魔王とテセス
「................俺.....ですか?..............」
俺は自分を指差してテセスを見た。
全く試合するとも思っていなかった俺をテセスは「そう!」と力強く言った。
さすがにルー先生も予想だにしていなかったので、驚愕の表情を見せた。
クラスの生徒だって「アランが?」
「いくら魔法攻撃とかは凄いとはいえ...........」
「まっ、頑張れよアラン。」
「なんてったって五位と試合出来るんだからな.............」
等の声が聞こえてくる。
「おや、良かったではありませんか。<魔法的衣装>を体験したいと言っていましたし。」
「いやまぁそうだけど..................これは目立つよな。」
「もういっそのこと無双でもしてきたらどうですか?案外気持ちいいと思いますわよ。」
「え~、無双っていうのはそこまでしたくないんだよな。だってそんなの強者が弱者を握り潰して楽しんでるような物じゃんか。」
「まぁまぁ、世の中には仕方のないこともありますよ。」
「もう!いつまで喋ってるつもり!早くきなさい。」
テセスの催促の下、アランはしぶしぶ試合をする事になった。
一応<魔法的衣装>の下には下着は着るのだが、アランが着方が分からず途方に暮れてる所を心配したテセスが来て気まずい空気になった事は別のお話。
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「それじゃあ、始めるわよ。」
妙に赤くなったテセスが言った。
別に男の下着姿を見たくらいで..............と思ったが、それは個人差があるのか。
「はい...............」
「なんか気のない返事ね。どう?初めての<魔法的衣装>は?」
俺は着ている紺色の<魔法的衣装>を見ながら答える。
「なかなか最先端の魔導具ですね。いざとなった時の安全装置とか、色々配慮してるのが見て取れます。おぉ、しかも細部に至るまでしっかりと構成させれている!すごい!」
予想以上の反応にテセスは「あ、そ、そうね。」とちょっと引いた。
「それでは、これより試合を始めます。お互い悔いのないように!それでは始め!」
ルー先生の指示が入る。
「ふっ!先手必勝!<大地獄炎>」
すぐさま放たれた地獄の炎は真っ直ぐ<魔法的衣装>を眺めるアランに向かった。
「あっ、ちょっとそれは卑怯ですよ。<魔法障壁>」
俺は魔法障壁を展開して炎を防ぐ。
そしてお返しと言わんばかりに<超滅連獄炎>を発射した。
灰でさえ燃やす炎がテセスを襲う。だがテセスもそこいらの生徒ではない。<魔法障壁>を二重に掛け、威力を減退させながら避けた。
さすがにアランが放つ魔法だ。
普通の<超滅連獄炎>ではない。
「...........ぐぅ........。何これ?本当に<超滅連獄炎>なの?」
全ての炎を防ぎきれずにテセスは火傷を負った。
しかし手慣れた手つきで<大回復>を瞬時に掛けて余裕の顔を見せる。
「やっぱりあなた変ね。普通相手が回復魔法を掛けてるんだから、チャンスなのに。」
「そうだけど、どれだけ回復速度が速いか見て見たかったからな。」
「そう、案外頭の回る子なのね。てっきり魔法バカかと思ってた。」
「そんな魔法だけに頼ってはいつかは負けてしまうし、魔力だってすぐに尽きてしまうし。」
「ふっ。なら尽きさせてみせようか?」
テセスは<黒き手>の魔法を唱える。
テセスの背後に描かれた二つの魔法陣から黒色の手がいくつも現れ、それはアランを掴もうと左右に別れて素早く進む。
アランは黒色の手の進行方向を予測しながらジャンプしたり体を反らして回避していく。
そしてアランは気付く。ジャンプしたその地点には罠魔法が仕掛けてあると。
「あら?気付いたかしら?でも遅いわよ!」
テセスは黒色の手を巧みに操り、絶対にその罠魔法へと誘導する。
その操作はいやらしく、どう足掻いてもそこへと誘導される。
「これは凄いな、巧みな技術だ。」
「ふっ、そう関心している暇はございませんよ。<魔爆発罠>」
アランがその地面に着くと、その瞬間に爆発が起こる。
しかも黒色の手の攻撃も混ざっている、このダブルパンチでは並みの生徒ならやられてしまうだろう。だがこちらは元魔王。
黒煙を<裂突風>で吹き飛ばし、何事もなかったかのように振る舞いをした。
クラスだけではなく、テセスでさえ驚く。
「本当............なの?あの猛攻で無傷って。」
「確かに<黒き手>によって<魔爆発罠>の地点まで誘導するのは良い考え方だ。だが考えなかったか?闇魔法の初級魔法<黒き手>。これはあくまで拘束する時や牽制する時に使う。それは期待出来るような威力はないからだ。」
「威力がない............?そんな訳ないでしょ!<黒き手>は確かに他の魔法と比べて威力は小さいけど、ある程度まではある筈よ。」
「ある程度までと言うことは<魔法障壁>くらいで防げる程度か?」
あの時俺は全方向に対して<魔法障壁>を使用した。
そうする事によって二つの魔法を防いだのだ。もしテセスがどっちかの魔法を上位の魔法にしていたのなら、結果は変わっていただろう。
