懐かしき共闘
アランはロントが驚いているのを見て「うんうんこの反応が普通だよな」と改めて認識する。
先ほどのルミナリエはアランの事を信頼し過ぎだったからなんかなぁ。
丁度<空間転移>を掛けてもらう前に、あの魔法禁止させる手錠を強引に外して魔法を放ったっていうのにルミナリエは顔色変えなかったし、信頼し過ぎだよなぁ。
嬉しい嬉しくないで言えば嬉しいだけど。
イフンとかミネセスは普通に驚いてぞ。
「やっぱり生きてらしたのねアラン様。まっ、疑う余地はありませんでしたが。」
尊敬の眼差しでエリカはアランを見つめる。
ロントも尊敬の眼差しだが、ヘイネはアランが脱走している事に疑問を感じて何も口に出せない。いやこの場で自分が何かを言えるような状況ではないと思ったのだろう。
「勿論元気に生きてたよ。それより、お前!ロントとヘイネが凄い良い感じに仲良くしようと言っていたというのに、よくも殺そうとしてくれたな!」
ロントとヘイネを殺そうとした男、バルデンはニヤリと笑う。
「ははっ、俺はそんな仲良くしましょうなんて展開、ちっとも面白味を感じないんだよ!」
「はぁ。面白い面白くないの問題じゃないんだけど。」
「アラン様。ここは久しぶりの共闘を行いませんか?昔の時のような戦い方を。」
「そうだな。千年後の魔族達にお仕置きするとしますか。」
アランは収納魔法から<零の弾丸>を取り出し、戦闘体制を敷く。
そしてエリカは自慢の槍を出して、アランに近づき首にカプリと噛み付いた。チュウチュウとエリカはアランの血を吸う。
ある一定量を吸ったエリカは満面の笑みを浮かべ、その目をより紅く宝石のように輝かせる。。その笑みは確かに魅力する能力があるだろう。その瞬間、エリカの魔力は急上昇しロントとヘイネに絶対的な強者を見せつける。
エリカの千年前の戦い方は、確かに槍を使い敵を倒していく時もあったがもう一つの戦い方があった。
それがアランの血を吸ってアランの魔力を取り込む方法だ。
アランの魔力は他の者より歪で濃い。その歪な魔力を取り込む事によってエリカはその戦闘能力が向上する。吸血鬼特有の能力だ。
「二人とも、立てるか?」
アランは二人に手を差しのべる。
ロントは遠慮して「問題ありません」と自力で立った。ヘイネは貶めた相手だから決まり悪そうに、しかし自力では立ち上がれないのでアランの手を掴み、立ち上がってロントの肩を借りる。
そしてロントとヘイネは後方へと下がる。これからの戦闘に二人は足手まといだ。戦力としても役に立てられない。
「くそっ!バルデン、裏切ったな!」
ヘイネは呪詛を浴びせるように言った。
しかしバルデンはさらりと聞き流す。
「何を言っているんだ?所詮この世界は面白い面白くないで決まるようなものだ。俺がその展開を面白くないと判断すればそれは駄目だという事だ。」
うわぁ。圧倒的な俺様主義者だ。ここまで俺様中心に世界が回ってると思ってる奴は初めてではないが......結構レアだな。と言うか見ていて痛い。
「面白い面白くないで全て判断されたら今頃世界は滅亡でもしてるぞ。」
「アラン様。こういう自己中な奴はさっさとやってしまいましょう?もう戦いたくてうずうずしてますの。」
エリカがアランを見て言うと、アランも「そうだな」と頷く。
エリカ、アランvsバルデンの戦いの開始のベルはエリカの<血対価戦雷電>だった。鮮血色の電撃がバルデンを襲う。
「うおっと危ねぇな、<電撃貫通砲>」
エリカの鮮血色の電撃にバルデンが撃った電撃が衝突し、その余波で周りの草が焼ける。
アランは魔法を出した直後のバルデンの地面に<強制拘束鎖>を唱えるが、バルデンは地面から生えてきた鎖を手の甲に装備した刃で切り裂いて逃れる。
「はっ。その程度なのかよ!そんな強さで魔王を名乗ってる訳じゃねぇよな!<超滅連獄炎>」
「当たり前だ。」
空中で<超滅連獄炎>を唱えたバルデンの魔法ごと撃ち抜こうとアランは銃の引き金を引いた。
その弾丸は巨大な炎の中を突き抜け、バルデンの心臓に真っ直ぐ向かう。
しかしバルデンは一瞬にして体の体制を変えて、その弾丸を避けきる。
そして軽やかに地面に着地した。バルデンは両手をぷらぷらと回して準備運動みたいにジャンプする。
「おいおい、本当にまさかと思うがそれが本気な訳ないよな?」
「そんな筈ないだろ。だったら今頃世界は魔王だらけになっちゃうぞ。なぁに心配するな、今まではちょっとした実験のようなものだ。」
アランは銃を左手で触りながら言った。
今のは、この<零の弾丸>が正常に発動するかの実験をしただけだ。
<零の弾丸>は注ぐ魔力を誤ると爆発したり、変な特性を持ったりしてしまう。ここ最近魔力を使う機会がなかったから心配だったのだ。
バルデンは「ふぅん」と頷き、格闘家の姿勢を取る。恐らくバルデンは手の甲の刃を主に使用し、状況に合わせて魔法を使うようなバランスタイプなのだろう。
言動とは違って随分考えてるんだな。最初は魔法のごり押しかと思ってたのに。
「ではこっちも行くか。エリカ、どっちも前衛で行くから後方に下がらないでね。」
「了解。」
そしてアラン、エリカ。バルデンが一気に走り出す。
アランは銃を左手に持ち変え、右手をリエスベスタではなく前に部下からもらった剣を装備する。エリカの槍がバルデンの喉を狙い、アランの剣が腹部を狙う。
「ぐっ。.....ぅ...」
