魔王の好奇心
「あ、おはよアラン。」
「うん...........おはよう。」
生気が感じられない位にへとへとになったアランが返事をした。
大体の事を察したレイナは微笑した。
「はぁ。酷い目にあった。最後にレイナが爆弾投下しなければあそこまでにはならなかったと思うぞ。」
「魔王様、水をどうぞ。」
ルミナリエはアランに水の入ったコップを差し出した。
アランは「ありがとう」と言い水を一気飲みした。周りを見てみると、レイナとルミナリエしかいないようだ。
「その..........昨日は申し訳ありませんでした。」
ルミナリエはもじもじと頭を下げる。アランは左手を振った。
「そんな謝らなくてもいいよ。エリカの行動には千年前から慣れてるし、ルミナリエだって逆らえないのは知ってるよ。」
「はい。分かりました魔王様。」
「ん~その魔王様って名称も要らないかな。周りの奴らみたいにアランでいいよ。俺はかしこまった言い方は好きじゃなくてね。」
「そうそう、アランで良いんだよ。なっ!アラン!」
そう言ってレイナは腕をアランの肩に掛ける。
ルミナリエはまるでこの世の終わりのような顔をするが、レイナは全く気にせずアランの頬をぷにぷにと触る。
「別にここまでしろと言う訳じゃないが、友達感覚で接してくれて構わない。」
俺はレイナを引き剥がした。
「それでは..........いや、じゃあよろしく?.....アラン..............様。」
たどたどしくルミナリエはアランに右手を出した。
アランは「よろしくな」と右手を出して握手をする。
「あら、今さら握手をしてるの?」
寝ぼけたリースが「ふぁーあ」と眠そうな体を動かしてコップに水を注ぎ、ぐいっと飲んだ。
「なかなかルミナリエが話し方とかを変えてくれなくてね。」
「あぁそんな事で話してたのね。私も最初はそうだったし仕方ないわよ、なんてったってかの魔王様だし。」
ルミナリエは「うんうん」と頷く。
「最初から普通に接してくれたのはレイナとエリカくらいなものか。」
「私を呼びましたか?」
「うぉ!びっくりした。」
アランの背後から不敵に笑うエリカが現れた。
「さ、みんな揃った所で朝ご飯を食べたら早めに学園にいきましょうか。」
「ん?何かあるのかリース?」
「あるのよ。アランも気になっていたんじゃないの?学園交流祭の試合に使われるスーツの事。そのスーツについての授業とかがあるのよ。」
途端にアランの顔が明るくなった。
前から気になっていたから妙にワクワクするなぁ。ふっふっふ、楽しみだ。
「あっ、アラン嬉しそうになった。」
「千年前から新しい物好きでしたからね。」
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そして学園にて。
「はーい、これから学園交流祭で使用されるスーツを紹介します!」
その言葉に「わー!」とクラス中が盛り上がる。
やはりみんなも同じ気持ちだったか。
そしてルー先生の横から黒を基調とした特殊なスーツを着たテセスが現れた。特殊なスーツは見た感じからも動き易そうに見える。服が別にぴちっと肌に密着していない所もまた良い。
黒か............別にデザイン的には良いと思うが、暑くないのだろうか?
「今回の授業は<魔王学園戦撃委員会>の序列五位のテセスさんに来ていただいてこの特殊なスーツ、通称<魔法的衣装>の使い方等を皆さんに説明します。」
「先生、説明するって言っても俺達は別に<魔王学園戦撃委員会>のメンバーでもないし、意味はあるんですかー?」
クラスの一人が声を上げた。
それに続いて「確かに」
「私達が着れる物じゃないし」
「こんなスーツ、生涯着ることあるのか?」
「お前はないだろ。無論俺もないけどな。」
のような自分を卑下した声が数珠繋ぎの要領で次々に上がる。
普通ならここでルー先生が何か気のきいた事を言ってクラスの生徒を慰める所だが、今のルー先生は不敵な笑みを浮かべている。
まるでその言葉を待っていましたと言わんばかりだ。
「ふっふっふ。皆さん、きっとそう言うだろうと思ってました。しかし皆さん!何も卑下する必要はありません!何せ今の<魔王学園戦撃委員会>は残念な事に先日一人大怪我で学園交流祭に参加出来なくなったのです。そうですよね、テセスさん。」
「そうよ。しかも学園交流祭のルールとして、何かあった時用に補欠が二人認められている。今回は君たち一年にも補欠を頼もうと決まったの。だからリースさん、よろしくお願いね。」
テセスがリースに手を振る。
そうすると、クラス中の視線が一斉にリースへと集まる。リースは慌てて「あ、はい!」と答えるがクラス中の視線は消えない。
