると上の方で決まりました。」
「何言ってるんだよ先生」
しゅんとするルー先生に男子が声を掛けた。
「あんな経験、なかなか出来るもんじゃねぇし。いざとなった時の訓練としてはいいんじゃないのか?」
「そうよね。私達が大人になったらあんなような事起きるかも知れないし。」
「でも本音を言うなら起きないで欲しいけどなー。」
「確かに、お前あんときびくびくしてたしな。」
「うるさい!!あんただってそうだったでしょ!」
クラスに笑い声が溢れる。
「み、..........皆さん。それで良いんですか?だってあんなに怖い思いをしたのに...............もっと不満をぶつけてもよろしいのですよ。」
「じゃあ先生、いつまでもくよくよしないで開き直ってください。このクラスの生徒達は先生が思う以上に心が弱くありませんよ。」
「そそ、自分で落ちこぼれとか言った癖にあっさりと負けちゃうような人もいるんだし。」
レイナがぼそっとクラス全員に分かる位に言った一言にリースの顔が紅くなる。
「んなっ!レイナ!」
リースが何も言えないのに「ふふっ」「はっはっは」等の笑い声がクラス内に行き渡った。
「皆さん...............」
後もうちょっと行けば泣く所までいってるルー先生をエリカが仕留めにかかった。
「そういう事ですよ先生。深く考える必要はありませんわ。」
「...........うっ、う.................はい。...........そうですね。」
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