神の力
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ありがたや。
ホメスは体に傷を負い、顔には黒い炭が付着していた。
「一体?神には常時障壁があるのでは?」
「あぁそうだ。普通の神なら常時障壁が張ってあり、倒すのも一苦労する。だがしかしホメス、お前は違うな。」
「はぁ?何を言ってるんだい?さっきだって見ただろう、僕が障壁を使って<血対価戦雷電>を防いだ所を。まさか.....魔王。ふふっ、とうとうその目まで腐ったのかい?圧倒的な力の差を見せ付けられたからってそれはないなぁ。」
ホメスは笑いながらアランを見下す。
「おいおい、いつもより口数が増えてるぞ。暴かれてないとお前は信じたいのかも知れないが、俺の目にはしかと写ったぞ。その短剣で打ち消している姿が。」
俺の言葉にホメスは一瞬、虚を突かれたようになるがすぐに平常心を取り戻す。
ホメスの短剣を握る手から汗が出て、額からもうっすらと冷や汗が出てるように見える。
そのホメスの姿からますますアランの放つ言葉は威力を増す。
「............は?......ちょっと言ってる意味が分からないな。大体、僕が常時障壁を張ってるように見せかけても、特に効果は得られないと思うけど?まったく、これだから劣等種は早とちりが多くて困るね。」
「ふっふっ。ははははっ。」
塞き止められてた水が溢れたようにアランは笑い出した。
「何がおかしい?」
「劣等種?いやいや、様々な存在の上に立つ神様が劣等種如きに自分の能力を見抜かれても良いのか?神の名が泣くぞ。ホメス、お前は常時障壁が張れないんじゃないか?だからその物理法則が当てはまらない短剣を使って、常時障壁を張ってるように見せかけた。違うか?」
「..............」
ホメスは押し黙った。
「ち.......違う。大体、物理法則が当てはまらない短剣って何だよ!そんなあやふやな短剣ある訳ないだろ。」
「まぁ確かに、俺の言葉不足だな、悪い悪い。その短剣は物理法則でない魔法法則だけに絶大な効果を発揮するのだろう。しかもその短剣は一つ一つの生命が持つ魂にも大きく作用する。こんな所だろ。」
俺がホメスに切られた時、俺の体には何の傷もなかった。なのに切られた瞬間は動けなかった。その切られた時の不思議な感覚、その感覚が転生の魔法を使用した時と似ていたのでまさかと思ったが、本当だとはな。
ホメスは何も言えない。それは図星だと言う合図だ。
隣にいるエリカが不思議そうにアランを見る。
「本当にそのような剣があるのですか?別にアラン様のおっしゃる事は全て信用しますが、あまりにも特殊なので。」
「そりゃ疑うのも無理はない。だが、相手は神だ。様々な法則だって変えられるような存在だ。常識で戦おうとしたら、こちらの負けだ。例えば水の神がいたとしよう。その水の神に水の法則を当てはめようとしても、相手は水の神、法則くらいどうにだって変えられると思わないか?」
「うーん。まぁ、そうですが。」
「まっ、細かい事を考えても無駄って訳だよ。それにホメスはそこまで魔法を見通す目が良い訳でもないらしい。」
さらに自分に関する事を言われたホメスは怒りを露にした。
ホメス周辺の空間が悲鳴を上げているようにバチバチッと火花が散る。しかもその目はその眼光で人でも殺すのではないかと思うほどだ。
「どうしてそう思ったんだい?」
ホメスのその言葉には明らかなる殺意がこもっている。
その言葉にエリカは少しアランの腕の裾を掴む。神が放つ殺意だ。怖がるのは普通な反応だ。あんまし怖がってない俺の方がおかしい。
と言っても、完全に怖くない訳じゃない。確かに怖い。だが千年前の泥沼化とした世界を生きた者達はもっと怖い経験し、絶望したのだろう。その者達の思いを考えれば、大したことない。
「先ほど攻撃を仕掛けた際、俺は<一定魔力沈静化>を使った。お前はその魔法を短剣で破壊したが、<一定魔力沈静化>は暴走した吸血鬼にしか効かないぞ?」
「えっ?.......................う......嘘だ。そんな...........あっ、そういう事か。さては嘘だな。そうやって僕を嵌めようとしてるんだな。」
その見苦しいとまで思える姿を見て、さすがのエリカも同情の表情を見せた。
はぁ。そこまで秘密を知られるのは嫌だったのか。確かに神の中で常時障壁や、魔法を見通せない目を持つ神は、神として劣ってると見られてしまうだろうな。
だがしかし、だからといって罪が消える訳でもない。
ホメスが俺を誘き寄せる為にヘイネはわざと悪役を買った。一人の女の子を救いたいが為に。イフンは何も罪がないのに、酷い拷問と言う名の腹いせを受けた。
間接的とはいえ、元を辿ればホメスに着く。
「素直に認めれば良いんじゃないか?証拠はもう揃っている。」