「リース、あなた<魔王学園戦撃委員会>の一員だったの?」
レイナがクラス中の思った事を聞く。
その質問にリースはゆっくりコクリと頷く。次の瞬間、クラス中が驚きに包まれた。無論、俺だって初耳の事実だ。配下の事情とかは把握しておかなくちゃいけないのに、しくったな。これからは気をつけなければ。
クラスの反応にテセスも驚く。
「なに?リース、いくら一年の奴が<魔王学園戦撃委員会>の一員で二年とかに恨まれないようにってするのは構わないけど、クラスのみんなには知らせていんじゃないの?」
「まぁ、そうですけれど。言い出すタイミングが掴めなくて............」
「まぁまぁ。これでリースさんが<魔王学園戦撃委員会>だって言うのは皆さん分かりましたし、良いではありませんか。それではテセスが着ている<魔法的衣装>についてご説明しましょう。」
ルー先生が後ろに魔力の黒板を作り、そこに<魔法的衣装>の全身が写し出される。
「この<魔法的衣装>には装備者の身体的状況が正確に計れるようになっており、装備者の限界を越えようとすると自動的に運営の方々に知らせが届いて退場となります。当然装備者には回復魔法が掛かるようになっているのでその点も安心なのです!」
ルー先生は凄い気迫で説明している。そんなに興味があるのか、もしかしたら俺と同類の魔族なのかも知れないな。
「ルー先生ってなんとなくアラン様と似ていますね。」
「ルミナリエもそう思うか。丁度俺もそう思ってた所だ。」
「ルミナリエ、今のあなたはあくまでもお姉さん役だろう。なら様は付けては駄目だぞ。」
二人で話していた所にミネセスが入ってきた。
ルミナリエは「確かに」と気付いてミネセスに「分かりました」と返事をした。
用を終えたミネセスは一つ頷いてイフンの定位置に戻る。イフンは相変わらずながらミネセスに対する反応をどうしていいか分からずおどおどしている。
「やはりイフンは何時も見ていて飽きませんね。」
「そうだな。好きなら好きって言っちゃえばいいのに。」
ロントは苦笑した。
「それが出来ないのも恋ですからね。」
「おっ、ロントも言うようになったじゃないか。そう言うロントもどうなんだ?確かライアだったっけ?ヘイネに取られないか心配か?」
瞬間、ロントの魔力が乱れた。要するに図星って言うことだ。
「アラン様、ご冗談を。ライアとヘイネとの関係は別に三角関係でもないです。古い親友ですよ、親友。決して恋など抱いてないです。」
「まっ、本人がそう言うならそうしとくよ。」
「はい。それより、<魔法的衣装>の説明も終わるのでこれから体験授業に入ろうとしてますがアラン様はどうなさいますか?」
「どうって、体験授業か...............やれるんだったら体験してみたいが人数が多ければ遠目で解析に回るつもりだが?」
「そうですか。<魔法的衣装>は結構な最先端技術なので是非ともアラン様に体験して欲しかったのですが。」
「そうか、なら立候補してみるか。」
丁度ルー先生が体験する生徒について募集を募っていた所なので俺は手を挙げた。
しかし他の生徒もちらほらと手を挙げている。その状況を見たエリカはアランに耳打ちする。
「アラン様、ここはルミナリエの実力を見せる良い機会かも知れません。」
「確かにそうだな。でもそんな実力を見せちゃっていいのか?力はむやみに使うと身を滅ぼし兼ねないが。」
「それは千年前の話ですよ。今はこんなにも平和になったのです。しかも、最近ルミナリエの所に男子がいっぱいくっついてきて対応がわからないとルミナリエもおっしゃっていましたし、寄せ付けない為にもなります。」
「だったらその対応の仕方を学べばと思うが、ルミナリエも体験したいと手を挙げてるし、そうしよう。」
「承知しました。」
エリカは「先生!」とルー先生を呼んだ。
「はい、エリカさん。なんでしょう?体験したいのなら手を挙げてくださいね。」
「いえ違いますわ。私はルミナリエを推薦致します。」
普通に手を挙げていたルミナリエが「え?」とポカンとした表情になる。
テセスは「エリカ?確か姓はエリード............」と呟く。
「そう、あのエリード家の者が推薦するほどの実力者なのね。ならリース、あなたと模擬試合をしなさい。そろそろあなたがどれだけ強くなったか知りたいし。」
「はい分かりました。ルミナリエ、<魔法的衣装>の着方とかは教えるからこっちに来て。」
「はい。」
リースはルミナリエを連れて学園の更衣室へと歩いていった。
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