その後の者達
アランの腹心とも言えるデモクレス。
千年前からアランに忠誠を誓い、共に大戦を生き抜いた強者。
現代では地下にある魔王城の一室で生活している。理由は、今までずっと魔王城で暮らしていたのでその生活習慣が身に付いて離れないらしい。
それと、もし魔王軍に在籍していた者が来たらすぐに対応出来る為だと。
そのデモクレスの一室にコンッコンッとノック音が鳴る。
「入っても良いですよ。」
「失礼します。」
そう言って入って来たのはネシウス学園長だ。
元は魔王軍、魔王城への入り方を知っている。
そのネシウス学園長は目を赤くしてデモクレスの机を叩いた。
普段貧乳ネタとかでしか怒らないネシウスがここまで怒っているんだ。並々ならぬ事情があるのだとデモクレスは驚いた。
「デモクレスさん、どうして魔王様が転生なさった事を言ってくださらなかったのですか!?」
「え、、あぁその事かい。魔王様が直々に言っていたんだ、皆には知らせないでくれと。さすがに魔王様に言われては、報告する事も出来ない。」
「それじゃあ、今魔王様は何処にいるのですか?」
「すまないネシウス。それも無理なのだ。本当にすまない、だがネシウスも可哀想だ。ヒントを言うのならば灯台もと暗しだ。それ以上は言えぬ。」
ネシウス学園長は「うーん」と貧乏ゆすりをするが、このままでは埒が明かないと気付き退出していった。
扉をバタンッと勢い良く閉めて去るネシウス学園長。
デモクレスは「はぁ」とため息をついた。
「退いてくれたから良いもの、少し心が傷みますな。」
「礼を言いますわデモクレス。相変わらずネシウスは真面目なご様子、これでアラン様が学園の生徒だと気付けば大泣きするでしょうね。」
デモクレスの後ろのカーテンの中からエリカが出てきた。
「確かに。と言うかエリカよ、魔王様の所には行かなくていいのか?今は下校中ではなかったか?」
「えぇそうですけど、ちょっとデモクレスに聞きたい内容がありましたの。」
「おや、何かな?」
「イシュタルと言う大天使についてです。」
デモクレスはその言葉に「ほう」と言葉を返す。
何か知ってると推測したエリカはさらに聞く。
「やはり何か知ってらしたのね。」
「あくまで又聞き話だがね。まだエリカが魔王軍に入る前に君の父親から。」
「ならその話を聞かせてもらえません?」
デモクレスは本当に言おうか考えるが、エリカは腕を組んで「早くいえ!」と言いたげな様子になっていた。
ただでさえ静かな空間なのに、より一層ピリピリとした静けさが漂う。
「分かった分かった。又聞きで良いなら話そう。」
その返事に明らかにエリカは笑った。
デモクレスは「あの父親からは考えもつかない娘だな」と小声で呟く。
「魔王様が恋愛感情を失っているのは知っているだろう?」
「もちろん。」
「昔、まだ魔王様が幼き頃。とある大天使が魔王様と接触した。二人は仲の良い関係だったそうだ。仲良く二人は遊んだりしていく。だがそんな日常は長くは続かなかった。」
「その大天使が天界からのスパイだったから?」
デモクレスは首を振る。
「違う。当初の目的はそうだったらしいが、放棄した。だから天界側は怒ってその幼き魔王の所に軍を派遣した。結果、大天使は幼き魔王を庇い重症を負った。そこで幼き魔王様は自分の恋愛感情を代償にその大天使を救った。その後は、助けられた大天使はその地位を剥奪される事はなかった。恐らく代わりになる者がいなかったのだろうな。」
「その大天使の名前がイシュタルと言うのですか。へぇ、アラン様にそんな過去があったとは初耳ですね。ありがとうございました、では私はこれで。」
エリカはすぐさま退出しようとした。
だがデモクレスが「待て」と声を掛ける。
「お主が入れてくれって言った転校生じゃが.........」
「何かありましたの?」
「いや.........姓をエリアルとしたのは、ネシウスに疑われないかと......」
「あぁ、その事についてですか。まぁ心配ないでしょう、いざとなったら私が言いますわ。」
そう言ってエリカは出ていった。
妙な静けさが部屋を埋め尽くす。
「うーむ。本当にエリカは誰に似たんだ?父親は真っ直ぐな性格で.............母親か?そういや見たことないな。やはり母親の影響なのか。」
うんうんとデモクレスは頷いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あーおいし。」
