神と魔王
平原。その何もない平原に強者が二人。
一人は神、一人は魔王。どちらもただの人間には勝てない絶対的なる強者。
「死んでくれないとは、ずいぶん直球だな。」
「ん~。説明すれば長くなるけど、要するに神の中で僕はそこまで権力が強くないんだ。」
神はこの世に一人ではない。神々の中にも、階級制度みたいなものがあり上下関係が築かれている。この神、ホメスはその階級制度の中で中の上くらいなのだ。
「そこまで?確か、まぁまぁな所だと記憶してあるが?」
「うーん。まぁそうだけどさぁ。ほら、上には上がいるじゃん。僕の上の階級の奴らには、僕も頷くしか出来ない訳だよ。それで考えたんだ。神々から嫌われている魔王。そいつを殺したら上も黙ってはいられないよね。」
「自分の権力欲しさにここまで大きな計画を練ったと言うことですか。」
隣のエリカが言葉を吐き捨てた。
「そうゆう事。結構大変だったんだけどね、バルデンに僕の力の末端をあげようと近づいて魔王と戦わせようとしたけど、バルデン臆病者だからそこの子に力をあげちゃったんだ。」
ホメスはヘイネを指差す。
「でも計画は無事上手くいったから良かったんだけど。まさか魔王が僕の計画を予想していたのは想定外かな。」
「ヘイネの一件から、もう裏に神か天使かいるのは分かっていた。何せ完璧に神が使うような魔法だったからな。だから逆にそれを利用させてもらった。」
「へぇ。そういう事だったんだ。通りで...........上手く行き過ぎだと思ったんだよね。」
「素直に会話してる事は良いのだが、魔方陣を描く時はバレないようにしろと習わなかったか?」
アランは何もない空に<貫魔王槍突>を撃つ。
すると、パリンッと何かが砕ける音が聴こえてガラスの破片のような物が落ちた。
その光景にホメスは「ははっ」と笑う。イタズラがバレた子供のように。
「やっぱり魔王の目は誤魔化しきれないか。なら本気で行くよ、おいで[神技][神器召喚]」
ホメスの左手が光り輝き、そこには一降りの短剣が現れた。
刀身には薄い白色の文字が刻まれている。恐らく神の使う文字の一つだろう。
「それじゃあ行くよ、」
ホメスがそう言った瞬間にはホメスの体はそこにはいない。
「ここっ!」
エリカが素早く駆けるホメスを捉え、その槍で一閃した。
カキンッと言う金属の反響音が聴こえホメスは空中に跳び上がる。
「<断罪の神刃>」
「<深淵なる暗光>」
ホメスが放つ聖なる刃をアランは闇の光りで相殺させる。
そしてアランは追い討ちとばかりにホメスに風魔法<絶暴風切裂>を唱えながらホメスに近づく。
様々な方向に撒き散らされる風の刃をホメスはその短剣を自由自在に振り回して、その一つ一つの風の刃を防ぐ。
「凄まじい剣の技量ですが、まだまだですわね。<血対価戦雷電>!」
ホメスの上空に紅い魔法陣が出現し、そこから鮮血の雷が降る。
通常の雷の音とは比べられない程の轟音を出して雷はホメスに落ちた。
「ふぅ。まったく、女性なのにこんなに荒い魔法を使うなんて。」
あの鮮血の雷を受けた筈のホメスはゆうゆうとそこに立っている。
「やっぱり神が常時纏ってるあの障壁には敵わないな。」
「あれ?知ってたのかい?」
「ああ、<絶暴風切裂>をなんでわざわざ短剣で防ぐのかとちょっと考えてたら、それもそうだなと思ってね。そういえば、神って何時も障壁を張ってたっけ。」
神は、その存在を他の生物と区別する為に常時障壁を張っている。この常時障壁は極めて高位な者がやってみたが、それほど防御効果は得られない。
俺だって、せいぜい<大地獄炎>を防ぐくらいなものだろう。
それが出来る神は、より存在力が高い。
しかし魔王級の魔法を当てられるとさすがにヒビでも入る。その障壁を知られたくなかったホメスは隠そうとしていた。
戦闘において、自分の手の内は知られたくないものだしな。
「ちっ。私の魔法はその障壁を破るまでにはいかなかったと言うのですか。」
少し残念そうにエリカは言う。
だが、俺は見えた。ホメスはあの<血対価戦雷電>を常時障壁で守ったのではない。
現在、エリカはアランの魔力を取り込んだ事で魔法の威力ははね上がっている。ホメスは驚いただろう、別に大した魔力は込められてないと思ったら凄い威力があった事に。
それを常時障壁で守ったと俺達に思わせて何の得がある?
