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得意不得意 

投稿してからのアクセスの伸びにニヤついている今日この頃

沈黙した教室にテセスの声が響く。


「一体どういう事ですか?回復魔法が得意だとしても、それなりの攻撃魔法なら使える筈では?」


「普通はね。でも私は周りの人よりちょっと違うの。なんとか<大地獄炎(メガブレイン)>は書けるんだけど.................」


テセスは空中に<大地獄炎(メガブレイン)>の魔法陣を描いた。

しかしその魔法陣は中途半端で発動したとしても、威力は期待出来ない。せいぜい<大炎(フレイム)>の強化版くらいなものだ。


本気でやっているのか?


あれだけ高位な回復魔法を発動した者がこの様子だと言うのか。


「それ...........本気でやっているのですか?」


「はぁ!?当たり前でしょ。驚くのは良いけど、そんな疑惑の目で見てもしょうがないわよ私本気だから。」


テセスの目は本気っぽい。

恐らく本当だろう。偽ったとしても、何も得はない筈だ。


「そうなのか.........。すいません、疑って。これは俺の早とちりでした、すみません。」


アランはテセスに頭を下げた。


「えっ、あ.......うん。いいわよそのくらい。小さな事をとやかく言うような私じゃないわ。」


「ありがとうございます。なら俺はここで、<|空間転ーー」


「ちょっと待って!」


俺が魔法を唱えようとすると、テセスが大きな声を張り上げた。

俺は「どうしました?」と聞く。


「あっ、...........いやその.....................何でもないわ、ごめん。」


テセスはその場でもじもじし始めた。

急にしおらしくなったテセスにアランは不思議な表情を浮かべながらも「あ、はぃ。」と言って<空間転移(テレポート)>を唱えた。


視界がぐにゃりと変わり、家の前へと変化した。

俺はテセスが何か言おうとした事に疑問を抱きながらも扉を開けた。


むぎゅう。


何者かが扉を開けたアランに抱き付いてきた。アランは何時ものエリカだと思い肩を掴んだ。茶色の髪がアランの手に掛かる。


ん?茶色?