バルデンは左手を槍に、右手を剣で防ぐ。
エリカは槍を巧妙に滑らせ奥へと差し込む。それはバルデンの右胸を少し切るくらいで、そこまで傷付けるものではなかった。バルデンはこの状態では危険だと判断し、まず力が強いアランを退けようと足で蹴った。
アランは銃の腹で勢いを殺すが、後退りしてしまう。
すかさずエリカは何度も槍を振り回す。でもバルデンの刃に阻まれてカキンッカキンッと言う音を響かせるだけに終わる。
アランは右手の剣をビュンと空気を裂くような速度で投げる。丁度エリカの脇をすり抜けバルデンは対応しきれず体制を崩してしまう。アランはすかさず<零の弾丸>を放つ。
エリカはアランが何も言っていないがすぐに横に飛び退く。
そして<零の弾丸>はそのエリカのいた位置へと行き、バルデンの左腕を貫いた。
バルデンの左腕はぽっかりとまるで最初からなかったように消える。
「マジかよ、こりゃエグいな。」
左腕をまじまじと見るバルデンにアランは<深淵なる暗光>を雨のように頭上に発動させた。
ビュンビュンビュンと音をたてながら闇の光がバルデンを襲う。
「<超滅連獄炎>」
バルデンは右手で対応するが、その程度では闇の光は消しきれない。
足や肩にも闇の光が襲い掛かり、バルデンは苦悶の声をあげる。そして全ての<深淵なる暗光>を受けきったバルデンは片膝を地面に付く。
「あら、その程度の魔法しか来ないと思いましたの?」
「??」
「<血対価戦雷電>!!」
止めの一撃がバルデンへと向かう。バルデンは肩を上下させながら息をしているものの、まだその闘志は消えていない。
「まだ.....<電撃貫通砲>!」
残った魔力を込めて電撃を撃つバルデン。
鮮血色の電撃と銀色の電撃。交わった瞬間、拮抗するように見えたが全然そんな事はなかった。
バチンッ、バチバチバチバチ....バチンッ!!
「なに....?負けた?」
鮮血色の電撃は銀色の電撃を相殺して、さらにバルデンの元へと襲い掛かる。
バルデンが負けたと理解した時にはもう遅い。鮮血色の電撃はバルデンの体を焼き焦がそうと牙を向く。
「ぐっ.........ぬゎ。......うっ。」
なんとか耐えようとしたが、その抵抗も虚しくバルデンは地面に倒れ込んだ。
「うーん。なんか呆気ない戦いでしたね。先ほどは手加減してあげましたのに。威勢を張るのは別に構いませんが、この程度だと物足りなく感じますわね。」
エリカは倒れ込んだバルデンに近づいて感想を漏らす。
先ほどの戦闘の間に少しは回復したのか、ヘイネは一人で倒れて動かないバルデンを見た。
「バルデン。やはりその強さは本物だが、千年前の人達と比べるとまだまだなのだな。これは相手が凄すぎだ。」
ヘイネは後ろを振り向く。
「さぁ、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。散々な事をしたのだ。気の済むまで殴ってくれても構わない。」
「ヘイネ!お前!?」
清々しい顔でヘイネは言うが、ロントは驚く。
アランは顔色一つ変えずヘイネを見る。そして銃口をヘイネに向ける。
「アラン様!?」
ロントが怒号の声を出すが、エリカはそっと口に人差し指を当てる。
ヘイネは目を瞑る。
ゴンッ。
「痛!」
「まったく。さっき助けてあげただろ、それが答えだ。確かに恨みたい事は多々ある。しかし改心してロントと一緒にライアと言う少女を助けてあげると言ったんだろ。なら俺は何も口は出さないさ。」
アランは<零の弾丸>を収納魔法にしまう。
その言葉にロントは安堵した。ヘイネは「やれやれ」と呆れた顔でアランを見た。
「これが千年前、魔族を束ねた魔王様のカリスマと言うやつなのか。ふっ。そりゃ魔族が付いていく筈だ。勝てる可能性さえ、今は見えそうもないな。」
エリカはニヤッと笑う。誇らしげに
「当たり前でしょう、かの魔王様に勝てる生き物などこの世にいませんから。」
「それは買いかぶり過ぎだよ。世界は広い、まだまだ俺の知らない法則や力があるかも知れない。」
「謙遜もいつかは罪になりますわよ。」
エリカは槍を地面に突き立てて言った。
これで大まかな事は終わった。そう、ヘイネは思っただろう。アランから作戦の概要を知らされてない者は。その作戦はこれで終わりではない。
アランは告げる。何処かにいるであろう者に。
「いつまで見ているつもりだ?次はお前だぞ、神。」
神。それは絶対的なる存在として知られている。
人々を導き、時には天罰を下す。
刹那、神々しい光と共に白いフードを深く被った背の高い誰かが現れる。
「へぇ、やっぱりその腕は落ちてないみたいだ。見た目も千年前とはあまり変わらないみたいだね。」
フードを外したその姿は神をも想像させる。
いや違う。神本人だ。
「さっきは面倒な集団に絡まれたけど天使に任して来たし、大丈夫か。」
神は自問自答をする。
面倒な集団。ここでは地下に残して来たルナミリエだろうか。
「何を自問自答してる?俺に用があって来たんじゃないか?そこの男を利用してまで。」
アランは倒れて動かないバルデンを指差す。
それに神は笑う。イタズラがバレた子供のように。
「そうだね。それじゃあ用件を言おうか、魔王、死んでくれない?」
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