だがしかし、妙だな。
普通こんな場面なら悔しさの表情をしたりしてもおかしくないのだが、テセスはどちらかと言うと悔しさより嬉しさが上回っているように見える。まるで術中に俺が嵌まっているかのように。
「そう、ならもうちょっと威力を強めるわよ。」
「あぁ、そのつもりで構わない。」
するとたちまちテセスは銃を取り出し、アランを撃った。
パァンと乾いた音が鳴り銃口から弾丸が発射される。
アランは前進しながら避け、先ほどテセスが使用した<黒き手>を発動する。
アランの背後に魔法陣が四つ現れ、そこからいくつもの黒色の手が発射した。
「へぇ、さすがね。私が使うよりも本数が多いわね。でもっ!」
テセスは左手で<黒き手>を発動し、右手の銃でアランの黒色の手を相殺していく。だが、なにぶん数が多い。テセスの肩や腕を切っていく。
<魔法的衣装>は身を守る能力は高くない。
あくまでも緊急時の為の効果が掛けられているだけだ。要は自分の力で守れと言うことだ。
俺はまだ相殺しきれてない黒き手を操作し、さらに速い速度でテセスに攻撃する。
「さぁ、来なさい。いつまでも相手したあげるわ。」
テセスは右手の銃で黒き手の半数を相殺した。
しかしその半数はテセスの体を突き刺した。
「ぐぅ。................ふっ!」
テセスは突き刺さった黒き手を無理やり引っこ抜く。黒き手は消え、テセスは回復魔法を自身に掛ける。
「明らかに今の攻撃はわざと食らっていたようだが、何か意味があるのか?<黒き手>を消滅させる為か?」
「さぁ?どうでしょうね。そうかも知れないし、違うのかも知れない。試してみたら?」
「そうだな。<電撃貫通砲>」
俺はテセスの周りに三つの<電撃貫通砲>を展開し、同時に放つ。
テセスはその魔法に驚くが、そうこうしている暇はない。一つの<電撃貫通砲>を<大地獄炎>でかき消し、間発入れずに<黒き手>でもう一つの<電撃貫通砲>を受け止める。
最後の<電撃貫通砲>をテセスは体で受け止める。
「がっ...........はっ!.............」
テセスは全身に電撃を浴び、片膝を付こうとするが<超回復治療>ですぐに全回復して立ち直す。
次の攻撃の隙を与えずにアランは接近戦に持ち込もうと急接近した。
「やっぱり.........」
不敵な笑みを浮かべながらテセスは向かってくるアランにナイフを振るう。
それはアランの首元に向かうが、それははばかれた。アランは昨日のように左手でナイフの手を掴み、右手でそのナイフを落とす。
「これで.........?」
アランは目を見開く。それもそうだ、ナイフを落とされたテセスがアランのその腕をしっかりと掴んで離さないつもりだからだ。
「一体何を?」
「決まっているじゃない。私は回復魔法の速度が速い、そしてあなたはもう魔力が残ってない。その意味、分からないあなたじゃないでしょ。」
「ふっ、そういう事か。」
俺は自分とテセスの地面を見て納得する。地面にはさっきした罠魔法より強力な魔法<強魔爆裂罠>が設置してある。確かにこれを発動させれば強力なダメージが入る事は確実だろう。
テセスはすぐに回復魔法を使うつもりか。それならば、テセスは負ける事はない。
対して俺は回復魔法が得意ではない。回復より攻撃を選ぶからな。
テセスは満足した笑みを見せ
「じゃあね<強魔爆裂罠>!」
瞬間、アランとテセスは巨大な爆発に飲み込まれた。
バアアアァァァンンと言う音を出して、爆発は静まった。その爆発の中心には互いに右手を突き付け合っている人物がいた。
「驚きね。まさかまだ魔法を使える余裕があったなんて。でも、もうそろそろ限界なんでしょ。素直に投降しなさいな。名誉は守ってあげなくはないわよ。」
テセスは余裕の表情だ。
一方アランは服のあちこちが敗れて黒炭が付着している。
「テセス先輩。もしかして俺はもう魔力切れなんじゃないかと思っているんじゃないんですか?」
「ええそうよ。さっきの<電撃貫通砲>だって威力が弱かったし。無理しなくて良いのよ。」
そう、さっきアランが撃った<電撃貫通砲>は威力が弱かった。だからこそ、テセスは直撃しても回復魔法を掛ければ間に合った。普通なら直撃したら<魔法的衣装>が限界と感知する。
でもしなかった。
「やっぱり俺の予想は合っていたか。わざと威力を抑える事によって、魔力がもう残ってないと錯覚させれるって。」
「は?...............だったら、私が最後に畳み掛けるのを待って返り討ちにしようと思ってたのかしら?」
「自分の考えが当てられても顔一つ変えないのは凄いな。」
「勿論、まだ私が負けるとは確定していないからね。」
「じゃあ、俺とテセス先輩、どっちが速いか勝負しましょう?」
「えぇ、その勝負、乗ったわ。」
そして二人は魔法を発動しかかる。
「えっ!どうして!?」
ルー先生が悲鳴にも近い声で叫んだ。
アランとテセスはそのルー先生の方向へ振り向く。
そこには、白い毛皮で覆われた巨大な獣が今にも攻撃しようと睨み付けていた。
主人公........めちゃめちゃ特大魔法使いますね笑