そう茶色なのだ。


エリカの髪の色は黒。違うのだ。レイナは銀髪、リースは金髪、ルミナリエは茶色。


「お、お帰りなさいませ魔王様。私にします.........か?」


恥ずかしそうに上目遣いでド直球にルミナリエが言った。

アランの体が以外過ぎる出来事に付いて行けず硬直する。


「え..........ルミナリエ?」


「はい。」


妙な静けさが空間を支配する。あまりの緊急事態に周りに助けを求めようとすると、クスクス笑ってる少女が二人。「はぁ。」と 右手を額に当たってる少女が一人。


大体の事を察したアランはゆっくりとルミナリエを離した。

ルミナリエは「ん?」と首をちょこんと傾げた。


「レイナ、エリカ。お前らルミナリエに何を仕込んだんだ?」


「何言ってるの、私は何も言ってないよ。ねっ、エリカ?」


「勿論ですとも、ただアラン様が喜びそうな事を独り言していた所、たまたまルミナリエが聞いてしまって。ねぇルミナリエ?」


ルミナリエは頷いた。


「いやいや絶対二人がわざとしたんだろう。ルミナリエ、一体何を言われたか知らんが俺はそんな事されるより、素のままが良いと思うぞ。」


「は、..........はぃ。」


ルミナリエは下を向いて頬を紅潮させた。

レイナとエリカは自分たちが思っていた展開とは逸れたのでちょっと悔しそうだ。


リースがルミナリエに近づき肩を回してこの場から退避させた。


「まったく.........レイナとエリカもほどほどにしときなさいよ。ルミナリエは今まで戦闘の知識と魔王への畏敬の念しか身に付けていなかったんだから。」


「はーい」「ふふっ、分かりましたわ。」


二人は全然反省する素振りすら見せずに答えた。

そしてレイナは晩御飯の支度を始めた。リースと、先ほどまで頬を紅潮させていたルミナリエはレイナの指示の下、一緒に料理をしていく。


その姿を椅子に座りながら見ていると、隣の椅子にエリカが座ってきた。


「懐かしがっているのですか?千年前の光景を?」


「うんまぁ。あの時は大勢だったけど。懐かしいな、俺が料理の手伝いでもしようとしたら物凄い顔で拒否られたっけ。」


さすがの俺もあの時は「あ、はい。」と一歩下がったな。それから絶対迷惑になるから料理を手伝おうとか言わないようにしたんだよな。


「あぁそういえばそんな時もありましたっけ。あの時はメイドの方々もびっくりしていましたよ。魔王様が手伝おうとするなんて予想もつかなかったですしね。」


「へぇー、そんな事があったんだ。まっ、急に魔王が手伝うって言われたらそうなるわよ。」


リースがおかずを乗せたお皿をテーブルに運んできた。

そして次々と具材が入ったお皿が並べられる。


レイナが最後のお皿を並べた所でみんな席に着いた。


「「「「「いただきます」」」」」


俺は唐揚げをひょいっと口に入れる。うむ、やはり美味しいな。現代になって食材の調達や品質が向上したのもあるが作り手が良いな。


俺が満足気に食べているとレイナが「ふふっ」と笑った。

何か付いているのかと口を拭くが何も付いていない。


「違うよ、自分が作った料理を美味しく食べてもらうのって嬉しいんだよ。ねっ、ルミナリエ。」


「勿論です。自分はただお手伝いしただけですが嬉しいです!」


そう言いながらもルミナリエは料理にがっついている。

聞けば、バルデンの下で生活していた時は食卓に並ぶような物は満足に食べられなかったらしい。


リースは「あ!」と思い出すように言った。


「そういえば、アラン。テセスさんに聞いた結果どうだった?」


「本人は回復魔法が天才的に出来るだけって言っていた。その場は特に深くは聞かなかったが、何かあるのかはたまた本当に天才なのか。」


「しかし、回復魔法だけ天才とは...............あり得るのでしょうか?」


ルミナリエがご飯をごくんっと飲み込んで尋ねた。


「何とも言えないな。昔はそんな奴いなかったし、もしかしたら現代だからこそあり得るのかも知れない。昔の感覚とは随分違うみたいだし。」


「そうなのですか。」


「そうそう、例えば魔法実験の内容って昔と今では大分違うよなー。」


「確かにそうですわね。昔は魔法の改良や変換効率を主にしていたのに、現代は魔力薬品の調合を主にしてますよね。前々から不思議でしたが、あれって何の意味があるんですか?」


「それはねーー」


リースが立ち上がり、得意気に話始めた。

まるで先生のような雰囲気だ。


「確かに昔やっていた魔法を改良するのも重要だけれども、魔力薬品の調合は今の時代ではもっと重要視されるようになったの。はい、レイナ答えて。」


リースは先生のようにレイナに指を差した。

レイナは「えっ、私?」と嫌そうな感じをさせつつもしっかりと答える。


「現代じゃあ、争いなんて滅多にないから魔法をあまり満足に扱えない人達も出てくる。そうなるといざとなった時に回復魔法が使えない時とか、身を守れない時がある。だけど魔力薬品を調合した物なら平等に誰でも使える。だからより重要視される。だよね?」


「そう!魔力薬品を調合した物、つまり魔導具の存在は今の世界では無くてはならない物となっている訳よ。」


俺は手を挙げた。


「はい、アラン。」


「今の説明で魔導具の重要性は分かったけど、例を上げるとしたらどんな物が魔導具に当たるんだ?」


「ふふっ、良い質問ね。アラン、この前私と一緒にゲームセンターに行ったでしょ?」


「あぁそういえば行ったな。」


アランが答えた瞬間、エリカがギョロッとこちらを向いてきた。

師匠であるエリカが凄い眼光で向くのでルミナリエもこちらを向いた。


「へぇ~、リースとアラン様はご一緒にゲームセンターに行かれましたの?」


「え?あ、..............あぁ。ちょっと用事があってな..............」


「師匠、ゲームセンターとは何なのですか?楽しそうな雰囲気ですけど....?」


ルミナリエがそっとエリカに聞く。エリカはルミナリエの耳元で囁いた。


「ゲームセンターとは、凄く仲の良い男女が行く愛のスポットの事なのですよ。」


「てことは、魔王様とリースは.................」


「ゲームセンターってそんな不埒な場所じゃないわよ!」


ルミナリエが最後まで言う手前でリースが憤慨する。

横で一部始終を見ていたレイナは「ははっ!」と楽しそうに腹を抱えて笑っている。


「ふー、やっぱ面白いねー。あっ、ちなみにエリカ、私もアランと一緒にデートしたよ。」


ここで爆弾投下。


そしてエリカの顔がにこやかになる。決して嬉しいと言う感情ではないぞ。もはや殺意まで感じるレベル。怒りを通り越した笑い。


教師役を演じて喜んでいたリースも一歩後ろへ下がった。

ルミナリエもエリカから感じる覇気に当てられ、ビビる。


「ほーん。そうなのですか。へぇ。ちょっとアラン様、じっくりとお話を聞かせてもらえませんか?ふふっ、何も取って食おうと言う訳でもないのに..............そんなにびくびくしなくてもよろしいのですよ。」


「え.......エリカ....。アランだって自分の意思で........」


リースがアランとエリカの間に入って庇おうとするが、エリカが一睨みするとリースはすぐにアランを差し出した。アランは逃げようとするが、レイナとリースとルミナリエはそれを押さえつける。


「お、おい!何をしてるんだ三人とも!」


「すいません魔王様。師匠には逆らえません。」


「早くエリカに怒られなよー」


「ごめんねアラン。せめて安らかに。」




「い、いやだーーーーー!」


注射をする前の子供のようにアランは嘆いた。




その後のアランは皆さんの想像にお任せしよう。

夏休みシーズン到来

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