ライアは手に持ったジュースが入っているコップを飲んで感想をこぼす。
そしてテーブルにコップを置いて今度はお菓子を食べ始める。
「お味の方はよろしいですか?」
隣に控えていたメイドが聞く。
「もちろん!メイドさんが作ったお菓子は最高だよ。」
「お褒めにあずかり光栄です。あら、もうそろそろヘイネ様がご帰宅されるお時間ですね。」
メイドが時計を見ながら言った。
それに釣られてライアも時計を見て、メイドと一緒に玄関まで向かった。
ライアとメイドが向かうと、丁度ヘイネが帰って来ていた。
「お帰りなさいヘイネ様。」「お帰りヘイネ。」
「あぁただいま。多分もうそろそろロントも来るんじゃないかな?」
「なんだ?呼んだか?」
「おわっ!びっくりさせるな、来たなら来たと言ってくれ。」
ヘイネはびっくりした様子でロントを屋敷に案内する。
ライアとメイドも一緒だ。ロントは窓からの景色を適当に眺めている。実際、ライアとどんな風に接していいのか分からず途方に暮れているのだ。
見かねたメイドが話題を出す。
「今日はどうでしたかヘイネ様?」
「学園長に退学される所をアランが助けてくれたよ。まさか今まで敵だった人に助けられるのも、気分がいいね。そんなに心強いって事だね。」
嬉しそうにヘイネは笑った。
その顔を見てライアも笑った。
「ヘイネ安心しきった顔をしてるね。ロントは相変わらずだね、もう他の人と喧嘩しちゃダメだよ。ロントの手は痛いんだから。」
「わ、分かってる。そんなに心配せずとも意味のない喧嘩などしない。昔とは変わったんだ。」
「ふー、良かった。ヘイネもロントが何かしそうだったら、止めてあげてね。」
「ああ。ロントくらい大丈夫だ、すぐにノックアウトさ。」
右手をぶらぶらさせているヘイネにロントは「あぁ?」と睨む。
「誰がお前なんぞにノックアウトされるものか。あの時だって負けたのは誰だ?」
「さぁ~知らないね~」
明後日の方向を見るヘイネ。そのヘイネに食いかかるロント。
そしてライアは再び笑い声をあげる。これこそみんなが願った光景だ。
「ライア様。良かったですね。」
「うん!」
そう笑うライアの表情はとても華やかだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暗い。ただロウソクの火が明かりをもたらすだけの空間。そこにネルクレスとハイム、モファが座ってくつろいでいる。
ハイムは無表情でコップに入ったお酒をかき混ぜている。
そして一杯飲むと口を開いた。
「で、爺さん。結果はどうだったんだ?」
「上々じゃよ。バルデンは牢獄でゆっくりしているそうじゃ。」
「はっ、仲間が牢獄に入ったと聞いて喜んでいるなんて頭がおかしいとしか思えないぞ。」
ハイムはもう一杯飲んだ。
しかしネルクレスは安堵した表情を見せる。
「あやつはやり過ぎたんじゃ。神の力の末端を譲渡するなど、人道的とは到底思えんよ。それならば、我々が神を越えた方が早い。」
ネルクレスの顔には悲しさが見えてくる。過去によほど何かあったのだと見えた。
「そういえばさ、よくバルデンって生きてたよね。ぱっと見、死んでるようにしか見えなかったよ。」
「確かに、まぁ大体悪役はしぶといからな。」
モファは「うんうん」と頷いた。
そしてハイムはネルクレスを見た。それにネルクレスは笑って
「まぁわしもそうか。良き黄泉路であるのを願うのみじゃな、はっはっは。」
「なぁに、俺も同じようなもんだ。黄泉路か...........楽しみだな。一体どんな風景なんだろ。」
「..........なんか、ハイムって悪役ぶってるよね。」
その瞬間、ハイムが吹いた。
その光景にモファとネルクレスは楽しそうな笑い声を響かせる。
何か気まずそうにするハイムはガタンッとコップを机に置いてそそくさとその場を立ち去ろうとした。
「あーもう、それ位で拗ねるな。はいっ、ハイム。飲むよ。」
そう言ってモファは酒の入ったコップをハイムに渡す。
ハイムは目を合わせないように受け取り、再び椅子に座った。
「ふぉっふぉ。まるで子供じゃな。」
その後のハイムは完全に拗ねた子供ぽかった。
これにて神の策略編は終了です。
次章は学園に視点を当てていきたいと思っています。
それでは皆さん、出来たら夏にお会いしましょう。
それまでにブックマーク解除とかしないでくださいね。
(^_^;)




