リースの強さ
ポイントよ、上がれ
俺は周りを見渡す。
いや、森やん。こんな所に転移したのかよ。
「ひとまず、偵察でもするか。」
そこへ、一羽のカラスが飛んで来る。
俺は咄嗟に茂みに身を隠す。
恐らくアレは、リースが放った魔物だろう。
もう使っているとは、行動が早いな。
「それじゃ、俺も<魔物召喚>」
俺が唱えると手に、一羽のかわいいヒヨコが出てくる。
こいつは、召喚しても弱くならないし、なにしろ見つかりにくい。
俺は早速、飛ばす。
数十秒待っていると、頭の中へ映像が流れ込んで来た。
ほう、周りを固めているのか。
至って普通な戦法だな。少し、魔法でも打つか。
「<大炎>」
俺は手を上に上げ、魔法を放った。
あともうちょっとすれば、頭上から<大炎>が降ってくるだろう。
俺はヒヨコを通して、様子を伺う。
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「ふぅ、このくらいかしら。周りの魔物も召喚したし。後はあいつを見つけるまでだわ。」
リースは周りの魔物を見る。
やはり、本人は弱くなるがその代わり、この魔物を戦わせれば勝てるとリースは信じていた。
(ふっ、あの舐めた口をへし折ってあげるわ)
そんな事を思っていると、頭上から魔力反応が出た。
リースは素早く、何があるか探す。
だが、わからない。
アランの放った魔法には、透明化になる魔法も組み込まれていたのだ。
そんな事を知らないリースは、慌てて頭上に<魔法障壁>を唱える。
その時、アランの放った<大炎>がリースの<魔法障壁>に阻まれ、ジュワッと溶ける。
「ふぅ、危なかった。もうちょっと<魔法障壁>を発動させるのが遅かったら、今の私だと黒焦げになってたかも。」
リースは胸を撫で下ろす。
今のリースは、<魔物召喚>でかなり弱くなっている。
この状態では危険だろう。
そう思い、リースは周りを魔物で固める。
そして、魔物のカラスからの映像を見る。
「ん?これは。へぇそこね。」
そこには、一人で森の中を歩いているアランの姿があった。
「全軍出撃よ!」
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「これであいつは、ここに来るだろう。」
俺は足を止め、偵察に来たカラスの魔物から身を隠す。
こうする事によって、俺はここにいるとリースは考えるだろう。
あいつの性格から恐らく、あのカラスから俺が見えなくなった事から、俺がここに駐留してると考える。
だから、俺はあのカラスから見つからずにリースの背後を取れば勝ちだ。
まぁ、普通に戦えばすぐ勝ってしまって、俺が何者か怪しまれる可能性がある。
そういう事を考慮すると、ギリギリの所で勝利の方が怪しまれない。
俺は偵察のヒヨコからの映像を見る。
まだここへは来ないな。
暇だし、デモクレスにでも<思考伝達>でも飛ばすか。
<思考伝達>とは、魔力の波を対象者に飛ばして会話する魔法の事だ。分かりやすく言うと電話を頭の中で行うと思えばいい。
「聞こえているか?」
「はい。アラン様。」
「おお、良かった。久しぶりに使ったから、調子でも悪くなると思ったが大丈夫だな。」
「はい。今こちらの方ではアラン様の試合を中継しておりますが、目立つ魔法はお使いになりますか?」
ん~どうしよう?
ここで目立つ魔法を使えば、「あいつ何者だ?」となるな。
しかし、久しぶりに使いたいしな。
「恐らく使うと思う。しかし、久しぶりだなデモクレス。調子はどうだ?」
「すこぶる元気です。じじいは何時も元気ですからな。」
「千年も相変わらずか。嬉しいぞ。」
自分の顔がにやついているのが分かる。
嬉しいのだ、旧友とまた会えるのは。
「他の奴らは?」
「他は様々な職業に行ったり、魔王軍の教官をしたりしてますぞ。お会いになりますか?」
「いや、やめておこう。俺がこの時代に転生した事は、他の奴らには内緒で頼む。」
「了解しました。」
俺は偵察のヒヨコを見て、行動を開始する。
リースが近くに来たのだ。
「そろそろ切るぞ。あいつが近くに来た。」
「はい。お気をつけて。」
俺は<思考伝達>を切る。
リースの軍は、ここから北の方向か。
ふ~む。どう偵察のカラスの目を誤魔化すか。
普通の俺だと、すぐに破壊しているのだが、今はそんな事をせずに行きたいからな。
仕方ない、少々汚れるがあの手を使うか。
一方その頃、リースは
「ふーん。森に隠れているなんてバレバレよ。いいわ、森を火の海にしてあげる。」
リースはアランが隠れている、森の手前まで来た。
そして、リースは近くの魔物に、森に火を放たせる。
魔物は森に<大獄炎>を放つ。
瞬間、森は焼け、文字通り火の海になった。
リースは不適な笑みを浮かべる。
(ふっ、これであいつは選ぶ。このまま、火炙りになるか、私に倒されるか。楽しみね。)
だが、そんなリースの考えは壊される。
「確かに、森に火を放つのは良い考えだが、詰めが甘い。もっと強く火を放つんだな。」
リースのすぐ後ろに、アランが現れた。
魔物はアランを排除しようとするが、アランは素手で魔物の攻撃を止め、魔物を地面に埋める。
リースは恐怖した。
魔物の攻撃を素手で止め、そのうえ魔物を掴み、地面に埋めるなんて普通じゃないからだ。
それほど、アランは常識を越えている。
「な、なぜ?あなたは今頃、火の海の中にいるはず。」
「答えは簡単だ。地面を掘って来た。」
「は?」
そう、アランは上からの偵察のカラスの目を誤魔化すために、地面を掘って来たのだ。
カラスは上からしか、見れていない。
もちろん、アランが魔法を使って地面を掘れば、カラスは魔力を感知する。
だが、相手は魔王だ。
隠蔽など容易い。
「そういう事だ。わかったか?」
「意味がわからない。あのカラスから逃げるなんて。私の自信作よ。」
「まぁ、結果はこうだ。」
アランは両手を広げる。
視点が変わります。
「まぁ、結果はこうだ。」
俺は両手を広げる。
そんなに難しい話しではないけどな。
リースのその自信がなきゃ、ここまでうまく出来なかった。
その自信には感謝しよう。
さて、周りの魔物は全て倒し尽くしたし、どうしようか?
「くっ、<大炎>」
「やけくその攻撃では、俺は倒せないぞ?」
俺はリースの<大炎>を素手で消す。
さして、熱くもないな。
恐らく、<魔物召喚>に魔力を込めていたのだろう。
「それでもいいのよ。」
リースはポケットから、きれいな石を取りだし、手で握り潰す。
あれは、魔力石と言って、割ればその辺りに魔力が放出する。
その放出された魔力を吸収して、失われた魔力を回復する。
魔力の回復法としては、一般的だが回復する量は大きい。
「食らいなさい、<大地獄炎>」
アランは<魔法障壁>で受け止める。
その間にリースは後ろに後退する。
距離を取っておけば、それだけ相手の攻撃に対応できる。
「今度はこちらから行くぞ。<大地獄炎>」
瞬間、リースは咄嗟に横に飛び退く。
リースの後ろの木々が地獄のように燃え上がった。
リースはその光景を目にし
「化け物ね。なら、この魔法であなたを倒すしかないわね。」
その目は決意した、目だった。
この話が一旦区切れる所までいくまで、毎日投稿致します。