「...............へっ。そうかいそうかい。いや...........そうか、死人に口なし。ふふっ。要するにみーんな死んでしまえば良いのか。」
ホメスは狂ったように不適な笑みをこぼしながら俺達を見た。
「あの........あの神、普通に死ねみたいな事言ってますが、よろしいのでしょうか?」
「ん~、まぁ良いんじゃない。神が死ねとか言わないとか、俺達の固定概念のようだし。それほど自分の秘密が知られて悔しいってことじゃない?」
「ああ、そうでしたか。それではアラン様、哀れな神に救済を下しましょう。」
エリカは優しく槍を撫でた。
俺も収納魔法からリエスベスタを取り出して、魔力をリエスベスタに込める。
「うざいうざいうざいうざいうざいうざい。あぁ、もういいや、来い!機械天使!」
ホメスが右手を上げると、ホメスの背後から二体の機械天使が現れた。
その手には白い杖が握られている。そしてその目は、完全に自我が失われていてまるで石像を見ているかのようだ。
「あの僕の姿を見ていた二人を殺せ!」
ホメスが指差した先は、アランとエリカの地点ではなく、その後ろにいるロントとヘイネだ。
ホメスはニヤニヤと笑う。アランが、自分に向かって来ると思った裏を突いたからだ。
「ちっ。エリカ。」
「はい分かっています。はぁ、せっかくアラン様と戦えると思ってましたのに。」
エリカは嫌そうな顔をしつつも、ロントとヘイネを助ける為にアランに背を向けて駆ける。
まずは魔法を発動しようとしている機械天使に向かって自身の槍を勢い良く投げる。その槍に機械天使は気付き、発動を中断して回避に専念する。
槍は遥か遠くの地面に刺さった。
その間にもエリカはロントとヘイネの所まで走る。
その隙にもう一方の機械天使はエリカに向かって<純愛なる明光>を撃つ。
「別に私は魔法の腕も一流ですわよ!<闇牢獄の最果て>!!」
エリカは機械天使と<純愛なる明光>を囲む形で、巨大な闇色をした箱を創り上げた。片方の機械天使が助けようと、様々な魔法を撃つがなかなか壊れない。
その間にエリカは自分の槍を回収し、ロントとヘイネの元へたどり着く。
その時、機械天使は内側と外側からの魔法攻撃で<闇牢獄の最果て>を破壊し、エリカを見つめてその技量を計ろうとする。
しかしエリカを見れば見る程、万物を零に還す魔力が見えたり優しい母のような慈愛の魔力が見え、訳が分からなくなった機械天使は判断不可能と思い、杖に魔力を込める。
「あら?さすがにその神聖な目では、私の魔力を判断しきれませんでしたか。まぁそうでしょうね、神々が恐れた魔王様と、慈愛に溢れたお母様の魔力。感情がない天使ごときには計れませんでしょう。」
その言葉を挑発と捉えたのか、機械天使は杖に魔力を集中させ<断罪の神刃>をエリカとその後ろにいる二人に向かって放った。
「危ない!<断罪の神刃>」
機械天使が放った光の刃を、エリカの後ろにいるヘイネは同じ魔法を使用して相殺した。
エリカはヘイネにまだそんな力が残っていた事に驚くが、もう一方の機械天使が攻撃に転じる前に倒そうと勢い良く地面を蹴った。
片方の機械天使が飛び掛かって来るエリカに照準を合わせ<純愛なる明光>を撃つが、エリカは華麗にかわし、距離を詰める。機械天使は杖で応戦しようとするが、時すでに遅し。
「[魔技][聖滅十字閃]」
エリカの持つ槍が妖しく光り、次の瞬間には硬い装甲を装備している機械天使の身に十字傷が入っていた。
そしてその十字傷はみるみる機械天使の体を黒く侵食していく。
エリカは水が流れるような軽やかさで、二体目の機械天使を狙う。
しかし、そう易々とやらせてはくれない。
二体目の機械天使は白い杖を地面に突き立て、[天技][慈悲なき審判]を発動する。
エリカの立っている地面の周りから、白色をした先が鋭い大きな十字架が次々に現れエリカを襲う。
「ふふっ。本当にあなた達は千年前から変わっていませんね。<闇牢獄の最果て>」
エリカは自分を囲む形で闇牢獄を創った。
そして大きな十字架達は全て闇牢獄に弾かれ、地面に転がり落ち消滅した。
機械天使は次なる一手を講じようとするが、<闇牢獄の最果て>を解除したエリカが魔力を纏わせた槍を機械天使が魔法行使する時に使う杖へと投げる。
機械天使は反応しきれず杖を弾かれてしまう。
エリカは一気に機械天使との距離を零距離にした。
「千年前の私のデータを使用しても、勝てる筈ありませんよ。」
エリカは零距離で<血対価戦雷電>を機械天使に放った。
通常の雷では鳴らないような轟音が空間に響き渡る。
その場に残ったのは、体に十字傷を負って苦しそうに悶え死んだ機械天使と黒焦げになっている機械天使。そして優雅に立っているエリカだった。
「伊達に千年もアラン様を待っていた訳でもありませんのよ。」
次回もお楽しみに。