「ふっ、一体何を企んでいるか知らないがこちらは本気で行かせてもらうぞ」
「?、何のことかな?」
「別に大したことじゃないさ。」
ホメスは<神浄連獄炎>をアラン目掛けて放つ。
光り輝く聖なる炎がアランの眼前を埋め尽くす。
アランは<零の弾丸>を素早く、まるでガンマンのように撃ち放った。
それは聖なる炎を零へと変化させながらホメスの頬の数センチ横を貫いた。
「油断大敵ですわよ。」
「そちらもね。」
すぐさまエリカが攻撃するが、ホメスはその華麗な剣さばきによって槍を弾きエリカの隙が生まれた。そこをホメスは切ろうとするが............
「そうはさせないよ。」
俺はホメスの体に近づき、体術で投げ飛ばそうとしたがホメスはアランの接近に気付いて一歩退いた。
そこをアランとエリカは、<超滅連獄炎><血対価戦雷電>を同時に撃つ。互いの魔法は重なり合い、燃え上がる電撃となってホメスを襲い掛かる。
「おぉ、これは凄いな。でもっ!」
ホメスは天に短剣を掲げ、深くその重なった魔法に切り込む。
すると燃え上がる電撃はパカッと二つに割れた。
「危ない!<防魔法障壁>!」
アランはエリカの前へ飛び出て魔法障壁を張る。
その瞬間、エリカを狙おうとしたホメスの短剣がアランの魔法障壁ごとアランの体を真っ二つに切り裂かれる。
「ぐっ.....」
アランは苦悶の表情を浮かべながらも、まずはホメスを遠退ける事を最優先し<前方爆散>を唱えた。
たちまちアランの目の前には、家でも吹き飛ぶんじゃないかと錯覚するような大爆発が起きる。エリカは苦しそうなアランを抱きしめて後方へと下がる。
「まだまだ行くよ。」
「??」
ホメスの声がしたかと思えば、<前方爆散>の中から無傷のホメスがやって来る。
そんな筈はない。確かに、神が纏う障壁でダメージは入らない。しかしアランが<前方爆散>使用したのは、大爆発による爆風でホメスを遠退ける為だ。
さすがに常時障壁と言えど、爆風をまともに食らえば後退は普通するものだ。
だがしなかった。
ホメスは短剣を振りかぶる。
「<絶暴風切裂>」
アランは目の前のホメスに空間をも切り裂いていく暴風を繰り出す。
この暴風もホメスは一刀両断するかとエリカは思っていた。
しかし、ホメスは全ての暴風の一つ一つを短剣で打ち消していく。その隙にエリカはアランと共に後方へ下がった。
俺はホメスに切られた所を確認するが、何処にもそんな傷はなかった。
だがあの時、確かな痛みを感じた。そして体だって、そこまで動かせなかった。幸いエリカがだき抱えてくれたが。だったら何故傷がない.............?
「やっぱりそういう事か。」
「アラン様、お体は大丈夫なのですか?」
「あぁ、大丈夫だ。」
俺はエリカにそう言い、<絶暴風切裂>を打ち消したホメスを見る。
そして俺は平原を駆ける。エリカが突然の事に呆気に取られて反応が遅れ、魔法でのサポートに回る。
ホメスは最初は困惑していたが、絶好のタイミングだ。獲物が向こうからやって来るなんて。
俺は<一定魔力沈静化>をホメスの足元に発動させた。
ホメスは足元から出てくる魔法陣が描かれた包帯のような物を全て切った。アランはその行動に確信を持った。
「ほう、全て理解した。」
アランは左手で<深淵なる暗光>を、右手で<零の弾丸>をホメスに向かって放つ。そして<思考伝達>でエリカに<強制拘束鎖>を撃つように指示した。
触れれば消滅する暗黒の光。全てを零へと変換する弾丸。ニ十の拘束の鎖。全てがホメスに襲い掛かる。
「さぁ、どうする?神?」
ホメスは渋い顔をした。
その後、アランは三つの<超滅連獄炎>を一斉に放射した。
その地獄の炎で目の前が塞がれた。そしてホメスの周りからは、バゴゴゴォォォオオと爆音が聴こえた。
周りに不完全燃焼の黒い煙が立ち込める。その中から人影が出て来たと思ったら、その人物は体のあちこちに傷が付いていて、顔には黒い炭が付着している。
「.....くそっ。どうしてこの僕がこんな目に会わなくちゃいけないんだ。たかが千年前に地上の少しを征服した位の魔王が...........」
それは憤慨しているホメスだった。
10連休、夢のようですね。




